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第735話 境内戦争 ─爆弾─

 

「俺様はギャロット!『爆弾魔(ボマー)』を扱う漢の名だぜっ!」

 階段の中腹にいるギャロットは、そう口にしてニンマリと笑みを浮かべた。俺達の戦闘行為の邪魔にならないように───俺達の戦闘に巻き込まれないように、神社の端を歩くようにして数人の参拝客は移動していた。


 ───と、もしかしたら神様の通り道を開けているのかもしれないけど、俺達が侵入している状況で、参拝客全員が信心深いような様子でもなさそうだから、神様の道を開けているつもりはないだろう。


 そもそも、ここが繁盛している時は誰彼構わず道の真ん中を通っていそうなイメージだ。

 日本の神社仏閣をモティーフにしていることは理解できるけれど、その内容までは上手く浸透しなかったようだった。きっと、賽銭箱もただのお金集め箱としか機能していなさそうだし。


「リューガ、参拝客はどうする?」

「いや、参拝客は月光徒じゃない。ムーンライト教に騙されている側の人物達だ。騙され続けているのに、そこを殺すってのは可哀想だろう」

「了解した。狂信的な信者が迫ってきたのみ例外で攻撃するがよろしいよな?」

「あぁ、大事なのは自分の保身だからよ!」


「おいおい、俺様のことを無視するだぁ...いいご身分じゃねぇか!獣共!」

「だ、誰が獣ですって?!ステラはジャッカルの獣人です!」

 その言葉と同時に、階段の左右にある森林からサラサラとした砂を持ってくる。大量の蚊のように飛来してきたそれは、一つの塊になってそれがギャロットの方へ迫っていく。


「ケッケッケッ!戦闘は楽しまねぇとなッ!」

 そう口にすると、ギャロットはどこからともなく取り出した筒状の爆弾───ダイナマイトを、その巨大な砂の塊に向けて投擲する。そして───


 ”ドンッ”


 そんな鈍い音を立てて、ダイナマイトは爆発する。

「んなっ...」

 ダイナマイトが爆発し、砂の大半はサラサラと地面にこぼれてしまう。そのまま、砂が迫ってくるけれどもギャロットはそれに避けることに成功していた。


 爆弾魔(ボマー)・・・爆弾を自由に作り出し、自由に爆発させることが可能。


「ケッケッケッ!俺様の『爆弾魔(ボマー)』の前じゃ、誰だって雑魚だぜッ!貴様ら全員、ぶっ殺したらぁよ!」

 ギャロットは、そう口にして豪快な笑みを浮かべていた。


「リューガ...どうする?大地の魔法で固定してみるか?」

「そうだな。爆弾を作り出させるその手を止めちまえば───爆弾の爆風に巻き込まれる範囲にさえ自分も入っていれば、ギャロットも攻撃できないだろうしよ」

「了解した」


 イブが、そう口にするとステラに続いて目の前にいるギャロットに向けて攻撃を行う。触手のように滑らかに、だが針のように鋭い新幹線のような勢いでギャロットを囚えんと動く。


「おいおい、爆速じゃねぇか!だが、実際の爆弾には勝てねぇ!」


 ”ドンッ”


「───対応されたか?」

「いや、リカバリー可能だ」

「流石だな」

 イブは、まだまだ余裕そうだった。爆弾で、大地の魔法で動かしている大地の動きを遮ったものの、大地自体に意識はない。だから、爆発に警戒する───という生物のような行動はないのでそのままギャロットの体を大地で包み───


「───だぁぁ、もう!絡まってくんじゃねぇよ!」


 ”ドンッ”


 巨大な爆発音が響き、ギャロットは大地の拘束から抜け出していた。

「嘘だろ...」

「自分の足元に爆弾を投げて、その爆風で抜け出したみたいだ...」


 もちろん、ギャロットも脚にそれなりにダメージを負っているだろう。だけど、決死の覚悟で俺達と戦闘しているようだった。本人は「ケケケッ」と笑っており楽しそうだった。


「大地の魔法で拘束も無理なのか...それとも、もっとキツくしたら行けるのか?」

「23の世界みたいに大きな穴を開けるのはどうですか?」

「そうしたら、俺達の神社まで続く道がなくなってしまう。それに、あれの体力消耗は尋常じゃない。今後の戦闘で足を引っ張ってしまうだろうよ」

「───そうですか...」


「なら、俺が行く!」

 イブとリミアが作戦を話し合っている中、俺は決死の覚悟───なんてものはなかったが、ギャロットを倒すという意志を持ってギャロットへと迫っていた。


「ケッケッケッ、ついに特攻か?!」

「いいや、ちげえな」

「来いや、ヒヨコ!」


 そして、俺の方に数本の爆弾が迫りくる。

「一発ボカンでくたばりやがれ」


 その言葉と同時に爆弾は起爆し───


 ”ドンッ”


「リューガ!」

 後方からは、俺を心配する声が聴こえる。だが、俺は爆弾によるダメージは何一つとしてない。


「残念だったな、ノーダメだぜ」

「んなッ!」

 ギャロットが、驚いたような顔をしている。きっと、自分の自慢の爆弾が通用しなかったことに相当驚いているのだろう。


「俺は今、森羅万象に触れられない。『Don't touch me!』を発動してるんだよ。『破壊』だ」

「───」


 ”バキバキッ”


 絶対防御とも呼べるような『Don't touch me!』に包まれている中で、俺はギャロットに『破壊』をお見舞いする。


 ───俺達は、こうしてギャロットに勝利したのだった。

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