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第707話 長としての威厳

 

 ───戦場は変わり、こちらはウェスタンの兵士とノースタンの兵士がぶつかり続ける最前線。


 リューガ達『チーム一鶴』は、『生物変化』で鳥になり空を飛んで移動していたので、ノースタンの城の周りにウェスタンの兵士が囲んでいるわけではなかった。


 現在の最前線には、ノースタンの三幹部であるフランとルーカスが、ウェスタンの長であるユリウスと対峙していた。


「ウェスタンの長なのに、戦場なんか立って大丈夫なのか?お前が死ねば、ウェスタンに勝ちはねぇぜ?」

大丈夫(だいじょうぶ)か、大丈夫(だいじょうぶ)じゃないかで言ったら、大分異常(だいぶいじょう)だろうね。リューガ達が、ノースタンの長を───カーン・バーンを殺してくれれば負けはないよ」

「随分と、過信してんだな」

「大切な、仲間だからね」

「出会って1ヶ月くらいしか経ってないんじゃないか?」

「信用に長い年月が必要なら、建国なんか成り立たないよ」


「ルーカス、そろそろ駄弁はやめろ。ユリウスを倒すことだけに集中しろ」

「はいはい、わかってるよ」

 ルーカスは、フランにそう制止される。


「───勝負を、始めようか」

 ユリウスは、そう口にすると同時に背中に背負っていた大剣を引き抜く。その剣は、長であるユリウスが握るには不釣り合いな程に質素な剣であった。


「この剣は、ウェスタンにずっと尽くしてくれているある鍛冶職人が丹精を込めて作ってくれた剣だ。どんな宝剣よりも、強いよ」

「そうか...」


 そう言うと、フランは自らの武器である巨大なハンマーを手にした。ルーカスの方はというと、体がコ◯ンの犯人のように黒尽くめにされており、光は影に包まれているので手元になにか持っているのかを判明させることはできなかった。だけど、槍や斧のような長くて大きい武器を持っていないのが判明する。



 ───そして、勝負が開始する。


「『禁欲』を発動させる。食事及び睡眠・性交をすることを制限する」

 戦闘開始直後、ユリウスはそう口にした。


 ───これが、ユリウスの能力である『禁欲』であった。


 禁欲・・・自らの行動などを禁じて、その対価にあった力を手に入れる事が可能。禁じた行動を行ってしまうと、能力が解除されてしまう。


「行くぞ」

「よし、来い!」

『禁欲』の能力を知らないフランが、ユリウスへと接近する。そして、ユリウスへとハンマーを振り下ろし───


 ”キンッ”


「───ッ!」

 ユリウスは、振り下ろされたハンマーを、自らが持つ剣で受け止める。


「受け止めるとは...王ではあるが、間抜けでは無さそうだな」

「鍛えてはいるけれど、でもその修業だって中途半端さ。俺は、自分自身の能力で補填している」

「そうベラベラと...」

 フランは、そのままハンマーを一度下げて、すぐに横振りに切り替えて攻撃を行う。


「───と」

 ユリウスは、そのハンマーを軽々とジャンプをして回避する。そのまま、フランに接近してその剣舞を披露しようとするが───


「『暗闇』」

「───」


 その刹那、ルーカスの能力が発動してユリウスは漆黒に包まれる。そう、ルーカスと同じくユリウスまでも暗闇に包まれたのだった。

 傍から見れば、ユリウスとルーカスの見分けは、ユリウスの持つ剣でのみ可能だった。


 その剣が無ければ、どちらも同じ暗黒を纏った不審者だろう。

「ならばこちらも、視覚を制限する」


 ユリウスは、自らの視覚を制限することにより、強化を行うのであった。

 どちらにせよ、『暗闇』の能力により辺りを見ることができない。ならば、使用しても問題ないだろう。


 暗闇・・・任意の人物に、暗闇を纏わせることが可能。


「───随分と、暗闇というものは怖いね」

 ユリウスはそう口にする。ここは戦場。いつどこに流れ弾が飛んでくるかもわからない戦場。


 目の前に、強敵2体がいる戦場。

 そこで、盲目になるというのはどれほどの恐怖だろうか。


「おいおい、俺の『暗闇』にかかってアタフタしなかったのはお前が初だぜ」

 ルーカスはそう口にした。


 ───と、ルーカスも自分自身に『暗闇』を使用しているが、彼自身の視界が塞がれるという欠点はない。


 何故なら、彼は生まれながらに目が見えなかったからだ。

 では、どのようにして三幹部まで成り上がったのか。答えとしては、盲目な代わりに心眼を習得したからであった。


 目が見えないというマイナスの部分を、他の感覚で───聴覚や嗅覚・触覚に味覚で埋め合わせたのだった。彼は、音を聞き匂いを嗅ぎ辺りの様子を認識していたのだった。


 ───が、『禁欲』を持つユリウスは、そのルーカスの心眼という長所をも一瞬で凌駕する。


「味覚を制限する」

 ユリウスは、追加で味覚をも制限することにより、語感の内の2つを手放すことにする。


 ───だけど、それと引き換えに心眼にたものを手に入れたのだった。


「よし、これで...解る」

 ユリウスはそう口にした。それと同時に、ユリウスに近付いてきていたのはルーカス。


「───ここだ!」


 ”キンッ”


 ユリウスの持つ刀剣と、ルーカスの持つ小さな刃がぶつかる。


 そう、ユリウスはルーカスの纏う漆黒の中に隠されていた小さな武器さえもを見抜いて受け止めたのだった。


「俺は負けないよ、ウェスタンがあるからね」

「───ッチ、この強さは伊達じゃねぇのか...」

本編で描かれなかった第三幕のルーカスvsマキの戦いですが、マキの「右を左に、左を右にすることが可能」という能力である『左右盲』を「暗闇の中なら上下左右も関係ない」という理由で圧勝しました。

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