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第706話 アーノルド

 

 ───現在、アーノルドの『骨格固定』により、動きを止められている人物は全部で3人。


 俺とリミア、そしてローディー将軍であった。

 アーノルドは、慎重派であるために全員の動きを止めてから、自分の安全を保った状態で俺達のことを殺そうとしていたようだった。


「やっぱり、動かないわね...」

 ローディー将軍はそう声を出す。『骨格固定』では、声を出せたり呼吸ができるのだけれど、骨格が固定されているので、骨が動かないので身体を動かすことはできなかった。


 前回、ローディー将軍は馬の上で『骨格固定』されたが故に、馬が走ることでどうにか逃亡することができた。

 アーノルドの『骨格固定』はある一定の範囲───アーノルドを中心に半径約2kmよりも外に出ると、能力が解除されてしまう故に、ローディー将軍を載せた質実剛健かつ懸命な馬は、動けないローディー将軍を戦場の遠くまで運んだのだった。


 だが、今回はその賢馬は戦場にはいない。ローディー将軍は動けないし、攻撃することもできないのだった。

「やれやれね...後の2人が、どうにかしてくれたらいいけれど...」


 ノースタンの城の最上階で戦闘している以上、イブの大地の魔法はほとんど無力に等しかった。実際に、この戦場に来てからは一度もイブの大地の魔法を見ていない。

 流石に、この高さまで大地を持ってくるのは大変なのだろう。


「とりゃぁ!『羅針盤・マシンガン』!」

 オルバは、アーノルドに向けて『羅針盤・マシンガン』を使用する。だけど、アーノルドはその銃弾を避けて、そのままオルバへ接近する。


 ───そう、オルバの『羅針盤・マシンガン』はとある一方にしか放てないのだった。


 直線にしか放てない『羅針盤・マシンガン』は、少し横にそれてしまえば、避けることができる。

 オルバは、『羅針盤・マシンガン』を使用している間、前後にしか足を動かせないのだ。

 オルバは、『羅針盤・マシンガン』を使用している間、身体を左右に動かすことができないのだ。左を向く───などと言った行為ができないのだ。


 もちろん、オルバはその穴を自分で把握していたから、銃弾をほんの少しずつ放つ代わりに、身体を動かして広範囲に撒き散らす───という攻撃方法を覚えていた。


 そのやり方としては、銃弾を少し放つ、身体を右(か左)に動かす、銃弾を少し放つ、身体を右(か左)に動かす───の繰り返しであった。


 敵が多い場合などは、そちらの方が都合がいい場合も多かったし、実際23の世界での第二幕でのイースタンの兵士を掃討する場合は、この方法が使われた。


「ちょこまかと...」

 オルバは、自分の方向へアーノルドが接近して来ていることに気付いて、アーノルドとの鬼ごっこを開始する。


「残念だな、もう残るは俺とイブだけ!そう簡単に捕まるかよ!」

 そう宣言して、戦場を縦横無尽に駆け回るオルバ。


 ───が、アーノルドの俊敏さはそれ以上だった。


「残念だな」

「───んおっ!まじか!」

 オルバの動きも『骨格固定』で止められてしまう。オルバは、右手を伸ばしたような状態で動きを止められてしまった。


「───残るは、お前だけだ!イブ!」

「クソ、俺だけか...」

 イブは、そう口にする。


 ───そして、イブとアーノルドの鬼ごっこが開始した。


「イブ!外に飛び出せ!外なら、イブにも勝機はある!」

 俺は、イブにそう声をかける。イブは、それに従うように外に出ようとするけれども、アーノルドは窓の前に先回りしたのだった。


「ここならば、どこの窓でもいち早く駆けつけられる」

 アーノルドはそう口にする。アーノルドは、速い。


 だから、イブがどこの窓を狙っているのかさえわかれば、そちらに駆けつけることも可能なのだろう。


「───そうか」

 イブはそう口にした、そして一つの窓の方へ駆ける。


「イブ!」

「残念だな、駆けつけられると言っている!」

 アーノルドが、イブに触れようとする刹那、イブはフェイントをかけて一歩後ろに後退して、アーノルドのイブに触れようとする手を空振りさせる。


「───ッ!」

「残念なのはそっちだ」


 その発言を口にして、イブはアーノルドを避けて先程とは別の窓の方へ走り出して───



 ───そして、触れられる前に停止した。


「んなッ!」

「舐めプか?」

「いや、必勝法だ」

「───は」

「『羅針盤・マシンガン』!」


 ”ドドドドドド”


 その刹那、動きを止められたオルバの右手から放たれるのは『羅針盤・マシンガン』であった。その方向にいるのは、アーノルド。そのまま、銃弾はアーノルドの身体を穿つ───。


 そう、イブは上手くおびき寄せたのだった。アーノルドを、動きを止められたオルバの『羅針盤・マシンガン』の斜線上に入るように連れてきたのだった。


「私の『第一指弾(ハンドスパナー)』は一度撃ったら構え直さないといけないから...これができたのは、オルバちゃんの能力だったからね♡」

 ローディー将軍はそう口にする。俺達の固定は解除された。


 ───そう、それはアーノルドが死亡した証明だった。


「勝った、な」

「あぁ...勝った」


 イブとオルバは接近して、ハイタッチをした。清々しいほどに、2人の勝利であった。

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