第68話 『精神浮遊』
今日6月23日はフミヤが地球で死んで転生した日。
「俺の...兄弟子?」
「あぁ!『破壊』が使えるんだろ?なら、俺が兄弟子だ!お前もエイジン師範様の弟子なんだろ?」
「あぁ...そうだが...」
「なら!ならなら!俺の弟じゃないか!ヒヨコなのによく『破壊』を習得したな!兄として誇らしい!」
「何を言っているんだ...お前は!」
月光徒の中に兄弟子がいることに虫酸が走る。フミヤに虫酸が走る。
「そう言えば...お前も転生者だったな?フミヤ!」
「あ?なぜ、それを?」
「エイジンから聞いたよ!お前が転生者ってことをよ!」
「なんだ!エイジン師範様が仰ったのか!なら、文句はないよ!もちろん、ヒヨコの君も転生者なんだろ?」
「あぁ...俺は転生者だ!日本からのな!」
「おぉ!俺と一緒じゃないか!ヒヨコ!いやぁ...嬉しいなぁ!嬉しいなぁ!」
「俺は哀しいよ...苦しいよ...同じ転生者として、仲良くできそうだったのに...月光徒なんてよぉ!」
”バキバキッ”
俺は不意打ちで『破壊』を使うも、フミヤに平然と避けられる。
「ちっ...避けたか...」
「おいおい!そんなに焦らなくてもいいじゃないか!エイジン師範様の弟子同士会話を楽しもうじゃないか!」
「楽しむ?それは無理だな...」
「そうかぁ...そこの女?を殺したいけど...まだ、我慢してるんだ!そうしないと君が口を聞いてくれなくなるかもしれないから!」
「そこの女って...どいつだよ?」
「わからないのか?言ってるじゃないか!キュラスシタの仇って!そこの巨乳の女だよ!」
フミヤはショウガを指差す。
「え?我?」
「リカ!ショウガを守れ!フミヤの相手は俺がする!」
「はい!」
リカは威勢のいい返事をした。
「ねぇ?エイジン師範様は元気かい?」
「うるせぇぇぇ!話しかけるんじゃねぇぇ!」
”バキバキッ”
”バキバキッ”
『破壊』と『破壊』がぶつかり合う。『破壊』は相殺された。フミヤは余裕そうな顔でこちらを見ている。力を調節しているのだ。俺を殺さないために。俺は空中を大きく旋回する。
「あら...話をしてくれなくなっちゃった!兄は哀しいなぁ!」
「うるせぇ!お前なんか兄じゃねぇ!」
「会話できないのなら...殺すか...」
”バキバキッ”
地面に亀裂が入る。先程の軽快なオーラとは違い、泥水のように歪んだオーラがフミヤから出てきた。これがフミヤの本当のオーラだ。
「さよなら...弟よ...」
まずい。このままでは、『破壊』されてしまう。跡形もなく消えてしまう。
「待って!」
どこかから声がする。フミヤはそっちの方向を見た。そこには魔法使いの格好をした一人の女性がいた。
「やっぱり!やっぱりホロンだ!ここに...ここにいたのね!」
そんなことを言いながら、一人の女性はそんなことを言いながらフミヤの方へ走っていく。
「ホロン!私ね...寂しかった!ホロンがいなくなってね?ずっと一人でね...寂しかった!寂しかったよ!」
「お前は...マリア!」
後ろから声がする。声の主はカゲユキだ。この、マリアと言う女性を知っているのか。
「ホロン...あぁ、この体の男の名か...」
フミヤはそんなことを小声で呟く。だが、しっかりと俺には聞こえた。フミヤの今の体は、誰かから乗っ取り手に入れた体だ。
「マリア!この男に近づくなぁぁ!」
カゲユキは叫ぶ。だが、マリアは止まらない。
「待っていたよ!マリア!こっちにおいで!」
フミヤはそう甘い言葉をかける。マリアはフミヤに抱きつこうとする。
”バキバキバキッ”
「───」
音にもならないようなマリアの悲鳴が俺たちの耳を木霊する。マリアはフミヤによって破壊されたのだ。
「おま...」
「うん!いいねぇ!やっぱり綺麗な女を破壊するのは!最高だ!最高だよ!気持ちいい!」
驚きのあまり、俺の中から一瞬に感情というものが無くなってしまった。だが、すぐに怒りが戻ってくる。
「フミヤ...お前は...人じゃないよ...生物変化!」
「ぬぉ!」
フミヤはバラとなる。俺は「花になれ」と念じたが、バラになるということは、フミヤの心をバラで表現しているのだろう。
「これで...お前を『破壊』する!」
”バキバキッ”
「うわぁ!」
バラの花は破壊される。フミヤはこれで───
も死なない。
「やったか?」
「まだ生きてる可能性の後押しをするんじゃねぇ!」
俺はユウヤのフミヤ生存フラグにツッコミをする。
「『精神浮遊』でまだどこかにいる!俺らはその精神体を視認できない!探せ!音で!匂いで!感覚で!」
「あぁ!」
「ショウガを守れよ?俺はフミヤを見つける!」
俺は探す。己の感覚で。どこに。どこにいるんだ。
「───」
何かを感じる。
「ここだぁぁ!寿命吸収!」
俺は寿命を吸収する。吸収するには触れている必要があったので、すぐに避けられてしまったのだが。
「どうして...どうしてだ!なんで...なんでお前が!」
フミヤの声が聞こえる。
「俺はエイジンを殺した...」
「なっ...お前が!お前ごときが!エイジング師範様を殺していいはずあるか!そんな訳ない!お前は嘘をついている!俺の...俺の...俺の愛したエイジン師範様がお前ごときに負けるはずがない!信じるか!信じられるか!いいや、無理だ!信じられない!能力をエイジン師範様から奪ったのだな!許さん!お前ごときが誇り高い『寿命吸収』を持っていていい訳がない!俺はお前を...必ず殺す!」
声が消える。どこかに行ってしまったようだ。そして、俺はフミヤのエイジンへの狂愛を見てしまった。偏愛を見てしまった。
「おい!なんだよ!こいつら!」
俺らの周りには少し黄色く着色された、煙のような足のない人が大量に浮いていた。している格好を多種多様だ。剣士や魔法使い・格闘家の格好をしている人が多い。
───こいつらは、幽霊だ。
───第三の試験で犠牲になった人の幽霊だった。
フミヤの保有能力は7つ
硬化・・・体の一部を硬くすることが可能。
柔軟・・・体の一部を柔らかくすることが可能。
酸化・・・物体の酸化を早めることが可能。
千里眼・・・本来の自分の目では見えない範囲まで見渡すことが可能。
破壊・・・物質を破壊することが可能。
精神浮遊・・・肉体がなくても生存が可能。精神状態では、他人の体を乗っ取ることも可能。
???・・・幽霊関係であることは確か。




