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第683話 欠員の影響

 

 ウェスタン。


 その本軍の奥にあるこの国の核心とも言える城の内部にある会議室で行われていたのは、幹部会議であった。

 出席しているのはこの国の頭領であるユリウスと、その補佐であり尚且つ参謀であるオーロラ、そして生存している三将軍の2人である。


 三将軍なのに2人───という疑問を持たれるかもしれないけれど、ハービン将軍が死亡してまだ1日しか経っていない。いや、厳密に言うならば24時間経っていないので1日経っている───とは言えない。


 と、いつ死んだなどと気にしていてもしょうがないし、この会議において重要な部分は「ハービン将軍が死亡した」ということだろう。

 必要な背景情報としては、昨日行ったイースタンとの戦争でハービン将軍が戦死して、イースタンに敗北して撤退した───ということだろう。


 そして、そのハービン将軍の死亡とイースタンに敗北したことで、23の世界の国際情勢は大きく揺れ動き、後に行われるであろう戦争に備えるために会議を行われようとしていたのだった。


「それでは、会議を始める」

 ウェスタンの長であるユリウスの一声で、会議が始まる。出席者は、先程言った4人であった。


 今回は探訪者である『チーム一鶴』は参加できていない。だがそれは、当たり前のことだと言えるだろう。

「───昨日のイースタンとの戦争では敗北。そして、ハービン将軍は戦死。あな悲しいけど、けたたましい声で粗探しして糾弾するのはさもさもしい」

 ユリウスはそう口にする。


「だから、今日はこれからのことを考えるよ。オーロラ」

「わかりました。では、本日も少し喋らせていただきます。話半分じゃ聞けない内容ですが...よろしいですね?」

 その言葉に全員が頷く。ハービン将軍が死んだ今、彼女の口癖である「話半分」を使用したのは何かの皮肉だろうか。


「これから1ヶ月の内に、4カ国全てがぶつかるこれまでに無い大戦争が起こることになるでしょう」

 そう、23の世界でこれまで行われていたのは4カ国ある内の2カ国がぶつかって、少しずつ相手の戦力を減らしていくという時間がかかって戦況のあまり変化の見られない戦い方であった。


 だけど、昨日イースタンのナード元帥とウェスタンのハービン将軍が死亡したことにより、23の世界の情勢は大きく変動したのだ。戦力は大きく変動したのだった。


「私の予測する未来としては、現在どことも同盟を結んでいないサウスタンは、同じくどことも同盟を結べていないイースタンと同盟を結ぶことになるでしょう。確かに、ここで我々ウェスタン・ノースタンの北西同盟に加えて南北西3カ国同盟でも結んで一気にイースタンを潰すことができればいいのですけれど、それでは4カ国が3カ国に減っただけですし結局、その3カ国で同盟を組まずに戦争体勢になるのは目に見えているでしょう。それに、北西同盟の延長として、3カ国になった際に他2カ国を相手にする未来を見ているかもしれません。それに、3カ国になった場合だと戦力が減っている我々ウェスタンが攻められる可能性もありますからね。その点、イースタンに協力して次の戦争に勝てばウェスタンとノースタンを滅亡又は、それに近い状態にまで持って行けて、残るはイースタンのみ。そこで、イースタンを叩けばいい───という感じになるでしょうから」

 サウスタンが、これから取るであろう立ち位置について、オーロラは長々と語る。


「───と、まとめますとサウスタンの立場からするとイースタンと同盟を組めば、次に行われるであろう大戦争にさえ勝利すれば、23の世界の天下を取れるのも当然なので、イースタンとの同盟を選択する───という感じです」

「オッケーよ。次の戦争はイースタンとサウスタンの2カ国が敵になるってことでオッケーね?」

「はい、そうです。ノースタンとは同盟関係ですので、お互いに協力しつつ戦争しようと思っています。それと、多分ほか2カ国は我々ウェスタンを重点的に狙ってくるでしょう」

「それはどうしてだ?」


「単純に、ハービン将軍が死亡したことで戦力が減っているからです。ノースタンと協力するのを見込んだ上で、私達を狙って攻撃してくるでしょう。それに、ハービン将軍の死亡で兵士達の士気は下がっているでしょうし。三将軍の欠員の影響は想像以上に大きいです」

「それもそうねぇ...」

「士気か、もう前のようなローディー将軍の演説は使えなさそうだね」

「そうねぇ、ハービン将軍は戦死、『チーム一鶴』のリーダーであるリューガも死亡、そして、イースタンに敗北───と、喜べる要素は、やる気になる要素は無いわね...」


「無いなら作ればいいんですよ、やる気が出るような要素を」

「───と言うと?」

「次の戦争での指揮は、ユリウス様。アナタが直接戦場で取ってもらいます。士気をあげるために指揮を取ってください」


 オーロラのそんな提案。ユリウスを戦場に出すことは、それなりに危険が伴うことだったけれど、兵士達の士気をあげるのには最適だった。


「そして、敵の三元帥・三鬼にはこちらも三将軍・三幹部をぶつけます。それと『チーム一鶴』にも協力してもらいましょう」

 オーロラはそう口にした。参謀である、オーロラのその目には今後歩むべき未来が見えているようだった。


「───では、次の大戦争が行われた時は皆さん頑張っていただきたいです。私は、何かあった時の為に戦場ではユリウス様の影の中にいますので」

 オーロラは自分の戦争中でも自身の安全を守るような行動に出た。


 ───そんな、策謀が散見する幹部会議の中で予想されたことが、すぐに現実になった。




 ───そう、イースタンとサウスタンが同盟を結んだことが明らかになったのだった。

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