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第682話 第二幕の結末

 

 暗転。


 死亡した俺の周りに広がっていたのは、薄暗い世界だった。

 この世界に照明なんてものはなく、ただの暗闇。


「───クッソ...」

 俺は、そう口にする。ハービン将軍を殺された挙げ句、その仇であるアスカ元帥を倒すこともできなかった。

 その上、何者かに暗殺されてしまうし踏んだり蹴ったりだ。


「確か『独学の毒(オリジナル・ポイズン)』とか言ってたか?」

 俺を殺した能力を、そう復唱する。その能力の名前は聴いたことがなかった。


 三元帥であるナード将軍は俺が殺したし、アスカ元帥は『転移無能』という能力だし、グラシル元帥は『土龍』という能力だ。


「ウェスタンからの裏切り者が出たとは考えにくい...」

 わざわざ、あの状態で俺を殺そうとする味方の兵士などいないだろう。いや、スパイとしてイースタンからウェスタンにやって来ていた───などという理由ならあり得る。


 だけど、あの時は俺の周りには敵兵しかいなかったような気がする。

「だとすると、敵兵の中に何者かがいたのか...」


 だとすると、『独学の毒(オリジナル・ポイズン)』という能力を持っている人物はイースタン関連の人物であることがわかる。


「まぁ...とりあえず、早く復活しないとな」

 そう、復活しなければ話が進まない。自分自身の仇を討つ為に再戦しようにも、早く何者かに『憑依』しなければならないのだった。


 ───と、その時。


 《生物変化及び破壊・無能・ミサイルシェル・冷凍・氷山の一角の一声・PUNISH PUNCHが体に適応しました。肉体の死亡後も能力は継続して使用できます。》


「───やっとか」

 月光徒のリューガから奪い取ったというか、拝借した───いや、正しくは借りパクした能力が体に馴染んだようだった。


 21の世界でストラスに奪われた『生物変化』と『破壊』を除いても、月光徒のリューガから借りパクしたのは、4つもある。

 だけど、逆に考えると4つしかないのだ。


「他にも色々能力はあったのに、奪えなかったなぁ...」

 俺は、そう後悔を口にする。他にも有用そうな能力は探せば色々あったのだろうけれど、手に入ったのはこの4つだけだった。


「───でもまぁ、4つ手に入れられただけでも満足するか...」

 そう、本来ならば能力は1人1つだけなのだ。俺の『憑依』が異常なだけなのだ。


 本来であれば、『憑依』にも回数制限があるらしいし、これは現状を満足する他無いだろう。


「───と...皆は大丈夫だろうか」

 俺は、戦場でまだ生きている皆のの心配をする。


 皆であれば強いから大丈夫だろうけれど、それでも不安なものは不安だった。


 ***


 ───そのリューガの不安の原因である戦場では。


「撤退だ、撤退だァ!」

 コーラス将軍の大声が戦場に響く。ハービン将軍とリューガの死亡を確認し、これ以上の戦闘は無理だと、そう判断する。


 元々、ローディー将軍の演説があって、どうにか上げた兵士の指揮だ。それで上げた士気は、多くの者から信頼されていたハービン将軍とナード元帥を殺して最強とも謳われた『チーム一鶴』のリーダーであるリューガの脂肪によって下がっていた。

 だから、これ以上は無理───そう判断したのだ。


 それに、現在戦場の最前線にはグラシル元帥もアスカ元帥もいない状態だった。だから、今こそが最大の撤退のチャンスだったのだ。兵を畳んで逃げるチャンスだったのだ。


「どうにかしてリューガの死体を回収しないと!」

『チーム一鶴』の3人───オルバ・イブ・リミアの意見は合致する。


 いや、リミアは『憑依』のことを知らなかったから、何か誰かに『憑依』させてリューガの復活を目論む───と言ったことは思っておらず、純粋に味方であったリューガの死を弔うために死体の回収を口にしただけかもしれない。


 だがまぁ、皆心にあるものは違えど、意見は一致する。

「俺の大地の魔法で回収する。その変わり、全ての体力を使用するから...いいな?」

「あぁ、わかってる。背負ってやるよ」

「感謝する」


 その言葉と同時、イブは最後の体力を使用して大地を動かす。そして、リューガの死体を自分達の手元へ持ってきた。そして、オルバは体力を使い果たしてその場に倒れる。


「本当に...ギリギリだったんだな...」

 そう言って、オルバはイブを背負う。今思えば、今日までほとんど連戦だった。だから、体力が回復しないのも無理ないだろう。


「───リミア、リューガの死体を持ってくれ。俺達は帰ろう」

「わかった」

 リミアは、リューガの死体を手に持って、そのままウェスタンの本軍まで撤退する。




 ───これが、イースタンとウェスタンの戦争の第二幕の結末であった。


 ナード元帥との直接対決から始まり、リューガが死亡するところで終了する本日。


『チーム一鶴』の登場により、イースタンとウェスタンの戦争は良くも悪くも進展した。


 そして、その進展というのは新たな戦争の───否、現在あった眠れる戦争を巨大化させ目を覚まさせるのだった。


 ウェスタン・イースタン・サウスタン・ノースタン。

 23の世界の領土を奪い合う4カ国の中で、勝者になる国は───

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