第7話 リューガの反逆
「ここが『ファースト』か...」
俺は村を散策する。高級茶葉はどこに売ってるだろうか。
「働け!働け!」
「はい!すいません!」
畑で働く女性の人間が高級そうな服を着た人間に尻を叩かれていた。
「うわぁ...ここでも人間がいじめられてるよ...」
俺は近くにいた半鬼人のお兄さんに話をする。
「あの...人間をいじめてる人って誰ですか?」
「人間をいじめてる?いじめてないだろ!正しい行いだろ!馬鹿なのか?お前!」
「あぁ...すいません...で、誰ですか?」
「おいおい...本当の馬鹿だったよ...あのお方は村一番の貴族ヘイター様だぞ?」
「え!ヘイターも人間なの?」
「おい!ヘイター様を下等な人間呼ばわりするな!ヘイター様は鬼神だ!」
蜥蜴人間にも半鬼人にも”人”という漢字が入っている。だが、鬼神には”人”と言う字がない。その代わりに”神”が入っている。神は俗に人間に上を表している。
「後もう一つ質問いいか?」
「無礼な質問をしたらここで殺すが?」
「高級茶葉って...どこで売ってる?」
「は?馬鹿なの?無礼ではなかったが...正真正銘な馬鹿だな!称号になるぞ?正真正銘の馬鹿って!」
「そんな称号いらない...」
「高級茶葉はここの畑で採るんだぞ?」
俺は目の前の畑を見る。俺は静岡の茶畑とか行ったことがないから、こんな畑だったのかと思う。
「あぁ!ありがとう!どこで買えばいいかな?」
半鬼人のお兄さんは小屋を指差す。
「あそこだ...」
「ありがとう!お兄さん!」
俺はその小屋の中へと入る。
「高級茶葉...1kgください...」
「わかりました...15万ボンとなります」
俺は店員に15万ボン差し出す。
「それでは、用意しますので...」
店員は200gと書かれた高級茶葉の袋を5つ大袋に入れてシールで止める。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
俺は小屋を出る。そして、屋敷に帰った。屋敷に帰る頃にはもう夕方になっていた。
「うへぇ...無賃金生活1日目も終わりか...」
残りは636時間ある。長い道のりだ。まだ一日終わっただけなのに。
屋敷に帰るとメイド長に呼び出された。
「何グズグズ買い物してるの!早く掃除をしなさい!」
「は、はい!」
俺はキッチンまでの道のりを念入りに掃除する。2時間ほどするとメイド長がやってきた。
「もっと掃除をしなさい!残り8時間はしなさい!」
俺は8時間掃除をした。しっかり掃除をした。体の節々が痛い。筋肉も痛い。筋肉痛だ。
残り626時間だ。掃除が終わったころには太陽がもう顔を出していた。
「はぁ...終わった...」
メイド長がやってくる。
「やっと終わったのね!それじゃ、昨日の分の皿洗いをしなさい!」
「え、ジャワラさんのところに...」
「私が言い渡されたの!ちゃんとやりなさい!」
俺は渋々キッチンに行く。キッチンには大量の皿が山積みになっていた。
「1日誰もしなかったのかよ...」
俺は4時間かけて全て洗う。朝食の分も洗い終わった。残り624時間。後1日で600時間過ぎる。
「やっと終わったのね!」
キッチンにメイド長がやって来た。
「これ、サメリからの差し入れよ!」
俺はメイド長からパンを渡される。コッペパンだった。
「あ、ありがとうございます...」
「感謝は私じゃなくてサメリにしなさい!後、食べたら風呂とトイレ掃除ね!」
「は、はい...」
俺はパンを食べに豚小屋に行く。
「おーい!ショウガさん!」
「おぉ!ひよこ!来たのか!」
「あぁ...こき使われて大変だぜ...」
「大丈夫か?パン1個で足りるか?」
「いや、全然...てか、寝不足で辛い...」
「3大欲求の2つが不足してるな...」
「いや、全部足りない...」
「そうか...」
2人は沈黙する。俺は静かにパンを食べ終えた。
「それじゃ俺、仕事に戻るわ!」
「ちゃんとジャワラを殺す準備はできてるだろうな?」
「あ?あぁ...わかってるよ...」
服の内側には、まだナイフが残っていた。次、ジャワラに呼び出された時には刺そうと思う。
そして、ある程度の日が経った。最後にショウガに会ったのは3日前だ。そう。パンを食べた時だ。
俺はジャワラに呼び出されている。時間は昼前だ。5日前に大体この時間にリューガに食べられた。
俺は領主室に入る。残りは540時間だ。だが、その540時間も今無くなろうとしていた。
「次の仕事だ」
「いや...その仕事...引き受けないぜ!」
「なっ...なんでだ?ここは辞められないぞ?」
「俺は辞めねぇよ...辞めるのはお前の方だからよ!」
俺はナイフを取り出し、ジャワラに向かって走り出す。そして、ジャワラの心臓に向かってナイフが刺さろうとした、その時だった。俺は強制的にひよこの姿に戻らされる。何故だ。何故なのだ。
「あれ?あれ?」
「生物変化...成功したようだな...」
「おい!もとに戻せ!」
俺はリューガの姿に変身しようとしてもできない。ジャワラはひよこになった俺を掴む。
「おい!誰かいるか?」
ドアからメイド長が入ってくる。
「どういたしましたか?」
「今、リューガをひよこに変えた!鶏小屋に持っていって透明な箱に入れて隔離しろ!」
「わかりました」
ジャワラは俺をメイド長に渡し、メイド長は鶏小屋に連れて行く。俺はそこで透明な箱に入れられた。呼吸をする穴は開いているが、出れそうにない。
「おいおい!リューガが反逆したらしいぞ?」
「アホだな!このひよこがリューガだったのか?」
雇われた使用人達が俺のことを見て、指を指し嘲笑っている。俺は透明な箱の中で暴れるが、余計に笑われるだけであった。
「どうにかしてここを抜け出さなければ...」
俺の声は誰にも聞こえなかった。ただ、一人のメイドを除いて...
 




