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第623話 我武者羅

 

「クッソ、まじかッ!」

 そんな声をあげるオルバ。


 オルバも驚くのも無理はない。なんせ、この十数秒間で、ユウヤ・ショウガ・バトラズの3人が月光徒のアジトに持っていかれてしまったのだ。モンガはもう既に連れて行かれていたし、リューガはいないので残っているのは結果としてマユミ・カゲユキ・ペトン・アイラ・オルバの5人。


 しかも、剣を持って戦う───と言った人はいない。


「俺がやるしかねぇ!『羅針盤・マシンガン』!」

 そう言って、自分の指から無数の弾丸を飛ばすオルバ。チューバは、その弾丸を避けるために、近くに生えている木に登っては、ジャンプで飛び降りて距離を取った。


『羅針盤・マシンガン』は、球切れが無い代わりに一つの方向にしか放てない。だから、ちょこまかと動くような相手には向いていない能力だった。

 ───が、その能力の穴を埋めるような戦法が、オルバにはあった。


「ならばッ!」

 1発撃っては、少し敵の進行方向に動かす。それにより、相手に放つ弾数の数こそ減るけれど、相手を追って放つことができる。


「クソ!面倒な野郎だ!」

 そう言って、オルバに迫ってくるチューバ。


「クソッ!」

「オルバは戦力だ!守れ!」

 そう言って、ペトンはオルバを庇いつつ行動を開始する。


「『我武者羅ガム』!」

 そう言って、チューバの動きを一瞬でも止めようと画策するペトン。


「気休めにもならない!」

 一瞬で、ペトンの『我武者羅ガム』は剥がされてしまう。


「まだだッ!」

 ペトンは、チューバの方へ近付いては再度『我武者羅ガム』を使用する。チューバが剥がしては捨てようとした我武者羅ガムを巻き込んでくっつけたガム。

 それにより、ガムを取り除くのは難化した。


「1分1秒でも稼げれ───ばッ!?」

「残念だな...お前のガムはガムだったよ」


 全てのガムを取り除いたチューバ。

「何を!」

 オルバの『羅針盤・マシンガン』を避けるためにその場から距離を取ったチューバは口を閉じずに話を続ける。


「───『冷凍チョコレート』だ」


 冷凍チョコレート・・・自分の体からチョコレートを分泌することが可能。



「チョコレートだと!」

 ガムと一緒にチョコを食べると、ガムが無くなってしまう───というのは有名の話だろう。

 チョコの油脂がガムを溶かすのだけれど、それを一気に行ったのだ。


「恐ろしい...まさか、あの一瞬で...」

「簡単だ」


 確かに、目の前にいるチューバは猛者だった。それは、この場にいる誰もが理解していることだ。

「チョコが体からだせようと、俺が諦める理由にはならない!」

「無駄なことを!」


 そう言って、チューバとペトンは再び相見える。まぁ、チューバはオルバに常時『羅針盤・マシンガン』で狙われているのでいつだってどこかに移動しながら動いているような状態のだけれど。


「───容赦はしない!『我武者羅ガム』!」

 その名の通り我武者羅に使われる『我武者羅ガム』をチューバは避けて、ペトンに接近する。


「お前もだ」

 そして、チューバはペトンに『仮病なので帰ります(ホームシック)』を使用する。

「───ッ!」


 ペトンが、月光徒のアジトに誘拐されたその刹那、ペトンが執拗なほどにチューバに接近していた理由が判明する。

「───『回収』」


 ───そう、ペトンの後ろにピッタリとくっついて行動していたのはいつだってペトンの相棒であったアイラだった。


『我武者羅ガム』と『回収』という強すぎるコンビ技を披露していた2人が、今回はペトンだけ───という訳だったのだ。

 ペトンは『仮病なので帰ります(ホームシック)』を使用する際、必ずその体に触れることを見極めていた。


 だから、接近して自分を犠牲にしてでもチューバの『回収』を成功させようとしたのだった。

「───まずいッ!」


 チューバが、その場から離れようとする一瞬。アイラの両腕がチューバに触れる。

 そして、チューバは『回収』され───





「『赤子の手をひねるよう(イージーゲーム)』」


 ───ない。


 相手の能力が通用しなくなる能力『赤子の手をひねるよう(イージーゲーム)


「───んなッ!」

「危なかったぜ!」

 そう言って、チューバはアイラさえも『仮病なので帰ります(ホームシック)』で連れて帰ってしまう。


「まずい...相当まずい!」

 アイラを回収して尚、オルバの『羅針盤・マシンガン』を避けるためにその場を縦横無尽に駆け回っているチューバ。

 これだけ見れば、まるで大道芸のようだけれど現実はそこまで甘くない。


「オルバ...逃げろ」

「───は?」

「オルバ、逃げろ。ここは俺とマユミ・セイジの2人でどうにかする」

「そうよ。リューガと合流して、一番戦えそうなのはアナタしかいないわ」

「でもよ...こんなところで諦めるのには...」


 ───そ、こんなところで諦めるのはまだ早い。


 仲間が皆連れて行かれた今、どうすることだってできないのだ。

 仲間がアジトに連れて行かれて、抵抗すること以外できないのだ。ここで逃げてしまえば、仲間にはもう目を向けられなくなる。


「戦略的撤退なんてしねぇ!死ぬまで俺は戦い続ける!」

「ほう、いい心構えじゃないか。その心構えをお前を殺す!」


 そう言った直後、オルバに向かってくるのはチューバ。その目は、『仮病なので帰ります(ホームシック)』を使う時の目ではなく相手を殺すための目だった。


『羅針盤・マシンガン』でチューバの体を銃弾が穿てども、チューバの動きは止まらない。

「まず───」


 オルバがそう思った刹那。


「誰ですかあなたは!人にちょっかいなんてかけちゃだめです!」


 その言葉と共に、チューバの頭上から降り注いだのは多量の砂だった。


 ───そう、ステラが21の世界に一足先に逃亡してきていたのだ。

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