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第610話 狂乱の魔法

 

「な...これは...」

 俺の体に這い寄ってくる、ムカデやミミズなどの、見ているだけで不快感がやってくるような動物が俺の体に這い寄ってきていた。


「───ひ」

 俺は思わず、そんな言葉を出してしまう。体に、虫が集っているのだ。叫びたくもなるだろう。


「なんだよ、これ───ッ!」

 俺の目の前にいたのは、二足歩行の牛だったり、二足歩行の蛙だったりだった。


「おいおい、何が起こってやがる!」

 バトラズの声も聞こえる。先程まで、バトラズがいたところにいるのは、二足歩行の蛙だった。


「───まずい...」

 そう呟くのはイブ。だけど、その姿は見えない。


 その直後、俺の視界は虹色に染まっていっている。

「なんだよ、これ...」

 カラフルに染まっていく視界。そして、すぐに世界が濃淡の差こそあるが、ほとんど焦げ茶色に変わっている。


「んだよ...んだよ、これッ!」

 焦り。迷い。恐怖。


 俺は、強迫観念に駆られたように、見えない何かに縋る。何が起こっていたのか、わからなかった。


 ***


 リューガが襲われていた謎の現象は、リューガだけでなくイブとステラを除いた全員に影響があった。

 幻覚を見て、視界が歪むような感覚があったその現象。


 それは、ステラの持つ「砂の魔法」ではない、イブから使うこと禁止されている固有魔法───狂乱の魔法を使用したことで起こったのであった。


 この魔法の副作用により、ステラはジャッカルの獣人になった───正確には、ジャッカルの獣人として認知をされるようになっていた。


 認知される───というを簡単に説明すると、物質的には「人の姿」をしているのだけれど、人や動物などの目を通してみると「ジャッカルの姿」をしているということだった。故に、万人にはジャッカルの姿で映るということだった。だから、正確には獣人ではないのだけれど、視覚嗅覚聴覚等五感によれば、獣人として認識されるのだった。


 難しい話だが、認識としてはジャッカルの獣人でいい。これまでの認識を変える必要はないのだった。


 ちなみに、狂乱の魔法を禁止しているのは、色々な人に影響を与えてしまうからであった。

 狂乱の魔法にかかった人物は、最後まで解除されなければ「死」してしまう。


 それにより、ステラは魔法を使いこなせていない頃、狂乱の魔法を暴発させてしまい、家族を含む1500人以上もの死亡者を出してしまったのだった。


 さて、駄弁は抑えてリューガの視点に戻そう。


 ***


「クッソ...」

 俺は、情報が把握できていない。正確には、把握できそうな情報でさえも把握できない。


「ステラ、落ち着け!」

 イブの、そんな声が響く。俺は、その声を聴くだけで行動ができなかった。その刹那───


「───ッ!」

 俺の背後から迫ってくる、1つ目の怪物。その巨体で、俺のことを掴もうとしてきたのだった。


「んだよ!」

 俺は、ソイツから避けるような素振りをする。その怪物は「アァ...」などと、言葉を垂らしては俺の方に迫ってきていた。


「何がどうなってんだよ...一体...」

 何も状況を理解できない。ステラのことはイブに任せて、俺はこの巨体の1つ目の怪物のことをどうかした方がいいだろう。


「俺が相手してやるよッ!『破壊』ッ!」


 ”バキバキッ”


「ギャッ!」

 1つ目の怪物の悲鳴が聞こえる。そして、その怪物はその場に倒れたのだった。


「ははは...倒してやる!『破壊』!『破壊』!」

「リュ...ーガ...」

 怪物は、俺の名前を呼ぶ。そして、息絶えたようだった。


「よし、倒した!」

「ステラを離せ!」

 その刹那、イブによってステラが助けられたのか俺の見ている空間は元に戻った。


 先程まで怪物がいた空間には何もおらず、腐ったように潰れていた砂が残っていた。もしかしたら、俺に襲いかかっていたのはヴィオラの砂人形だったのかもしれない。


「イブさん...怖かったですぅ...」

 そんな声をあげるステラ。ステラは、イブに抱かれて涙目になっていた。


「クッソ...何が起こったんだ...」

 その声をあげるのは、ヴィオラ。下半身を失った状態で、ヴィオラは砂の上でそう呟いていた。


「ステラ、ごめんな。怖かったよな...」

 そう言って、ステラの頭を撫でるイブ。片手でステラを持っているから、それ相応の筋肉はあるのだろう。


「───今度こそ...今度こそお前を殺してやるよ。ステラは、俺の近くにいろ」

 そう言って、体の前面にいたステラを、背面に持っていく。おんぶのような形になった。


「なんだか、よくわからない妨害が入ったが...ステラの魔法の効力を知ることができた!是非とも、月光徒に欲しい!」

「絶対に、そんなことさせるわけがないだろう」


 ヴィオラとイブは再度、相見える。


 ヴィオラは十分に強い───というか、倒すのに厄介な相手だったが、イブやステラがいるならば、なんとかなりそうだった。


「ステラ、また協力してくれるか?」

「も、もちろんです!イブさんのお願いなら、ステラどんなことでも頑張ります!」


 イブにおぶられたステラは、元気な声で返事をする。この2人のタッグは、紛れもなく強かった。

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