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第602話 レタス

 

「ヒヨコさーん、レタスを一枚いりますかー?」

 そう言って、ステラはレタスを丸ごと手に持と、尻尾をブンブンと振り回しながらそうい言った。


 ───部屋にいるのは、俺とステラ。そして、机を挟んで椅子に座って対面しているイブと、カゲユキ・バトラズの合計5人───3人と2匹だった。

 他のメンバーは、一足先に部屋に行ってもらっている。


「ヒヨコになら、何か雑穀の方がいいんじゃないか?」

「そうなんですか?雑穀なんてありましたっけ?」

「俺だけ食事を用意してもらわなくても大丈夫ですよ。それに、何でも食べられます」


 俺はどうやら、ペットのような感じでジャッカルの獣人であるステラに可愛がられてしまっている。

「なんでも食べられるんですか?じゃあ、特別にステラのレタスを一枚あげます!」

「あ、ありがとう...」

 俺は、生のレタスを1枚外されて貰う。このまま食べろと言われても、困ってしまう。


 せめて、マヨネーズかドレッシングくらいかけないと。などと思っていたら、まん丸のレタスを、そのまま齧り付いた。シャキシャキと音を立てて、ステラに食べられるレタス。


「───んで、こっちは真面目な話をしようじゃないか」

「俺がふざけてるみたいだろ」

「ふざけてるとは言わないが、遊んでいるだろう?」

「違うと否定したいんだけどなぁ...」

 俺は、ステラの遊び相手として「遊んでいる」というよりかは「遊ばされている」と言ったほうがいい気もする。


「このヒヨコ───リューガが喋っているのは、何らかの魔法ではなく『憑依』ということか?」

 俺は、自分の能力のことをイブに話したのだった。


「あぁ、そうだ」

 俺は、レタスを勧められたので食べている。それ故、カゲユキやバトラズがイブからの問答は答えてくれている。


「そうか...『憑依』だったのか...」

 そう言って、椅子に座り直すイブ。そして、一瞬天を仰いでから対面で座っているカゲユキ達の方を見た。


「ステラの魔法が解ける方法が見つかるかもしれないと思ったんだがな...まぁ、よくよく考えればステラは二足歩行の人型の獣だけど、リューガは喋るだけのヒヨコだからな...」

「ちょっと、ステラは獣じゃなくてジャッカルです!」

「喋るだけとは失礼な」

 俺とステラの双方から責め立てられるイブ。


「すまん。言葉の綾だ」

 俺達2人の方を見てそう伝える。

「質問だ。ステラさんは何かの魔法でこの姿になったのか?」

「あぁ、そうだ。固有魔法...ということだけは言っておくが、俺からは詳細は黙秘させていただく。彼女のことだからな。ステラに聞いてくれ」

「ステラはイブさんから、魔法のことは誰にもお話するなって言われてるから話しませんよ」

 ステラは、レタスを食べながら、口に物がなくなったタイミングでそう伝える。


「別に、隠している能力や魔法をこちらも追及しようとは思わない」

「こちらも、泊まる場所を提供してくれているだけでも怪しいからな」

 カゲユキとバトラズの2人はそう口を開いた。


「リューガさん、もう一枚いりますか?」

「いや、大丈夫。お腹いっぱいだよ」

「そうですか、少食なんですね」

 生のレタスを2枚も食べたくはなかったので、お腹いっぱいということにして断っておいた。


「それで、20の世界にはいつくらいいるつもりだ?こちらは、いつでも寝泊まりできるので問題はないのだが、食事の量がな...」

 ここは宿じゃなくて、一般家庭だ。一度に大量に作る───というものではないはずだった。なんだか、俺達が一度に駆けつけてしまって申し訳なく思ってしまう。


「そうだな...アイキーが見つかり次第次の世界に行く予定だ」

「そうか...場所ならわかっているから明日にでも一緒に取りに行くか?」

「いいのか?」

「もちろんだ」

 どうやら、イブはアイキーの在り処を知っているようだった。それならば、かなり頼りになるだろう。


「話を聞いてくれて感謝する。部屋に戻ってもらって構わない」

 イブは、そう告げる。

「こちらこそ、宿を貸してくれて感謝する」

「リューガさん、部屋に行くんですか?」

「あぁ、また食事の時な」

「わかりました!イブさん、ステラも何か手伝います!料理でもしましょうか?」

「じゃあ、ニンジンの皮切りでもお願いしようかな」

「任されました!」


 どうやら、ステラとイブの2人は仲のいい夫婦のようだった。俺は、バトラズの肩に乗って他の皆がいる部屋に移動する。

 部屋の場所は、既にわかっていた。


「それにしても広いよな...」

「この世界の奴隷商の組織を壊滅させた───なんて言ってたけど、ここはそのアジトだったんじゃないか?」

 そんな話を俺達はする。ちなみに、根拠はない。



 ───そして、夕食時。


「……え?」

 俺の席───いや、まぁヒヨコの姿だから座るのではなく机の上に乗るのだが、俺の前に俺の量の食事として置かれているのは、皆の1/5程の量の食事だった。


「ステラから少食と聞いたからな。残さないように少なめにしておいたぞ」

「───」


 どうやら、あそこでレタスの2枚目を断ったのが間違いだったらしい。

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