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第599話 『7人の同志』

 

 ───さて、どこから語ろうか。


 19の世界で起こった三つ巴合戦の事の顛末を、エピローグを、アフターストーリーをどこから語ってどこまで語ろうか。


 きっと、これからも実質的に無限に続く、続けることができるリューガ率いる『チーム一鶴』の旅路など、今後いくらでも語られるし、後に先にもその話が主軸になるだろう。

 ならば、今語る必要があるのは月光徒とゴエティアの二組織だろう。


 ───と、なると話の繋がりをも考えて、月光徒から話したほうがキレイだろうか。


 まず、19の世界での戦い───世界の歴史からは、語られるようなことは無く、闇へと隠蔽されるので名前を正式に付けられて公に晒される───ということはないのだが、この戦いの呼称をするとするのならば、やはり「ゴエティア奇襲」がいいだろう。


 いや、もちろん『ゴエティア』がどこかの組織を壊滅に追い込むのは珍しくなかった。

 だけど、20人を超えるような人物と、結果として『ゴエティア』の幹部が、その戦争に参加するのはこの戦いが最初で最後なのだった。


 ───と、閑話休題。


 ゴエティア奇襲にて、月光徒が受けた被害は大きかった。

 まず、奇襲により純粋に戦力を大きく削がれたのだった。チューバの元についていた、100人を超える月光徒のメンバーの半数以上は、今回の奇襲の冒頭にて死亡した。それにはゴエティア奇襲の冒頭で放たれた『罪裁きの雷(ギルティクラウン)』の効果も大きかっただろう。


 もし仮に、今回の戦争で『罪裁きの雷(ギルティクラウン)』が放たれなかったら、ここまで大きな被害は、月光徒側には出なかったはずだろう。

 だが、これも何かの運命なのだ。ここで死んだのは、もし仮に死ななかったとしても、『チーム一鶴』に関わることはなく、どこかの国で多種多様な利用で殉職するような人物ばかりであった。


 そう考えると、ここでの死はまるでサクリファイス。必要な犠牲だったのだ。

 なんて、死んだ本人や、その親族は、認めたりしないだろう。だから、それ以上の言及はやめておく。


 兎にも角にも、月光徒は───正確には、月光徒の幹部であるチューバは、自分の手足のように動かせる部下のほぼ全てを失ったと言えるだろう。

 もちろん、『罪裁きの雷(ギルティクラウン)』を耐えきった人物もいるが、それは裁きが小さすぎる、役立たずばかりだった。


 ───いや、卑屈で下劣な手を使って、人を殺そうとする人物が1人と、9の世界に滞在していたコードネーム『ホルン』の2人はいるだろう。


 その他の人物は、シェオルのような人間ばかりで、即戦力となるような人物はいなかった。『罪裁きの雷(ギルティクラウン)』が放たれた後に19の世界に帰還した為に、一命をとりとめた『7人の同志』が、『チーム一鶴』によって、殺害されたのが、かなりの痛手だっただろう。


 そうそう、『7人の同志』の他に死んで痛手となった人物が、一人いるだろう。

 これも同様に『チーム一鶴』の手で殺された───正確には、異空間に送り出されて戻れなくなってしまった『不死』のフェニーであった。


 この『不死』のフェニーを失ったのは、5年後10年後の月光徒の戦力を1/100───いや、1/1000、1/10000と、かなり減少させてしまったことになる。

 そう、『不死』のフェニーが生み出した不死兵は、月光徒の大きな戦力になる予定だったのだ。


 実際、月光徒はフェニーのその不死兵を生み出す実験に協力していたし、期待も寄せていた。もちろん、そこに大量の資金を当てていた。

 それが全て、『チーム一鶴』の手で壊滅されたとなると、問題は大きいだろう。


「クッソ、赦さない...赦さない!『チーム一鶴』はやはり憎むべき怨敵だった!」

『7人の同志』に所属しているリューガは、そう吠える。負け犬の遠吠えだった。


「殺された...殺された!全部、全部、全部失った!これも...どれもこれも『チーム一鶴』のせいなんだ!」

『7人の同志』を殺したのは、マルバスをクロエだとすると、全員『チーム一鶴』のメンバーなのだ。


 16・17の世界にてクロエとセイジが仲間に加わったことが、『チーム一鶴』を勝利に導いた要因だろう。

『チーム一鶴』はマルバス───クロエに、歪で複雑な感情を抱いているが、仲間に入れないという選択をしていたら、リューガの肉体とアイキーを手に入れることはできずに、まだ19の世界にいただろうし、幹部であるチューバの足止めをすることもできなかっただろう。


 だから、クロエを仲間にしたのが間違いだった───とは、絶対に言えないのだ。


 ───と、閑話休題。『チーム一鶴』の話をしてしまった。


「───リューガ、随分とお怒りだね」

 そう声をかけるのは、『7人の同志』のリューガが避難してきたチューバと同じく月光徒の幹部であるヴィオラのアジトだった。


「もちろんだ!仲間を殺されて起こらない人物などいるものか!」

「それもそうだね...配慮が足りていなかった」

 その組織の幹部が、その組織の言ってしまえば平に、謝罪をすることなどあり得ないのだが、この状況下では別だった。


『不死』のフェニーが、月光徒にとっての大きな戦力だったように、リューガだって大きな戦力だったのだ。


「リューガ、ご乱心かい?」

「ステート...様」

 リューガの目の前に現れたのは、ステート。月光徒のボスであった。


「君ならまた、機会をあげよう。私達に失望せず協力してくれるかい?」

 ステートは、その言葉でリューガを惑わす。リューガにとって、必要なのが甘い言葉ではなく更なる試練であることを、ステートは理解していたのだ。


「勿論だ」

 リューガは即答した。すると、ステートの口から出た言葉は───





「───リューガ、君のためにまた新しい組織を作ろう。だから、今は一先ず休んでいてくれ」


 ───ステートの言葉で、『7人の同志』は事実的に壊滅して、また新たな組織ができることが明らかになったのだった。


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