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第527話 英雄の帰還

 

「ママが...ママが...知らない男とハグを...」

 そうトボトボと歩きながらボソボソと何か言っているセイジ。俺達は、16の世界に戻ってきて、王城へ向かっていたのであった。


「別に、ユウヤがいなくたってアンタと何かしようって気にはならないわよ」

「ぐさり...」


 今、セイジに何かが刺さった。話を跨いだボケってのは、少しいい気がしなかったがそれほどまでにセイジは意気消沈しているようだった。

「マユミ、俺に彼が何者かしっかり説明してくれないか?なんか、変に恨みを買って俺が刺されそうなんだけど...」

「殺す...殺してやる...」

「ほ、ほら、あの人が物騒なこと呟いてる!」


「まぁ、赤の他人であったら嬉しいんだけれど...アレは悲しいことに私の魔法の師匠よ」

「そうなの...」

「ママァァァ!ぼくとぎゅーをちてぇぇぇ!」

 そう言って、マユミに向かって走ってくるセイジ。それは、今日戦ったどの敵よりも奇怪な走り方であった。


 いや、今日見た敵に新規のキャラはいなかったのだが。いや、到着した時にはもう既に死亡していたポーラン・ハイランドは一応初めて出会ったと言えるだろうか。


「グラヴィティ!」

「ごへ!」

 マユミは、セイジに闇魔法であるグラヴィティを使用してセイジを転ばせた。


「ひ、ひどいでちゅ...これはぼくが教えた魔法なのに...恩を仇で返すんでちゅね...」

「確かに教えてほしいと頼んだのはこっちだけど...これも愛情だわ...」

「愛の形は人それぞれ...って訳でちゅか...」

「マユミ、師匠なんだろ?いじめるのはやめてあげなよ...」

「いじめてるつもりはないけれど...ユウヤがそう言うならやめようかしら」

 マユミのセイジに辺りに対して、少し思うことはあるが何も口を突っ込むべきではないだろう。


「くだらないことやってないで。早く行きましょう?」

「そうですよ。そんな、漫才みたいな会話はしないでくださいよ...」

 そう言って、早く勝利報告をしようと声をかけるのはアハトとクロエであった。


「そう言えば、リューガ達は16の世界を拠点にしているのか?」

 そう、質問してくれたのはシンドーク達であった。前みたいに、旅に出る───みたいな事はせずにここ1年ほど16の世界にいる。

 王城にそれほど長く居候させていただいている状態だ。別に16の世界の王城「ガルム」は164階建てであるので、俺達が住むことで何かに支障が出る───という訳ではなさそうだった。


 ブーロン1世達が隠れていた地下も今は何かに利用されているらしい。地下は、騒音を気にしなくていいらしいから音が出る作業などはそこで行っているらしい。カラオケとか設置したら売れるのではないか。


 ───そうは思ったものの、異世界に転生してきてから歌という歌を聴いたことがない気がする。


 もしかしたら、そもそも歌という概念が無いのかもしれない。まぁ、詳しいことは知らないけれど。

「まぁ、拠点にしてるな。3人を助けることが目標だったし、変に行動できなかったからさ」

「もっと早く助けてくれればよかったではないか?」

「それに関しては申し訳ないと思っているよ。だけど、こっちにだって事情はあるんだ」

 俺は、少し言い訳のようにしてシンドークに説明する。


「しっかり助けてくれたのだから文句はこれ以上言わないがな...次は18の世界か?」

「そうだな。旅に戻るならそうなるよね。18の世界は───」


 今から1年ほど前。15の世界で俺の『消去』の被害にあって死亡してしまったシェオルの生まれ故郷が18の世界であった。

「シェオルの両親とは、一度会っておきたいよな」

 シェオルの最期を───俺が殺したという事実を伝えなければならないだろう。きっと、シェオルの両親はいなくなってしまったシェオルのことを今でも探しているはずだった。


 半ば誘拐のような形で、シェオルは月光徒に連れて行かれたのだ。探さないわけがないだろう。

 息子が桜泉症であったとしても、血が黄色かろうと、非行少年たちだろうと、息子は息子だ。そこに愛が無いわけがない。


「───色々と片付いたら18の世界に行こうな」

「もちろんだ!絶対にそうしようではないか!」

 そんなことを話して、俺達は王城「ムガル」に戻ってきた。ここを出ていったのはほんの数時間程前であったが、少数精鋭で行ったからかかなりスムーズに進んでいった。


「いやぁ...久しぶりだな。この王城も」

「本当だな。俺達が見てたのはずっと石の壁だったからよ」

 シンドークとバトラズがそんな会話をしている。牢屋に囚えられていたが、ほとんど外に出してもらえなかったようだった。だが、王の後ろに出入り口の一つがあったと考えると幽閉されていたのだろう。本当に助けられてよかった。


「ハロー、ハロー、ハロー。『チーム一鶴』の皆さんに『陽光の刹那』の皆さん。そして、アハトにセイジにクロエにカルガンの4人ですね?ユウヤさんやシンドークさん・バトラズさんがいることを考えると、勝利をしたのですな?」

 そう言って、16の世界の王城「ムガル」の王室の前に控えていたのはジャンク宰相であった。


「ずっと、待ってていたんですか?」

「いやいや、姿が見えたからここにいたんですよ。ワタクシはお疲れ様とだけ伝えにきたんです。早く、パープル王に報告してあげてください」


 そう言って、ジャンク宰相は王室の扉を開けた。そして、俺は王室の奥にある玉座に座るパープル王と目が合った。

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