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第515話 「見せ場にならねぇ」

 

「俺の仲間を傷つけんな!」

 アイラが燃え始め、ビフロンスの前でのたうち回っている現状を見て、オルバはすぐに右の手の平をビフロンスに向ける。そして───


「『羅針盤・マシンガン』!」

「『病は気から、文明は火から』」


 ビフロンスに当たるのは、数多の銃弾。そして、オルバを襲うのは燃え盛る火であった。しかも、オルバはアイラと違い体の周りに『蝋燭』で蝋が付いているのでよりよく燃えている。


 ビフロンスは、銃弾が当たったためにその場に倒れた。


「───ッ!」

 この燃える炎を止める術は、今のところ無い。


 ───いや、ある。ビフロンスさえ殺害すればそれに連動して火だって消える。


 それは、リューガがビフロンスを殺害した時にも起こったので証明されたも同然だ。

「アイラ、痛いと思うが少し耐えてくれ!すぐに決着を付ける!」

 オルバは、泣き喚きながら火を消そうと地面をゴロゴロと転がっているアイラにそう声をかけた。


 オルバにだって火はついているのに、すごい胆力だ。


「これで止めだ!『羅針盤・マシンガン』!」

 地面に寝そべって動かないビフロンスに向けて、オルバは『羅針盤・マシンガン』を放つ。だが───


「クソッ、守られたか!」

 ビフロンスは、自分の体を『陽炎蜉蝣(カゲロウ)』で再度包んでしまった。しかも、今度は打たれた一部分だけでなく、体全体を。


 まるで、鎧のような『陽炎蜉蝣(カゲロウ)』を目の前に、オルバは攻撃する術を失った。


 ───いや、オルバ以外の2人だって攻撃する術を失っていた。


「クッソ、あの『陽炎蜉蝣(カゲロウ)』をどうにかしねぇと『羅針盤・マシンガン』は通らねぇ!」

 しかも、アイラとオルバの体は現在進行系で燃やされているのだ。そこまで悠長にしている暇はない。


「『回収』を使え...そうにはないし...」

 オルバは、目の前の状況を見て作戦を練ろうとするも、どれもこれも上手くいく算段はつかない。せめて、火さえ消せれば───


「おいおい、いい加減諦めろよ?お前らじゃ実力不足なんだよ。俺にはお前らが何度死んだって勝てない」

 ビフロンスがする挑発。脳内で作戦を考えているオルバやペトンに対する、最大の侮辱だった。


「リューガと同等か、それ以上の強さの人じゃねぇと俺は倒せねぇ。だから、お前らじゃ無理なんだよ、馬鹿が」

「それはちょっと、俺達のことを馬鹿にし過ぎなんじゃねぇか?」


 ───その刹那、陽光が3人を照らす。


 その明るさに、ビフロンスは一瞬目をくらませた。


「少なくともその罵倒...俺は絶対に許さない」

『陽光の刹那』で唯一体に火がついていないペトンが、『陽炎蜉蝣(カゲロウ)』で鎧のように体を包んでいるビフロンスを睨む。


「アイラ、オルバ。いつも通りの作戦で行こうじゃないか。ビフロンスに、奇怪な作戦なんか必要ないだろうからな」

「了解だぜ!」

「了解...よッ!」


 燃えているオルバとアイラは、喘ぎながらも返事をする。特にアイラは辛そうだったが、ビフロンスに煽られたことに相当怒りを見せたようだった。


「行くぞッ!」

 直後、ペトンが動き始める。ペトンの動きには、炎を付けられようと行動を止めにしないほどの精神力があった。


「『病は気から、文明は火から』」

 直後、ビフロンスはペトンの体に火を付ける。だが、やはりペトンは止まらない。彼は、表情を歪めつつもビフロンスに迫っていった。


「何を───」

「『我武者羅ガム』。もう、とっととくたばれや」

「───んなっ!」


 直後、ビフロンスと地面がガムで引っ付き身動きが取れなくなる。最悪、行動不能にさえすればほとんど勝利できるので、これでもいいはずなのだが、『陽光の刹那』は煽られたために行動を終わりにしない。


「『回収』よ!私達を虚仮にしたこと、許されると思わないことね!」

 そして、アイラの『回収』によってビフロンスの周りを鎧のように囲んでいた『陽炎蜉蝣(カゲロウ)』が回収される。これで、ビフロンスの生身が顕になった。


「これで終わりだ!『羅針盤・マシンガン』!」

 最後に放たれるオルバの『羅針盤・マシンガン』で、ビフロンスの体を貫く。


 数多の銃弾がビフロンスの体を穿ち、ビフロンスを完全に殺害した。


 ───今度は、もう『ダブル・ディファレンス』は使えない。


「完全勝利、だぜ」

 その直後、『陽光の刹那』の3人の体から火が消える。


 ───これで、勝利。


「はぁ...はぁ...体が痛い...」

 アイラが、肩で息をしながら燃やされていたことの文句を言う。


「何はともあれ、勝利です...これで、俺達3人でリューガ並の実力があることは証明できましたかね?」

「んじゃ、サンがいればリューガ以上だったのかもな!なんて、もうサンはいないんだけどよ...」

 ペトンの言葉に、オルバが反応する。もう、サンは死んでいる。本来、人は生き返りはしない。


 ───『陽光の刹那』は、そんな人の隆盛を表して付けた名前であった。


『刹那』がそんな人の儚さを表しているのであれば、『陽光』が表しているのはリーダーであるサン自身であった。


 こんな、短い生でも何かを成し遂げられる───という証明がしたくてそんな名前を付けたのであった。


「───勝ったのね」

「あぁ、そうだな...」


 アイラとペトンの感傷に浸るような言葉。そして、3人はビフロンスの死体を見る。3人は、ビフロンスに煽られたことを思い出したのであった。


 ───そして、それに言い返すような形でオルバはこう言った。


「お前なんか、この戦争の見せ場の一つにだってならねぇ!」

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