第5話 はじめてのおつかい
「リューガ君...君はいつからサボっていたんだい?」
「そ...それは...」
俺は答えられない。記憶にないからだ。
「ずっと終業時間をわかっていなくて...」
「そうかい...なら、最初からサボってたってことだね?」
「え..あ...」
俺は困惑する。このままじゃ罪が重くなる。逆に殺されるかもしれない。
「返事がしどろもどろだ...図星だったか...」
ジャワラの声は低いままだ。怒ってはいなさそうだ。
「働き始めたのが3年前で...週に4回だから...合計で660時間分サボってたってことだよね?」
「はい...そうです...」
「なら、給料無しで660時間分きちんと働いてもらおう...休みなしでね...」
660時間ということは、27.5日だ。俺がここに今までいた期間の4倍だ。
「や...休み無しですか?」
「当たり前だ...掃除だけじゃなく、雑用もやってもらう!いいな?」
「は...はい...」
「では、28日後の朝6時まで働け!最初の仕事は食器洗いだ!終わったらまたここにこい!仕事を言い渡す!サボるなよ?」
「は、はい!」
俺はジャワラの圧に負けて返事をしてしまう。そして、領主室を出た。
「おいおい!どうだった?」
「クビになった?なったよな?」
野次馬たちが一斉に俺に話しかける。俺は野次馬を無視して、キッチンに向かう。
キッチンには山積みになった食器が残っていた。
「おいおい...これを洗うとか...パックリ割れしすぎてポックリ逝くかもな...」
自分でも今のはつまらないことを自覚していた。ホントにつまらなかった。水に触れると余計に冷たい気がして、言ったことを後悔している。俺は1枚1枚丁寧に洗った。そして、2時間後、洗い終わった。
「ふぅ...やっと終わった...」
と、思ったのも束の間だ。夕飯終わりで、食器がどんどん運ばれてくる。通りであれだけ溜まってるはずだ。
一体何人分の飯を作ってるのだろう。俺は黙々と洗い続ける。洗剤によって手は荒れてカサカサになっていた。いや、これが元々なのかもしれない。1時間後、夕飯の分も洗い終わった。
「これで終わったな...じゃあ、領主室に行くか...」
俺は領主室に戻る。服の内ポケットにはキッチンで奪ってきたナイフが入っている。
「やっと終わったのかい?遅かったね?」
「すいません...夕食の分も洗ってたので...」
「まぁ、いい!次は夜の警備でもお願いするよ...」
「わかりました」
俺は領主室を出る。領主室にはメイドが数人いたのでジャワラを殺せなかった。
俺は朝7時になるまで、屋敷を探索し続けた。だが、アイキーらしいものは見つからなかった。
やはり、領主室にあるのだろうか。残りは647時間ある。焦る必要はない。
朝7時になったので、領主室に行く。
「リューガ君...おはよう...」
「お早う御座います」
「それじゃ、皿洗いをしたら、お使いを頼もうかな?買い物リストはメイド長に貰ってくれ...」
「わかりました」
俺はまたキッチン向かう。夜な夜な屋敷を歩き続けたのでもう疲れた。皿洗いを行う。
1時間ほどで終わった。次はメイド長のところへ行かなければならない。
「メイド長さーん!どこですかー...」
俺は屋敷内を歩き回る。
「あ!リューガさん!」
昨日話しかけてくれたメイドがいた。
「おぉ!おはよう...いや、こんにちはか?」
「クビになってないんですね!よかったです!」
「いや、まぁ...タダ働きさせられてるだけで...」
「あ...そうなんですか...」
「メイド長はどこにいるか知らない?」
「あぁ...メイド長は今は休憩室にいると思われます!」
「あ、ありがとう!」
俺はメイドと握手をする。メイドは頬を赤くしていた気がする。気がするだけだ。うん。
俺は休憩室に行く。そして、ノックをする。
「すいませーん...メイド長はいますかー?」
”ガチャ”
休憩室のドアが開く。中には数人のメイドがいた。全員メイド服を着ている。だが、顔は蜥蜴なので可愛いとは思えない。まぁ、自分の顔も蜥蜴なのだが...
「リューガか...どうした?」
「買い物リストを貰いに来ました」
「あぁ...これだな!それじゃ、頼んだ!」
俺は紙切れを渡される。書いてあるものは4つだ。
・ルター芋 15kg
・高級茶葉 1kg
・ケイコの糸 500m
・竜の卵 50個
俺でもわかりそうなものは高級茶葉しかない。ていうか、ルター芋15kgってなんだ?15kgって。
「それじゃ、お金な?」
俺は財布を渡される。財布にはジャラジャラと硬貨が入っている。
「それじゃあ...行ってきます...」
まずはどれが一番買いやすいだろうか。リューガの知識を使う。一番楽なのは竜の卵らしい。
「え?一番楽なの?すごいむずそうなのに?」
俺は屋敷の外に出る。そのついでに豚小屋によった。
「おーい!ショウガさーん!」
一匹の豚が近づいてくる。
「おぉ!ひよこよ!なにか進展はあったか?」
「ジャワラと会ってきた...そんで、今からお使いに行く!」
「へぇ?何を買うんだ?」
「ルター芋と高級茶葉と、ケイコの糸と竜の卵だ!」
「ほぉん...ルター芋とケイコの糸・竜の卵は近くの村ですぐに買える!高級茶葉はヘイターの屋敷の近くに行かなきゃ買えないなぁ...」
「へぇ...じゃあまずは高級茶葉以外を買ってくるよ!」
「あぁ!そうしろ!」
俺は近くの村へ向かう。村の名前は「セカンド」だった。
「ファーストヴィレッジなのに...セカンドなのかよ...」
俺は商店街に入る。そして、洋服店に入る。
「すいませーん!ケイコの糸ってありますかー?」
「えぇ?あるわけないでしょう?あんな高級品!」




