第4話 ジャワラと対面
「どうした?ショウガさん?俺はいるよ?」
俺はショウガの頭を撫でようとする。ここで思考が追いつく。おかしい。今自然に屈んでショウガの頭を撫でようとした。俺は自分の手を見る。それは蜥蜴人間の手だった。
「なっ...なんで俺が蜥蜴人間にぃぃぃ?」
俺は確かに蜥蜴人間になっていた。
「勝手に撫でるな!ひよこを返せよぉぉぉ!」
「おい!慌てるな!ひよこは俺だよ!ショウガさん!」
「適当なことは...って?なんで我の名前を知っているんだ?」
「だから俺がひよこって言ってるだろ!」
「本当にひよこ...なのか?じゃあ、元いた星は?」
「地球だ!」
「うん...本当みたいだ...俄には信じがたいけど...」
俺は何故死んでいないのか。自分の服装を見てみるとさっき俺のことを食べた使用人の服だった。
「ひよこには戻れないのか?」
そう呟いた瞬間、体が縮む。そう。ひよこに戻れたのだ。
「すげぇぇぇぇ!ひよこに戻れた!じゃあ、さっきの蜥蜴人間に!」
背はどんどん大きくなる。使用人の体になったのだ。
「なぁ!ショウガさん!俺、変身できるようになった!しかも、切り替え自由!」
「おぉ!でも...何故だ?ひよこはさっき食べられたよな?」
「あぁ...この使用人に...」
俺の頭には膨大な量の情報が入ってくる。頭がパンクしそうだ。これは使用人の記憶だった。
「えぇと...こいつの名前はリューガ...年齢53歳...好物は若い鶏...この屋敷にはアルバイトで雇われてる...残りの掃除場所は...トイレ・風呂・キッチンって...ちゃんと掃除しろ!小学生か!」
「どうしたんだ?急にブツブツ言って...」
「いや、情報が頭の中に入ってきて...」
「そうか...きっとひよこは能力持ちじゃな!」
「能力持ちって?」
俺はひよこの姿に戻って質問する。蜥蜴人間の体じゃショウガの首が痛そうだったからだ。
「たまにこの世界には能力を持って生まれて来るものがいる。そいつらのことを能力持ちって言うんだ。あ、人間はその能力を手に入れることはできない」
「だから人間は無能ってされてたのか...」
「あぁ!そうだな!能力を持つと就職や結婚もしやすくなる!能力の遺伝はあり得るからな!」
「じゃあ...俺はなんていう能力なんだ?」
「すまない...能力鑑定士に能力を見てもらわないとわからない...」
「能力鑑定士ってなんだ?能力を見極められるのか?」
「あぁ!能力の内容と、名前を見ることができる!医者とかがこの資格を持っているな!」
「能力鑑定士って資格の名前なのか...」
「あぁ!だが、習得は非常にムズいらしい!やったことないから知らないけど!」
「そうなんですか...」
「ていうか...それでジャワラに近づけないか?そしたらアイキーも手に入るだろうし...」
「そうじゃん!ショウガさん天才?」
「そうかぁ?そんなに頭がいいかぁ?嬉しいなぁ?」
「デレデレしないでください...」
この世界の蜥蜴人間は平均年齢は250歳ほどらしい。となると、この使用人───リューガは人間でいう20歳程度だろう。通りで見た目と年齢があってないわけだ。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「仕事をして、ジャワラに近づけ!それで、不意打ちでジャワラを殺せばいいだろう!」
「そうか!ありがとう!」
「待て!ジャワラは生物を他の生物に変える『生物変化』という能力を持っている!私みたいに家畜になりたくなければ気をつけろよ!」
「気をつけろよって...もう俺鶏で家畜なんですよ...」
「ハハハ!そうだったな!なら、行って来い!」
俺はリューガの姿になって屋敷の中に戻る。屋敷の床には赤いカーペットが敷かれている。いかにもお金持ちが住んでると行った屋敷だ。途中でメイド服を着た蜥蜴人間とすれ違った。いや、蜥蜴人間が正しいのか?まぁ、いい。俺はすぐにトイレ掃除とお風呂掃除を終わらせた。屋敷の地図はリューガの知識から借りパクして行ってる。だが、このリューガの知識に歴史がない。昔のことについて知ろうとしても何もわからない。あ、リューガのプライバシーな内容じゃなくて、世界の歴史だよ?
人間の過去について知ろうと思ったのに少し残念だ。
リューガの知識を漁りながら掃除をしていると、一人のメイドに話しかけられた。
「リューガさん!今日は残業してるんですか?」
「え?残業?」
「えぇ?いつもこの位の時間には帰っちゃうじゃないですか?」
「え、今何時?」
「今は午後5時15分ですよ?」
リューガの記憶には仕事時間は朝9時から午後の6時までとなっている。話が噛み合わない。
「え?働く時間じゃないの?俺、6時までだよ?」
「え?そうなんですか?私てっきり5時までかと...」
俺は気づいた。リューガはいつも1時間早く帰っていたのだ。話が噛み合わないはずだ。
「じゃあ...いつもサボってたんですか?ならジャワラ様に報告しないと!」
「あぁ!してくれ!どんどんしてくれ?」
「え?嫌がらないんですか?多分クビになりますよ?」
「あ?あぁ!いいんだ!クビになっても!」
「へぇ...そうなんですか...」
ジャワラに近づくには呼び出された方がいい。ジャワラに呼び出させるにはいい作戦だと我ながら思う。
そして、メイドはどこかに行ってしまった。これで俺はジャワラに呼び出させるだろう。
15分ほどすると、やはりジャワラに呼び出された。ここは領主室だった。廊下には野次馬の蜥蜴人間が数人いた。いや、何匹と数えたほうがいいだろうか?そんなことはどうでもいい。野次馬がいる前でジャワラを殺すことはできない。さて、どうしよう。
「失礼します。リューガです」
「入れ」
静かな領主室にジャワラの低い声が響く。俺とジャワラは対面する。特徴...全員蜥蜴で見分けがつかない。
だが、高そうな服を着ていた。