第36話 煙草の火
「ひよこか...うぅん...どこだろう?」
俺を連れた通行人はどこかに向かって歩いている。どこに向かっているのだろうか。
「お腹空いてるかもなぁ...餌にするか?」
どうやら食べ物をくれるらしい。だが、俺は人間のご飯しか食べないから、ミミズなんて見せても食べないからな!
「ピヨピヨー」
適当にひよこの真似をしておく。これで通行人も満足するだろう。通行人は一つの小さな家の前で止まる。
「着いたぞー!」
”ガチャ”
”ガラガラ”
通行人は家のドアを開ける。玄関には靴が1足も出てなかった。
「靴を片付けるのは、ひよこの後でいいよな!」
俺は部屋の奥へと連れてかれる。
「それじゃ、ちょっといい子にしててな!」
俺はキッチンに連れてかれた。俺に何を食べさせるつもりだろう。そう思った瞬間だった。通行人は俺を掴む。そして、瞬く間に俺の首の骨を折った。なんだ、この痛みは。苦しい。呼吸ができない。いや、しなくていいのだ。呼吸なんて、もう。
***
通行人の名前はカイロだ。カイロは仕事に就かずに生きていた。だから、その日食べることを考えて毎日生きている。今日は、食事に困っていたのだ。
そんな中、道端で美味しそうなひよこを見つけた。ひよこは鶏の子供だ。だから、食べられるはずだ。卵を産ませるのなんか待ってられない。今すぐにこのひよこを食べよう。そして、ひよこは捕まえる。ひよこは大人しくしていた。
「お腹空いてるかもなぁ...」
自分がお腹を空いているかカイロは自分自身に問うていた。そして、自分で答えを出す。その答えは、「餌にする」だった。餌と言う言い方は酷くリューガを勘違いさせる物だった。「こいつを食べるか」などと言う言い方をしておけば、リューガは逃げ切れたのかもしれない。
「それじゃ、焼きますか...」
カイロはリューガの皮を剥いで、ある程度血と内臓を抜くと料理をし始めた。ひよこ肉をある程度の大きさに切り分けてから、フライパンの上に少量の油を載せてそのまま焼く。表面に少し焦げ目がつく位焼いた。
「さて...何日ぶりの肉だろう?いただきまーす!」
そう言うと、カイロはひよこの肉に齧り付いた。
***
「ここは...前にも来たことがある...俺は食われるまで待ち続けるのか...」
食べられる時はすぐに来た。
《Dead or chicken?》
「チキン!」
待ってましたと言うばかりに、俺は返事をする。その瞬間、俺の視界は光に包まれる。俺は思わず目を瞑った。そして目を開ける。
「よし!復活したな!」
俺の前には少し焦げた肉が少量乗っている皿があった。俺の頭には膨大な量の情報が入ってくる。
「えぇと...名前はカイロで、年齢は31歳...彼女いない歴が年齢の童貞...趣味は煙草とお酒で、ニート...悲しいほどに酷い人生を送ってるな!って...ん?能力は...『酸化』を持ってるだと?ふぅん...」
俺はゆっくりと立ち上がる。そして、部屋の中を眺める。日常生活を送るための雑貨あるが、電子機器はない。まぁ、最初からこの世界にテレビなどなく、どの家も明治時代のような家なのだが...
「『酸化』か...」
俺は試しに、フライパンを触ってみる。だが、フライパンは鉄でできていなかった。
「なんだい!鉄じゃないんかい!」
俺は思わずフライパンに突っ込んでしまう。すると、だんだんフライパンが変化してくる。酸化銀だ。
「これが...酸化...だと?」
こうして、俺はカイロの体を手に入れた。そして、俺は一つ試したいことがあった。『憑依』で手に入れた体は使用時間に制限があると言う説だ。リューガの体も、ジャワラの体も5日間ほどで使用できなくなってしまったのだ。だから、この体を使って試したいと思う。
「そんじゃ...家にでも帰りますか!」
俺は家の外にでる。すると、なんだか外が騒がしい。みんなどこかに逃げていっている。
「なんだ?何があったんだ?」
俺はみんなが逃げている場所がある方向へ走っていく。そこでは、火事が起きていた。家が燃えているのだ。
「うへぇ...ヤケに燃えているなぁ...」
そして、俺は気づく。この火事の原因が、カイロの煙草のポイ捨てによって起きたことに。
「カイロの野郎!本当に何をしてるんだぁぁぁ!」
俺はつい叫んでしまう。他の野次馬に変な目で見られた。そして、俺の耳に、こんな声が入ってくる。
「まだ!まだ、4歳の息子が家の中にいるんです!」
まだ、誰か取り残されている。だと?これは一大事だ。助けに行かなくては。
「クソ...行くしかないか...」
俺は燃えている家の中に入る。
「ちょっと!勝手に入らないでください!」
消防士の方が止めに入ったが、俺が入った瞬間に、玄関に瓦礫が落ちてきて、塞がれた。
「どこだ...どこにいるんだ?」
俺は耳をすます。外で誰かが叫んでいる声。炎が燃える音。そして、微かに聞こえる少年の泣き声。
「上か!」
俺は階段を登る。
「うえええええん!!!ママァァァ!!!パパァァァ!!!」
少年の泣き声がはっきりと聞こえる。一番奥の部屋に少年はいた。
「助けに来たよ!少年!」




