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第34話 手と足

 

 鉄の塊は先にギュウシャのところに届いていた。警察の方が届けてくれたのだった。

「腕の次は腹だな!」

「あぁ!そうだな!」

「腹...ですか?」

「そうだ!手の次に腹、腹の次に脚、脚の次に顔だ!」

「顔までやるんですか?」

「あぁ!こんな風にな!」

 ギュウシャは頭を固くする。押入れにあった、トンカチで頭を叩く。


 ”カンカンッ”


 鈍い音はせずに、硬いものを叩くような高い音が出る。

「凄いです!」

「そうだろう!そうだろう!お前らにもこれができるようになって貰うぞ!」

「「はい!」」

「それじゃ、基礎練習をしに行ってこい!クラティーもリカも昨日と同じ回数分やれよ!」

「「はい!!」」

 2人はグラウンドに出る。そして、走り始めた。リカは5km走るのに、昨日よりもペースが上がっている。

「そんなにペースを上げて大丈夫なのか?」

「はい!なんか、今日は足が軽いんです!」

 クラティーはリカの足を見る。リカの足は『硬化』していた。

「なっ...リカ!足!」

「なっ...なんですか?虫でも付いてますか?」

「違う!『硬化』できてるぞ!」

「ほ...本当ですか?」

「あぁ!基礎練習が終わったら師匠にでも見てもらおう!」

「はい!わかりました!」

「クソッ!俺の修行よりも早い...早すぎるよ...」

 そんなことをクラティーはほざいていると、リカはクラティーよりも先に行ってしまった。


 今日は、ショウガは走っていない。昨日言っていた、「免許皆伝」の試験でもしているのだろうか。

 そんなこんなを考えている内に、3周目に入る。まだ息も切れてないし、汗もかいていない。それどころか、走る前よりも体が軽くなったような気がする。クラティーも言っていたが、足も『硬化』ができているらしい。『硬化』と聞けば、体が重くなりそうなイメージだが、それは違う。体の重さは変わらないのだ。筋肉を硬直させているだけで、体重を増やしているわけではないのだ。筋肉の『硬化』と『硬化』の解除を繰り返せば、速く体を動かすことができる。その高度な技も昨日の内にリカは習得していた。後、修行が必要なのは、腹と顔だけである。腹の筋肉の鍛え方は検討が付くが、顔の筋肉の鍛え方は検討も付かない。まさか、顔でベンチプレスでもするわけないだろう。首の骨が折れてしまう。そんなことを考えているとリカはいつの間にか5周走り終えていた。


 ***


「はぁ...はぁ...速すぎだって...」

「そうですか?私は別にスピードを出してる気はなかったんですけど...」

「速いよ...俺が4周目入る時には走り終えてたじゃん...」

 リカは気づいていなかったが、どこかでクラティーを抜かしていたらしい。頭の中に集中しすぎて周りのことなど、見えていなかった。

「それじゃ、戻りましょっか!」

「あぁ...そうしよう...」

 2人は部屋に戻る。そして、腹筋・腕立て伏せ・スクワット・ブランクを行う。基礎練習を行っている間も、リカは全く息を切らさなかった。そして、ギュウシャはまた入ってくる。

「基礎練習は終わったか?」

「はい!」

「あの...ギュウシャ先生!私の足を見てください!」

「足?白くて細い足が、どうかしたのか?」

「違います!『硬化』できるようになったんです!」

「そうなのか?じゃあ、ちょっと確認してみよう!」

 ギュウシャは何かを準備しに、部屋の外に出ていく。5分ほどすると、何か板のようなものを持って帰ってきた。

「この板を片足で踏んで、二つに割りなさい!」

「はい!わかりました!」

 リカは素足になる。そして、板の上に右足を乗せる。


 ”バキッ”


 板は割れた。足を乗せたところから綺麗に割れた。

「とりあえず...右足はクリアだな!」

 ギュウシャはもう1枚板を取り出す。リカは左足を板の上に乗せる。


 ”バキッ”


 板はまた綺麗に割れた。すなわち、足も合格だ。

「すげぇな!リカ!」

 クラティーはリカの足の『硬化』の習得を素直に褒める。自分が出来ていないのに相手を褒めれるということは人間性がいい証拠だ。兄弟子なら、なおさらだ。

「はい!ありがとうございます!」

「なぁ!俺に足の『硬化』の仕方を詳しく教えてくれよ!俺も腹の『硬化』の仕方を教えるからよ!」

「いいですよ!」

 2人は和気あいあいと会話をする。ギュウシャはそれを笑いながら見ていた。


 ***


 リューガは修行場にいる。だが、そこにはエイジンはいなかった。

「試験まで残り6日か...」

 俺は庭に出て、岩を破壊する練習をする。15cmの岩も破壊できないのに、50cmの岩なんて破壊できるはずがない。俺は練習を始める。だが、割れない。ヒビが入るので精一杯だった。

「なんでだ...何が足りないんだろう...」

 案内人は午後6時に迎えに来るように指示してある。途中で帰りたくなったときは、電話をすればすぐに駆けつけてくれるようにはしてもらった。だが、駆けつけてもらうことはないと思うが。

 俺はまだ『破壊』を使うことができない。ショウガやリカよりも遅れているのだ。


 俺も頑張らなければ。

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