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第268話 復讐戦線 ─邂逅─

 

 最終決戦が飛龍閣で行われているのと同刻。


 シンドークは王城の4階をほっつき歩いていた。

 シンドーク自身、飛龍閣に行ってみたいとわなわなしていたのだが、自らがブルムンドと交わした口約束がそれを制止している。


 今現在、シンドークは仲間を探しているのだ。2階に行けば、マユミ・カゲユキ・ホリーネスがいるのだがシンドークは4階から下がろうとはしなかった。


 飛龍閣から敵が逃げてきた時の、防衛線。自分はそうだと確信していたのだ。

 最も、卑怯なラスボスは自らが最も得意とする逃亡を実行する前に能力を完封されて死んだのだが。


「ふん、誰もいないじゃないか。皆、飛龍閣で戦っているのか?」


 シンドークは、目に入ったドアを片っ端から蹴り破っている。

 ドアの後ろに敵がいる場合、ドアノブを持っていると不利になることをわかっているのだ。


 ならば、いっそのこと蹴り破ってしまえばいい。そんな、精神なのだ。

 シンドークは創者なので、怪我を負っても回復するのだが、今武器保管庫内で野垂れ死にかけているブルムンドはまた別だ。急ぐ必要がある。


「このシンドークは我慢していると言うのに...あの老が───ブル爺が怪我をするから...」


 これも自らが行った誓約。ブルムンドのことを、「老害」とは呼ばず「ブル爺」と呼ぶことにするという誓約。

 シンドークは信念が強い。故に、自らが決めたことを破るような愚行をしない。


「お、いるではないか!」

 シンドークが幾重ものドアを蹴り破っていた時。シンドークの目には倒れている一人の少年が目に入る。


 ───ユウヤだ。


「おい、ユウヤ!何故、こんなところで惰眠を謳歌しているんだ!」

 シンドークはユウヤの顔をペチペチ叩く。顔面を踏み潰そうとしたが、ユウヤの姿を見て、やめた。


 ユウヤの体もボロボロなのだ。

 肋骨と左手の薬指は折れており、体には無数の切り傷が。そして、足の腱は切れかかっている。


「死んではいない。この程度の傷で死んでもらっては困るしな」

「んん...」

 ユウヤの喉から聞こえてくるのは、うめき声。


「お、目が覚めたか?」

 シンドークから行われる往復ビンタ。ユウヤの顔にニキビでもあったら潰れて大変だった。でも、幸いにもこの時ユウヤの顔にニキビはなかった。


「あれ...シンドーク?」

「このシンドークを間近に見て目覚められることを感謝するがいい」

「え、あぁ...ありがとう」


 そして、ユウヤは思い出す。自分がゲルタと戦っていることを。

「タンドンとクレハは!」


 ユウヤはその部屋の割れた窓から、中庭を眺める。

 ───も、誰もいない。


 タンドンも、クレハも、ゲルタも。敵も味方もいないのだ。


「おいおい...どういうことだ?」

「もう、戦いが終わって次に行ったのではないか?」


「そうか...そうだよな」

 ユウヤはクレハとタンドンが無事にゲルタに勝利したことを願った。


 ───ユウヤが現実を、クレハが死んだことを知るのは数時間後であった。


 消えたクレハの死体。そして、ゲルタの死体はどこに行ったのであろうか。

 問の答えは至って単純。ゲルタの最期の嵐───『凪嵐』に吹き飛ばされたのであった。


 貧都のどこかで、「女性の死体が降ってきた」という事件が起こったのだが、それはまた別の話。


「そんなことより、来い!ユウヤ!」

「どこに?」

「ブル爺が、死にかけているのだ!」

「ブル爺って...ブルムンドさん?」

「あぁ、そうだ!だから、来い!」

 ユウヤは、シンドークがブルムンドのことを「老害」と呼ばずに「ブル爺」と呼んだことに少々の疑問を持ったが、それを実際に問うとシンドークの逆鱗に触れると思い、自分の中で「春都の中でシンドークも成長したのだろう」と話を完結させた。


「ブルムンドさんはどこにいるんだ?」

「ブル爺は、階段近くの武器保管庫にいる!」

 そう言われても、ユウヤはわからなかった。嵐に飛ばされて、さっきの部屋にいたのだから。


「うん?あれは誰だ?」

 シンドークとユウヤの双眸に、一人の男が入ってくる。


「───ッ!」

 その双眸に入り込んできた人物を、ユウヤは知っている。


 ユウヤにとっては、早すぎた三度目の邂逅。


「アイツは...ゴールデン!」

「知っているのか?」

「あぁ...アイツは...アイツはァ!」


 ───ハラ(義父)さんを殺した男。


「俺の義父を...殺したんだ!」

「また、復讐戦か」

 シンドークは、呆れてかのように呟く。


「このシンドーク、復讐に付き合わされることが多い運命らしい」


 ユウヤは、冷静になるようにリューガとの会話を思い出す。

 {お前の仇は俺の仇だ。仲間の仇は、俺の仇だ。共に支え合って生きていこうぜ。副リーダー!}


 リューガは、俺にそう言った。

 だから、ここは耐えなくては───、


「お前らが侵入者か?」

「あぁ!このシンドーク、いかにも侵入者だ!」


「へぇ、そうかい!なら、ここで死んでもらう!と言っても、片方は、もう死にかけだけどなぁ!」

 王城4階で邂逅したユウヤ・シンドークとゴールデン。ユウヤの復讐戦は、問答無用で幕を開けてしまった。

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