第25話 『柔軟』と呼吸
第23話 柔軟と呼吸
第25話 『柔軟』と呼吸
第??話 『柔軟』と『呼吸』
キュラスシタばかりでこのままでは駄目だ。キュラスシタをできれば思い出したくない。他にいい方法はないだろうか。俺はエイジンの隣に移動する。
「エイジン先生は、何を思って『破壊』をしているんですか?」
「それは...もちろん...自然の感謝と...『破壊』の意思...だ...」
「その『破壊』の意思と言うものがわからないんです!」
「では...人間を最も...動かす...感情というものは...なんだと思うかい?」
「人間を最も動かす感情ですか?怒り...とかですか?」
「あぁ...それも一つの...正解だな...」
「1つ...ならもう何個か正解があるんですか?」
「あぁ...人間を動かす感情は憤怒と慈愛だ...」
「慈愛...ですか...」
「あぁ...慈愛だ...慈愛が大事なんだ...愛する人を...守るとき...愛する人に...頼られたとき...愛するが人...危機に晒されている...とき...人間は...強くなる...人を...愛している人を...助けようと...するんだ...」
「そうですね...」
「リューガ...お前に...愛する人は...いるか?」
「愛する人...」
この世界に来て恋人などできていない。だから、愛してるような人などはいないのだ。
「すまない...質問を変えよう...守りたい人は...いるか?」
今度の質問を聞いて、俺の頭の中には色々な人の顔が出てくる。ショウガやリカ・サメリやシャコリアの村の人々。彼らは仲間だ。仲間だから守りたい。
「はい!います!仲間がいます!」
「そうか...なら、その人たちが...危機に...陥れられている状況を...考えるんだ...」
「危機...か...」
俺はキュラスシタがその妄想に出てこないように意識した。ショウガやリカが「悪者」に囚われている。
「悪者」とは決してキュラスシタのことではない。強化版ヤンキーのような感じだ。「悪者」は今にでもショウガやリカのことを殺しそうだ。助けたい。
「今...助けたいと思った...だろう?」
「はい!なんで...わかったんですか?」
「それが...慈愛だ...それを思っていれば...『破壊』の意思となる...」
「そうでなんですか...」
俺はもう一度3cmほどの石の前に行く。そして、俺はその石に羽根をかざす。さっきと同じことを考える。
”バキッ”
割れた。石が割れた。キュラスシタのことを考えなくても石が割れたのだ。
「割れた!やった!これだ!」
「コツを...掴んだ...ようだな...」
「はい!」
「今日は...もう...暗いから...帰りなさい...明日、また...ここに来なさい...」
「はい!ありがとうございました!」
エイジンは案内人を呼んでくれる。俺は案内人に運ばれる。
***
ショウガは深呼吸をしていた。何度もだ。吸って吐いてを繰り返す。これが修行だ。かれこれもう30分はしているだろう。
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
”スーハー”
呼吸音だけが部屋に聞こえる。
「もうこんな時間か...ショウガ!今日はそろそろ終わりだ!」
「え、もう終わりですか?走って柔軟して呼吸しただけですよ?」
「あぁ!もう一度さっきと同じ柔軟をしてみろ!」
ショウガは先程と同じ柔軟を行う。さっきよりも腕が奥まで行く。体が柔らかくなっていたのだ。
「なっ...なんで?」
「だから言っただろ?呼吸は大事だって!」
呼吸には2つの種類がある。外呼吸と内呼吸だ。外呼吸はいつも人間が行っている酸素を吸って肺に送り込み、二酸化炭素を体外に吐き出すというものだ。深呼吸も外呼吸の中に入る。ショウガはこれを行っていた。
内呼吸は細胞が行う呼吸だ。血液中にある酸素を細胞が受け取ることを内呼吸と言う。内呼吸を行い細胞が酸素を受け取ることで人間は生きていくことができる。外呼吸をしなくても、内呼吸さえしていれば人間は生きていけるのだ。だから、首を絞めていても内呼吸がされてる間は生きてられる。では、細胞が直接内呼吸すれば効率的ではないか。確かにそうだ。だが、皮膚呼吸は普通の人間にはできない。それは何故か。それは生物だからだ。生物だから、欠点がなくてはならない。欠点が無いものは生物とは言えないのだ。だから人間は内呼吸ができない。だが、欠点を無くし所謂「最強」と呼ばれる人間に憧れる人間も出てくる。だから、人間は必死で皮膚呼吸の仕方を探し出した。そして、見つけた。少しだけしかできないが見つけたのだ。それは体を柔らかくして細胞の表面積を圧倒的に広くすることだった。細胞の表面積を広くすれば細胞が空気から酸素だけを選び取り内呼吸を行うことができる。だが、実に少量だ。ほんの少ししかできない。だから、やはり外呼吸は必要だった。そして、時は経ち内呼吸の過程である『柔軟』の方に目を向けた人間がいた。この内呼吸のやり方は骨まで柔らかくしてしまうのだ。そして、『柔軟』の能力が生まれる。骨を柔らかくする方法。それは────空気を多く体に取り入れることだった。結局は外呼吸が必要だったのだ。




