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第238話 エルフ

 

「クソッ!ユウヤが飛ばされた!」

「タンドン...行けそうか?」

「当たり前よ!僕達2人なら、最強だからな!」

「片方は致命傷じゃないか。俺に勝てるとでも思うな」

 ゲルタは球を回収して、また球の上に乗っている。


「さぁて、クレハ...行こうぜ!」

「あぁ...私達の力を見せてやろう」


 ***


 クレハとタンドンはエルフ族だ。


 エルフ族と言えば、長命。長耳。美男美女。と、いいとこ尽くしの種族である。

 それもそのはず、エルフ族は「自然に愛されて」生まれるのだ。

「自然に愛される」というのは、どういうことか。


 エルフ族が誕生する場合、人間とは大きく違っている。

 交尾が必要ないのだ。自然からの天命として、子供は生まれてくる。このことを、エルフ族の間では「加護」と呼んでいるので、ここからは人間で言う出産を、加護と呼ぶことにしよう。


 加護は、5年から10年の間に1度か2度行われる。長命種であるエルフ族にとって、それは短い周期である。エルフ族は、交尾しないので性別という概念は本来なかったのだが、人間───正確には、エルフ族以外の種族が、繁栄した世界ではその判別が行われており、その基準はやはり尿を排出する部分で決められている。

 交尾はしないので尿を排出する部分を性器とは呼ばず尿器と呼んでいるのだが、その尿器の形は人間と一緒だ。故に、性別の判断は困らない。ヒヨコの性別判断に比べればよっぽど楽だ。


 その加護で子供を授かるのだが、やはり生まれた頃は皆赤ん坊。育ててもらう者がいないと、死んでしまう。

 それが、餓死か凍死かは断定しないとして。

 そこで、「親」というものが必要になる。エルフ族の「親」は、希望すればなることができ、色々な理由で子供が産めないエルフ族以外の種族や、愛し合っているエルフ族。または、物好きな貴族が行っている。

 エルフ族に結婚などと言う概念はない。


 エルフ族の奴隷。などを、色々な作品で見たりするが、その理由は加護というものが理由としてあがっているのだ。親がいない故に、希望してしまえば利用し放題なのだから。


 ***


 エルフ族の話は終わりにして、タンドンとクレハの話をしよう。


 現在、タンドンは38歳で、クレハは36歳だ。人間の年齢に換算すれば、15から〜18だとされている。

 エルフの平均寿命は、大幅にブレているので、しっかり幼少期に育ててもらえれば千年も万年も生きる。

 実際、現在最高齢のエルフは9万8790歳とされている。

 まぁ、「一年」という単位など人間が勝手に創った概念なのだが。


「加護は5年から10年の間に1度か2度」と前述した。

 が、タンドンとクレハの年齢の差は2歳。何故か。

 答えは簡単。加護が密集していたのだ。周期なのだから、差は出る。


 本来、幼馴染みなどできないエルフ族に、幼馴染みができた。

 それ故に、タンドンとクレハはいつも同じように過ごしたし、同じところに行った。

 ずっと一緒だったのだ。


 が、違う道に進むのが生物の性。

 クレハは、殺人術を学び始めたのだ。


「クレハ...どうして殺人術なんて学ぶんだ?」

「もうすぐエルフ族のところに人間が攻めてくる。5年後か10年後かいつかはわからない。でも、次の王になったらきっと、大きな争いが起きる」

「そう...なのか?」

 クレハの読みは当たっていた。幼いながらも、わかっていたのだ。宰相の行動に。


 クレハはその時齢20。

 クレハは、体に色々な武器の使い方を叩き込んだ。剣に槍。斧に銃。マシンガンに仕込みトンファー。ダイナマイトにクラッカーヴォレイ。鞭やハンマー、ヌンチャク・大砲・棍棒・ブーメラン・メリケンサックに手裏剣。鉄扇やチェンソー。如意棒やレールガンに至るまで。


「なぁ...クレハ...戦争に行くのか?」

「いや、戦いの場はここになるだろう...」

 クレハ達がいるのは、エルフの居住地だった。9の世界の端に位置するこの場。


「私一人で...頑張らなければならない」

「なら、僕も一緒に戦うよ」

「タンドン?」

「だって、クレハは集中力が切れると甘えん坊になるだろ?甘える人がいなくて、どうする?」

「───ッ!甘えん坊に...ならないもん...」

「甘えて師匠を困らせてたのはどこのどいつだ...」

「う、うるさい!うるさい!」

「クレハが戦うなら、僕も戦うよ。僕達、友達だろ?」

「ありがと...」

 クレハは後ろから、タンドンに抱きつく。


「うひょっ、デカい」

「ちょっ!変態!」

 クレハは、すぐにタンドンから離れた。


 そんな、仲だったのだ。クレハとタンドンは。親密な。

 きっと、人間だったら結婚しているような。


 ***


「なぁ...クレハ。どうすれば倒せそうか?」

「嵐にも負けぬ推進力...かな?根本的に嵐を止めるという手も」

「嵐を止めるには、ゲルタを殺さないとならない」

「なら、嵐にも負けぬ推進力...か」


「いや...違う。僕がいる。なら、できるじゃないか」


 魔法を使わずに水の弾を作る方法を、タンドンは持っている。

『ダイラタンシー』を使った水を、投げるのだ。そうすれば、スピードが出るので、当たれば痛い水の弾ができる。



 それは、嵐にも通用する。『ダイラタンシー』を嵐に使えばどうなるか。当たれば、体をも貫通する大量の水滴が、体に直撃するのだ。


「今度は僕の番だ...『ダイラタンシー』!」


 ”カカカカカカカカカ”


『ダイラタンシー』を使った嵐と『ダイラタンシー』でスピードのある物を通さない空気の壁がぶつかる音がする。両者、どちらも破壊不可能だ。


「ぐぐ...あぁぁぁぁぁぁ!」

 ゲルタの叫び声がする。ゲルタの体からは、ところどころ貫通し、穴が空いていた。

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