第228話 『幾何学のアルカナ』
「生かせるわけないだろう!『幾何学のアルカ───」
”キィィン”
「ぶひっ!」
ライヤ・ブラウムはクレハに峰打ちされる。
「急げ、リューガ!」
「あぁ、わかった!」
「クソッ!逃してしまった!兄様に怒られてしまう!」
「安心しろ、私が殺す...だから、咎められることもない」
「ひっ!『幾何学のアルカナ』!」
「な───」
その瞬間、9の世界からクレハとライヤ・ブラウムは消える。
***
「ここは...」
クレハは、ジャングルにいた。遠くには、9の世界にあった王城とは違う、和風な城が見えた。
例えるなら、深志城だろうか。
「ライヤはどこに...」
『世界とは秘密でできている!世界とはアルカナなんだ!この世界こそがオーパーツ!眠りしものを目覚めさせよ!』
クレハとライヤ・ブラウムは、ブラウムの能力である、『幾何学のアルカナ』の中に移動していた。
「『幾何学のアルカナ』...だと?」
幾何学のアルカナ・・・自分の創造した世界(通称:アルカナ)を創り、その世界に生物を閉じ込めることが出来る。アルカナの世界の形は自由に変えることができ、一度入ったら能力主が許可するか、能力主を殺さない限り現実世界に戻ることができない。能力主はアルカナを維持するために、最低でも現実世界での7日間をアルカナで過ごさなければならない。アルカナ内の時間は、現実時間とは違っていて、アルカナの方が時間の流れが速い。
「あ...」
クレハは、一枚の紙を拾う。ジャングルの中には、無いような紙。そう、誰かが書き残していったものだ。
【ここから抜け出すには、ライヤ・ブラウムを殺すしか無い】
「抜け出す為にも、アイツを殺す必要があるのか...」
クレハはため息をつく。そして、首を回す。クレハの紅色の髪は、ネビロスとの戦いで斬りさってしまったので、うなじも丸見えだ。
「さて、行くか...」
クレハは剣の先で王城をさす。
「まずは、ジャングルの脱出...かな?」
クレハは、ジャングルを走る。周りには、見たこともないほど鮮やかな花や虫がたくさんいる。
「ここは、ライヤ・ブラウムの創造した世界だったな...なら、現実には存在しないのかもしれないな」
”ガオッ”
「───ッ!」
飛びついてきたのは、蛇の尻尾を持つライオンのような怪物。
「ジャングルにライオンだと?」
否、キマイラ。
”カッ”
爪と、剣がぶつかる。そして、クレハはそこから離れる。
「キマイラなんて、相手にならないな」
クレハはジャンプして、宙を舞う。そして、キマイラの背中に剣を刺す。
「ぐおぁぁぁ!」
キマイラの断末魔が聞こえ、その場にぐったりと倒れる。背中から、心臓を一突きしたのだ。
「ふん、所詮...この程度だ」
クレハは、先を急ぐ。ジャングルの間に、大きな川があった。
「川...か、別の道を行くか?否」
クレハは、飛んだ。川の上を一飛びだ。だが、川幅は100m以上はありそうで、届かない。
"グォァァ"
川の中から出てきたのは、巨大なワニ。口を開けて、クレハを丸呑みにしようとしている。
「計画通り」
クレハは、ワニの口を足場にして、また飛んだ。ワニは何匹も出てくるが、それを足場にしてピョンピョン移動している。そして、ついに対岸に辿り着いた。
因幡の白兎を彷彿とさせる動き。だが、原作とはそこで分岐して、クレハは体の皮を剥がれたりはされない。
「よし...成功だな...」
クレハは移動を続ける。急いで、アルカナ内の王城へと向かった。
その道中、村があった。
「村か...」
クレハは当たりを見回す。辺りは少し暗くなっていた。
「どのくらい時間が経ったかわからないな...寝てる暇もないが...」
クレハは村に入る。
「飯くらい食べても文句はないだろう...いや、金もないか...」
村を通って歩く。
「おい、姉ちゃん!今から俺らと遊ぼうぜぇ?」
「その...あの...」
そんな、声が聞こえた。
「ここは想像の世界...助ける義理は...」
「や...やめて...」
その声が、聞こえて瞬間クレハは動いた。
声がする方に。
「いいだろぉ?お姉ちゃん?俺らと遊んでくれたってぇ?」
「楽しいことしようぜぇ?」
ナンパ師は、3人いた。女性は、壁に背中を付けている。逃げ場はない。
「やめてやれ...」
「あ?誰だ?って、見ない顔だな...」
「でも、可愛いぜ!」
「あぁ...捕まえて遊んでやるよ!」
「お前らごときじゃ遊びにもならん」
クレハは剣を鞘に納める。
「あ?」
「どういうことだよ?」
”ジョキィィン”
”バタッ”
「な...」
ナンパ師3人は、真っ二つになり血を出して倒れる。クレハの手刀だ。
「あの...」
「逃げるぞ」
「えぇ?あ、はい!」
クレハはその女性を抱えて逃げる。
「あ...あの...助けてくれてありがとうございます」
「別に、女として当然のことをしただけだ」
「お礼としてはなんですか...何か奢らせてください...」
「そうか...腹が減っていた」
クレハは村に戻り、屋台で肉の串を買った。
「美味いな...」
「なら、よかったです」
「私は、王城に向かう。あなたも、気をつけてくれ」
「あの、王城に行くなら...4人の者を気をつけた方がいいです」
「誰だ?」
「ラー・アメン・ホルス・アテンの4人です。きっと、王城に近付くというのならあなたに立ち塞がります」
「そうか...情報提供ありがとう」




