第216話 元王族騎士団団長
「勝負だ。本気で来い」
「言われなくても」
ロークは1本しかない剣を抜く。ブルムンドは4本の刀を手に取った。
「この刀も、フェニーから5本貰ったんですよ」
「そうか...フェニー様々だな」
「えぇ」
『回転式武装・4本の陣・小風車』
『道』
”キィィン”
響くのは、刃と刃がぶつかり合う音。ブルムンドとローク以外の3人───ショウガ達はその剣圧に負けて壁にぶつかる。
「刀の動きも見れないんじゃまずいなぁ...」
「ハッ!このシンドークですら見切れなかった!相手にして不足なし!」
「なかなかだな。前団長」
「はは...団長は強いですな」
”キンッ”
ブルムンドとロークは距離を取る。ロークは自分がいた場所に戻っただけだ。
「行くぞ」
「えぇ...」
ブルムンドは追加で4本刀を持った。8本。最大の8本だ。
『回転式武装・8本の陣・凶乱舞』
『盆』
「───ッ!」
”キィィン”
ブルムンドは両手に3本ずつ、足で2本持って回転した。それが、『凶乱舞』だ。
だが、ロークの『盆』は、ブルムンドに下から攻撃した。
「痛ぅ...」
「まだ、1本か」
ブルムンドの右脚の親指が少し斬られる。断面から赤い色の液体が流れる。ブルムンドは足全体の筋肉を足で持つ刀に集中していたので、ぎりぎり刀は落とせなかった。
「親指が斬られましたか...」
「どうする?」
「なら、こうです」
ブルムンドは左手にあった刀を1本咥える。そして、また回転した。
『回転式武装・8本の陣・大乱舞』
「何度やっても同じことを。見切ったのだ」
『盆』
”ザッ”
「───ッ!」
ブルムンドは口に咥えた一本の刀を、手に持つ。
「見切ったのはこちらも同じですよ」
ブルムンドは斬っていた。ロークの顎を。顎はすぐに再生してしまったが、攻撃は効くようだ。亀の甲羅のように硬い肉体を持っている訳ではない。柔いのだ。油断を突いて急所に攻撃すれば、勝てるのだ。
「さて、顎は急所じゃないんですね」
「不覚。もう斬られまい」
『盆』は相手の足元を狙う攻撃。お盆のように薄く、足元を狙うので『盆』という名前を付けた。
ブルムンドは左手にある1本を鞘に納めた。剣は7本。
「さて、行きましょう...」
「今度は、斬る」
『回転式武装・7本の陣・十八番』
『一』
”キンッ”
止められた。十八番が。ブルムンドが行う2番目に強い技。1番は、『抜剣神』であり一瞬のラグが生まれ使えない。だから、2番目だが実質は1番の十八番。それが、止められた。
「いい太刀筋。見切れなかった」
「そうですか...」
ロークの『一』。それは、自分の胸の高さで地面と平行に刀を動かす技だ。強くないように感じるが、相手の攻撃を受け止めるには、もってこいの技だ。そこから、別の技に転じやすいのだから。『一』の漢字ように真っ直ぐにするという意味と、一番初めの『一』という意味の2つがある。
最初につかった『道』は『一』と似ているが、こちらは突き技。使用すると手を伸ばしてそこで技の終着を迎えてしまう。例外で、相手の攻撃を妨げるための『回』は使えるのだが、攻撃用ではない。
ちなみに、『回』は剣をその場で回すだけ、それだけの技だ。
「さて、どうするか」
「次で決める」
『回転式武装・7本の陣・十八番』
『力』
「───ッ!」
「クッ!」
ブルムンドは、ロークに『力』いっぱいに振りかざされた剣を避ける。だが、避けたが故に『十八番』も命中はしない。だが───
『回転式武装・7本の陣・十八番』
「───ッ!」
『叉』
”キィィン”
”ボトッ”
「ぃよし」
「斬られたか」
落ちた。ロークの耳が、落ちた。ブルムンドの、休む間も与えない『十八番』の2連撃。
『叉』でボールを蹴った時のような回転を持たせた剣でギリギリ顔面の攻撃を避けた。だけど、右耳は落ちた。
「でも、『十八番』も見切った」
「そうですか...『十八番』も...」
ブルムンドは少し悲しそうな顔をする。そして、足にあった刀を1本しまい、もう1本を手に持ち直す。
合計で6本。少しずつ刀の量は減っていく。だけど、強さが減っていっている訳ではない。それだけは、言っておこう。
「では...」
「えぇ...」
『回転式武装・6本の陣・大風車』
『森』
「───ッ!」
ブルムンドの両手に3本ずつ持った刀を回転させる『大風車』。それを、いとも簡単に1本の剣から生み出される12本の斬撃によって止められた。
『森』は、横、縦、左右交互の袈裟斬りを3回繰り返す技だ。書き方が「森」という字に似ていた為に、『森』と名付けられた。
「見切った。その攻撃も」
「ふふ...それはどうですかね」
『回転式武装・6本の陣・大風車』
「無駄だ、もう1撃で止めれる」
『道』
『回転式武装・6本の陣・大回転』
「───ッ!」
ブルムンドは『大風車』を止められる寸前。そう、寸前だ。ブルムンドの右手の刀3本は、ロークの胸に刺さった。そう、『大風車』はその為の囮。『大風車』は見切られやすい技なのだ。そのために、その対処として『大回転』がある。『大回転』は、右手の刀を相手に突き刺し、左手の刀で斬る技だ。
『道』
「───ッ!」
「残念だな。もう、技は撃てない」
ブルムンドの右腕が再度、斬られる。フェニーから貰った右腕がバッサリと斬られる。そう、ロークは創者。急所を攻撃されない限りは死なないのだ。ブルムンドの『回転式武装』は一撃必殺に近い。
だから、見切られる場合を考えられるときのほうが例外なのだ。
「残念だな、じいさん。退場だ」
『月』
「───ッ!」
”ドォォン”
ブルムンドは吹き飛ばされる。左手にあった3本の剣でギリギリガードしたから外傷はなかった。だけど、吹き飛ばされた。立つと、眩む。一時、戦闘離脱を余儀なくされる。
「老害!休んどけ!このシンドークとショウガが相手をしよう!」
「えぇ?我も?」
「当たり前だ!おい、新郎!老害の世話を!アイツは、以外にも戦力だからな」
「はいはい、わかったよ」
ここで始まる第2ラウンド。『柔軟』と『呼吸』vs現王族騎士団団長の戦いが始まろうとしていた。




