第198話 10層
春都 ショウガ・シンドーク・ブルムンド・リンザル
夏都 リューガ・カゲユキ・ホリーネス・クレハ
秋都 リカ・ユウヤ・カミール・タンドン
冬都 トモキ・マユミ・ノノーム・モルドフ
***
───
───
──────────
────────
揺れる。
ゆらゆらと。はらはらと。くらくらと。
心地よい揺れが終わる。
そこには、光が。
***
「んん...」
俺は目覚める。
「おい!起きろ!おい!」
そこには、ホリーネスを起こす、カゲユキの姿があった。
「んん...どぉしぃたぁのぉ?」
ホリーネスも目覚める。クレハは、服を叩いていて、準備は万端だ。
「あれ...なんで寝て?」
「あぁ...能力だ。さっきの男の能力」
クレハは、そう説明してくれる。あまり、頭は働かないが、相手に眠らされたことだけは、わかる。
「どのくらい寝てた?」
「そうだな...体内時計だと30分程だろうか...」
クレハはそんなことを言いながら、首を回す。そして、伸びをした。
「10層に行く。いいな?」
「あぁ...それでいい」
「そぉうだぇねぇ?」
「あぁ!そうだな!」
俺達は、10層に向かう。
そこには───
「よぉよぉ!待ってたぜ!ひよこ野郎共!いいお目覚めか?あぁ?」
10層にいたのは、黒髪の、筋骨隆々とした男───全裸の男だ。
正確には、全裸ではない。腕には、肘までを金色の手袋で覆い、脚には、膝までを金色の靴下で覆っている。
「───ッ!」
クレハが短い悲鳴をあげる。そして、その全裸の男を睨む。
「なんだ...その格好は!」
「ありのままの姿だ!文句あっか?あぁ?」
その全裸の男は、まるで全裸が当たり前であるかのように、話を始める。
「何故、服を着ない!はしたないだろう!」
「服なんて、弱者が着るもんだ!弱者は体が傷つくだけで、すぐ死ぬからな!貧弱!だけど、誇り高き我ら魔神は違うッ!そんな陳腐な剣じゃ、傷つかないし、寒暖差にも対応できる!だから、服なんてもんは必要ねぇ!服を着ないことこそが、強者という証明だァ!」
そんなことを言いながら、その全裸の男は高笑いしている。
「なぁ...上階への階段が無いぞ?」
「え?」
俺は、カゲユキにそう囁かれる。言われてみれば、11層に上がる階段はない。
「ほぉんとぉうーだぁねぇ?」
「11層までじゃなかったのか?」
「あぁ?階段がねぇ?当たり前だろ!11層には、1層からしか行けねぇんだよ!バァカ!」
「はぁ?」
俺は思わず困惑する。
「どういうことだよ?」
「弱者は頭までも弱者か!1層に仕掛けがあっただろ?ボタンを押すやつ!」
中には、少女が入っていた。ボタンを押す仕掛けがあったことを思い出した。
「たぁしぃかぁに、そぉうだぁねぇ?」
「お前らは、きっと机の上の方のボタンしか押してねぇはずだ!」
「そうだ...」
「お前らは、机の下に隠されたボタンを気付かずに押さなかった!だから、お前らは11層へと通じるボタンに気付かなかったって訳だぁ!」
また、その魔神を名乗る全裸の男は、高笑いをする。机の下にボタンなんてあったのか?気付かなかった。
「待て...それじゃあ...」
「あぁ!そうだ!机の下にあったボタンも押せれば、この10層まで登らなくても直接11層に行けたって訳だ!おもしれぇよなぁ?これまでの努力、無駄なんだぜぇ?おもしれぇとはおもわねぇか?あぁ?」
その魔神を名乗る全裸の男はニヤニヤと笑っている。
「皆!急いで降りるぞ!」
「あぁ!」
「そーうぅだぁねぇ?」
その時だった。
”ピクリッ”
本能的に、不快感を感じた。俺は、魔神を名乗る全裸の男の方を振り返る。そこには───
「な...なんだよ...その手は...」
這っていた。
大きな黒い手が、その魔神の体の上を這っていた。どこから、出てきているのかは、わからない。
「逃げたければ、逃げな。逃げれば、この手で殺すぜ?」
「その手は何なんだ...」
「『死栄の手』だぜぇ?教えてやる、これに触れられれば、苦しむことになる!残念だったな!逃げれば、全員をこれで触れてやる!」
魔神はそう言いながら、笑っている。
「どうする?逃げれば、死だ。生きて帰す訳ねぇ!俺に抵抗するのも、死だ。俺と戦って勝てる訳ねぇ!さて、どっちで死にたい?逃げて死ぬか?戦って死ぬか?選べよ!あぁ?」
「こいつらは...殺させねぇよ」
俺は、そう呟く。
「あぁ?なんだ?もう一回言ってみろこに鶏野郎が!」
「俺の仲間は、殺させねぇよ!俺は死んでもこの3人は守り抜くぜ!死んでもな!」
高々に、そう宣言する。殺させる訳がない。死んでも戻れるのは、俺だけだ。
「へぇ...そうかい、そうかい。死んでも守り抜くのかい...じゃあ、死ね」
「───ッ!」
唐突だ。そう、唐突だった。俺の腹が、殴られたかのように痛くなる。ヒヨコの姿なので、詳しく説明しずらいが、人間で言う腹だ。腹のところが猛烈に痛い。呼吸が出来ない。
「ま、この位じゃ死なねぇことくらいわかってる。この能力は殺す為にある訳でもねぇからなぁ?あぁ?」
「お前は...何者だ!」
「教えてほしいか?なら、教えてやるぜ?聞いて驚け、見て驚け!誇り高き俺の名前はネビロス!魔神のネビロスだ!」
ネビロス───魔神はそう、声高らかに名乗った。
ネビロスの能力も、3つあります。




