第197話 カミール
今回は、長いです。
いつもと、同じ文字数を書いて、次回に持ち越そうか迷ったけど一気にお楽しみください。
「───ッ!」
カミールに3体の妖精が同時に襲いかかってくる。
「カミール、逃げて!」
ユウヤはそう叫ぶ。だが、カミールは引かない。
「おらっ!」
カミールは大きく剣を振るった。妖精は対応できず、少しよろける。
「今だ!」
ユウヤが、そのまま妖精を斬り倒す。
「ありがとな、ユウヤ」
「あぁ...でも、危険なのは見ていて怖いから、やめてくれよ?」
「ごめんな...」
そんな、会話を行われつつ、ユウヤとカミールは剣を握る。
***
「えい!」
「とりゃ!」
「くらえ!」
暑苦しい戦場とは、打って変わってリカの可愛い声が響く。その声を発するためにえげつない行為がいともたやすく行われているのだが。
リカは、妖精の持つ刀などお構いなしに、妖精を鷲掴みにして、頭を破裂させたり、首をもいだり、妖精の頭と頭をぶつけて破滅させたりしている。本人は至って、平常であり無傷である。
順風満帆。そんな4文字が、リカ・タンドンチームには相応しいだろうか。
リカ・タンドンチーム。訳してリンチ。
こっちのチームの心配をする必要はない。問題は、ユウヤ・カミールチームだ。
***
「ていっ!」
「おらぁ!」
「よいしょぉ!」
こちらもこちらで、掛け声があがっている。だが、声はリカのように可愛くもないし、至って真剣だ。
最も、リカのことを真剣じゃないと貶めているわけではないのだが。
「随分数も減ってきたな...」
ユウヤは少しよそ見をする。リカとタンドンは、もう妖精を残り数体のところまで減らしているのだ。
それに比べてユウヤとカミールのところには、依然として減っていない。20はいるだろうか。
「焦る必要はない...きっと、リカ達もこっちの妖精の討伐に手伝ってくれるよ」
「あぁ...そうだな...」
『森の妖精』
「───ッ!」
新たに、妖精が生成される。ここでの、増援はまずい。ただでさえ、減っていないのに増やされてしまえばキャパシティオーバーだ。
「うわぁ!増えちゃいましたあ!」
リカの声がユウヤ達の耳に入る。
「リカ!ある程度妖精を減らしたら、シルフ本体に攻撃してくれ!」
「はい!わかりました!」
ユウヤの命令を、リカは承諾する。きっと、リカならやってくれるだろう。タンドンは...まぁ、壁。
「で、僕らはこの眼の前の妖精を殺さないと...足手まといになっちゃいますよ?」
カミールにそんなことを言われる。
「あぁ...わかってるよ。一掃する方法は...ないぜぇ!」
地道に一歩一歩。それが、ユウヤの選んだ道であった。それは、ユウヤがこれまで歩んできた人生から習ったものであった。
「ハラさん...力を貸してください!」
『原流1本刀 其の三』
ユウヤはその場でジャンプし、真一文字に斬り裂く。妖精は6体ほど、抵抗もせずに死んでいく。
「虫けらのように弱いけど...熟練の剣士のように強い...か」
妖精は一太刀でも食らわせれば、ほぼ無能に等しい。だが、その手に持つ刀が実に厄介だ。その手に持つ、刃渡り5cm程しかない刀が、実に厄介だ。
妖精は、小さく宙に浮いている。大きさ的には、リューガと同じ───15~20cmと言ったところだろう。
だが、その手に持たれる、妖精の手にはベストフィットするような刀が、強いのだ。
特殊能力など、全く持たない兵───妖精の中には、唯剣技だけを極めたような───ブルムンドさん並の強さを持つ者もいるだろう。
「よし!全員倒しました!」
そんな声が、する。考えるまでもない。リカの声だ。ユウヤがリカの方をちら見すると、リカはシルフの方へ走っていった。
「一人...貰うよ...」
「───ッ!」
その時だった。集っていた、妖精が。
ユウヤの目の前には、刀を持った妖精が大量に集っていた。よそ見がバレていたのだ。その一瞬の隙は、見逃されなかった。狙われていたのだ。忘れていたのだ、ここが敵の塒だということを。
「う、うわぁぁぁ!」
ユウヤは剣を抜き、適当に振るう。焦り故の行動。だが、それが間違っていた。その、何も考えないような剣は妖精を誰一人殺生することもなく、受け流され、そして、床に落としてしまった。
「あ...」
ユウヤは直感する。ここで、死ぬんだと。本能で、気付く。ここで、俺は死ぬのだ、と。
妖精との距離、50cm。それが俺の余命なのだと。壁はない。タンドンは向こうなので、ダイラタンシーで壁は作れない。カミールだって、この量の妖精は捌ききれない。剣は受け流され床に転げ落ちている。
「うおおお!」
「私は死んでも...一人は殺す...」
ユウヤは、地面に伏せようとしたとき、もう一度リカの方を見た。リカはシルフの方に向かっている。シルフは、こちらを見ている。否、正確には見られている感触がした、だ。精霊の目が、どこにあるかはユウヤは知らない。だけど、こちらを見ているような気がした。
-ユウヤ視点-
”ザッ”
刀が振られる音がする。俺の真上───妖精が俺に向かって刀を振っているのだ。狙いは、見なくても音でわかる。俺の首に一直線だ。
抵抗もできず、そのまま妖精は剣で、俺の首を斬り落と───
「空間削除ッ!」
されなかった。
「なっ...」
俺は、妖精の方を見る。そこには───
「カミール!」
妖精の攻撃を、自分を犠牲にして俺を守っていたカミールがいた。
俺は、動けない。4の世界で幽霊に心臓を掴まれた後のような、死の恐怖から免れた時に訪れる、一瞬の安堵が、俺を動かせない。
「ユウヤ...ありがと...」
”ブスッ”
”ザッ”
”ザシュ”
カミールの右腕が、妖精に切り落とされる。カミールの腹から、刀が飛び出るのを間近で見る。カミールが、袈裟斬りされるのを、見る。
「とりゃぁ!」
シリアスな状況とは、真反対。そんなリカの声が響き、そして妖精達は消えていく。
シルフは死んだのだ。塵となって消えていったのだ。
カミールが、倒れてくる。俺は、それを支えた。
「カミール!おい、カミール!」
俺の痛烈な叫びを聞き、リカとタンドンが駆けつけてくる。
「なぁ...カミールさん?!」
「はは...ごめん...致命傷だ...」
カミールは、そんなことを言いながら笑う。カミールは、右腕が欠損し、腹は貫かれ、袈裟斬りされて、大きな傷跡がある。そこから、絶え間なく血は流れ出る。
「カミール...どうして...どうして!」
俺は叫ぶように聞いた。これは、カミールへの一種の糾弾。俺が油断していたのに、カミールは何故、俺を見捨てなかったのかという問いかけだ。
「仲間...だからかな?」
カミールは、そう呟く。そう言うと、一気にカミールの顔が青褪める。
「カミールさん?カミールさん...カミールさん!」
リカが叫ぶ。そして、わんわん泣き出した。
カミールは、死んだのだ。俺の一瞬の油断で。
呆気なかった。一瞬だった。なのに俺は、俺自身を悔やまなかった。責めなかった。生きててよかったという、安堵が胸をよぎってしまったのだ。
「ごめん...カミール!ごめん!」
俺は泣けずに、悲痛な声が秋都に響く。謝ることしか、できなかった。ただ、謝ることしかできなかった。
ユウヤは、クズじゃない。それが、正しい反応。
生き返るような展開は、ないです。それこそNARUTOになってしまう。




