第195話 アチル=フィークル
アチルとノノームは睨み合う。
「行くぞ」
「あぁ!どんと来い!どんと来い!どんと来い!どんと来い!どんと来い!」
アチルから出ていたタコの足が伸びる。
大音量のモナステリー・・・これまで食べたものに体を変化させることが可能。
ノノームは、伸びてきたタコ足に触れる。
「───ッ!」
アチルはタコの足から、振動する。だが、倒れない。
「根か...」
モルドフがそう呟く。確かに、アチルの後ろからは太い根が出ていて、地面に突き刺さっていた。
アチルは『振動』の最中、爪を出す。そして、ノノームに近付く。
「───ッ!」
ノノームが、タコの足を離そうとするも、吸盤がノノームについて離れない。
「これで終わりだ。死ね」
アチルがノノームに向かって、爪を付き立てる。───が、
爪が動かない。アチルの体が、動かない。
「親父?親父?親父?親父?親父?親父?」
「くっ!」
アチルの目からも、涙が溢れる。
「息子を...殺せる訳がねぇ!」
ノノームも声が出ない。それは、トモキ達3人もそうだった。
「息子を殺してまで、親が生き永らえようだなんて...思わねぇ!」
アチルの感情が爆発する。息子を思うその感情が、爆発する。
「どの世界に子供の命を引き換えに長生きしたいなんて親がいる?どの世界に子供を殺して生きる親がいる?いいや、いない!いる訳がない!」
アチルは、ノノームから離れる。
「親父...親父...親父...親父...親父...」
「ノノーム!俺を殺せ!」
アチルの口調からは、先程とは違い、力強さを感じる。
「親父...わかったよ!わかったよ!わかったよ!わかったよ!わかったよ!」
ノノームは、アチルに近付く。
「親父がこんな弱いわけない!弱いわけない!弱いわけない!弱いわけない!弱いわけない!俺を殺さないために、本気を出さなかったんだろ?出さなかったんだろ?出さなかったんだろ?出さなかったんだろ?出さなかったんだろ?」
アチルは静かに頷く。
「俺はまだまだ弱い!まだまだ弱い!まだまだ弱い!まだまだ弱い!まだまだ弱い!だから、俺は強くなる!強くなる!強くなる!強くなる!強くなる!親父、感謝する!感謝する!感謝する!感謝する!感謝する!」
ノノームは涙を拭き、そう宣言した。
「親父を殺し、親父を殺し、親父を殺し、親父を殺し、親父を殺し、俺は先に行く!王を倒して、別の世界に行き、もっと猛者と戦う!戦う!戦う!戦う!戦う!だから...だから...だから...だから...だから...応援してくれ!応援してくれ!応援してくれ!応援してくれ!応援してくれ!」
「あぁ、当たり前だ」
アチルは優しい口調で容認する。否定するはずがない。
「なぁ...ノノーム。最期に一言、言いたいことがある」
ノノームとアチルは目を合わせる。
「意志というものは、繋いでいくものだ。継ぐものだ。俺の意志を継いでくれるか?」
「あぁ...当たり前だ!当たり前だ!当たり前だ!当たり前だ!当たり前だ!」
「なら、この国を変えてくれ!差別のない、国にしてくれ!」
「もちろん!もちろん!もちろん!もちろん!もちろん!」
「ノノーム一人じゃできないかもしれない、その時は友達を頼れ。きっと、助けてくれる!だから、友達が迷っているときは、困っているときは助けてやってくれ!それが、お前を強くする!」
アチルはノノームに近付く。そして、ノノームとアチルは抱擁する。
「親父...ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!」
ノノームは、アチルに感謝を伝える。
「じゃあ...殺せ。お前の手で」
ノノームは静かに頷く。そしてアチルを『振動』させる。
「ごめんな...お前を遺して...死んでしまって...」
アチルは『振動』されながら、そんな事を言う。ノノームは、父のアチルを抱擁しながら、『振動』を使う。
「ごほっ!ごほっ!」
アチルの口から血が吐き出される。体が、振動され血管が破れたのだ。内臓が破れたのだ。
そして───
「親父...親父...親父...親父...親父...軽いなぁ...軽いなぁ...軽いなぁ...軽いなぁ...軽いなぁ...」
そんなことを言いながら、ノノームはアチルをその場に寝かせる。そして、自分が着ていたタンクトップを脱ぎ、父の顔を隠す。もう、アチルは死んだのだ。
アチルは冬都で、二度目の死を迎える。
「ノノーム」
「どうした?どうした?どうした?どうした?どうした?」
ノノームは、トモキに名を呼ばれる。その方を、見るとトモキとマユミは泣いていた。
「強く...なろうな」
「そうだな。そうだな。そうだな。そうだな。そうだな」
アチルの死体は消えない。アチルは創者ではないから。
創者のように、儚く消えていけば、よかったかもしれない。だけど、現実は無慈悲だ。
アチルの死体は、そこに残り続ける。ノノーム達にアチルの死体を供養する術はない。
するとしても、炎で火葬するくらいだ。だけど、そんなことも今はできない。
トモキが、ノノームの方を見る。そして、こう呟いた。
「行こう、ノノーム。強くなるために」
ノノームは、静かに頷いた。
───親は子を殺せない。
───子は親を殺す。
───なら、親は何故、子を愛すのか。
───自分の命を犠牲にしてまで何故、子をを愛すのか。
───その問いに、答えはない。それが、「愛」と言うものだ。
「愛」に答えなんてない。
答えがあれば、それは「愛」ではないだろう。




