第189話 リンザル
2話連続の名前回。
リンザルはもう一度名前回があるかも?わからない。
『回転式剣武装・7本の陣・十八番』
「───ッ!」
「なっ...なんだ?今の技は...」
フェニーの四肢・そして首がブルムンドによって斬られる。ブルムンドは刀の5本を両手に分けて持ち、1本ずつ足で持って相手に斬りかかった。ブルムンドは平然そうな顔をして、刀を鞘に納める。
「やっぱ、ブルムンド君の十八番は凄いや!」
ショウガ達3人の方向に胴体が飛んできた。
「もらったぁぁぁ!」
リンザルは剣をフェニーの赤い球に刺すも、少し削れただけで破壊までには至らない。
「君...龍人でしょ?」
「そうだけど、どうしてだい?」
「名前はなんだい?」
「リンザルだ」
「ノンノン。家名も名乗りなよ」
「そ...それは...」
「へぇ、名乗らない。じゃあ、当ててあげるよ。君の家名はスレイブでしょ?」
「───ッ!」
リンザルは動揺する。
「なっ!なっ...スレイブじゃ、スレイブじゃない!スレイブなんかじゃない!」
「その焦りよう...スレイブだとしか思えないね。リンザル=スレイブ君。おーい!リンザル=スレイブ君!おーい!」
「やめろ!やめてくれ!やめてくれぇ!」
リンザルは顔を青くして、その場に蹲る。
「おい!フェニー、やめろよ!リンザルだって辛そうにしてるじゃないか!」
「そうか...リンザル=スレイブ君の婚約者である君は、スレイブの持つ家名の意味を知らないんだ?へぇ〜!教えてあげるよ!スレイブの家名の意味は───」
『回転式剣武装・1本の陣・突の字』
ブルムンドはフェニーが家名の意味を言おうとした途端、フェニーの喉を突いて潰す。フェニーの口からは、家名の意味ではなく、フェニー自身の血が吐き出される。フェニーの右腕と両足はもう完全に生えてきていて、左腕ももうすぐで完治する。喉だって、すぐに治ってしまうだろう。
「話させません。嫌がっていることを...」
ブルムンドはそう言うと、2本目の刀を鞘から抜く。
『回転式剣武装・2本の陣・二度突』
ブルムンドはフェニーの腹に剣を刺し、そのまま刺した剣を起点にし、フェニーを壁にぶつける。フェニーが床に落ちる前に、もう一度ブルムンドはフェニーの喉を突き、壁に固定した。
「んぐ...ばばばばばばばばば」
フェニーはそう言うと、喉と腹から剣を抜く。
「はぁ...はぁ...{奴隷}」
フェニーは喉が回復した途端に、{奴隷}と口走る。その発言に、ショウガとシンドークは首を傾げ、リンザルは青い顔し、ブルムンドは憤慨した。
「奴隷さ。スレイブの意味は、奴隷」
「なぁ...本当か?」
ショウガはリンザルに真意を問う。リンザルは死んだかのように首をがっくりと落とした。
───否、頷いたのだ。リンザルは肯定したのだ。
「僕の家名は...スレイブ...意味は...奴隷だよ...」
『回転式剣武装・6本の陣・大風車』
「またか!」
フェニーは、ブルムンドの大風車を避ける。
『回転式剣武装・6本の陣・大回転』
大風車が終わった後、すぐにブルムンドは大回転を行う。右手に持った3本の刀でフェニーを突き、左手に持った3本の刀で、フェニーを斬った。これは、避けられなかった。
「こんな技...知らんぞ...」
「おっと、この技もあなたに見せていなかったようですね...失敬」
「騙してて...ごめん...ショウガ...」
しゃがみ込んでしまったリンザルは虚ろな目をして、ショウガを見る。が、ショウガはリンザルの頭を撫でる。
「大丈夫だ!リカだって奴隷だったし、我も奴隷になりかけた!それに、我も家畜だったこともあるしよぉ!奴隷だろうがなんだろうが、そんなこと我は気にしねぇよ!」
「ショウ...ガ...」
リンザルの目からは、涙が溢れる。しゃがんでいたので、上を見ていたのにもかかわらずだ。
「どうした?そんなに泣くことか?」
「いや...僕...スレイブって家名で...ずっと差別されてきてたから...初めてで...」
この時、ショウガは思い出した。リンザルが出会った当初に言っていた言葉を。
{あぁ!仮にもこの汚れきった貧都でこの美貌を20年以上保ってきているんだ!それはもう強いと思わないかい?}
貧都と王都などの区別は6年前からしかなかったはず。なのに、何故「20年以上」と言ったのか。それは、スレイブという家名で差別されているからだと気付いた。奴隷だからと差別されているからだと気付いた。
最も、リンザルは現在18歳なので「20年以上」生きていないのだが。
「リンザルも...大変だったな...」
ショウガはそう呟く。
「...そうだな」
シンドークも静かに賛同した。流石のシンドークもリンザルを乏しめる程の心情にはならなかったらしい。
***
龍人には代々家名と言うものを受け継ぐ。地球で言う苗字と同義に値するだろう。
例えば、リンザル───僕が持つ、スレイブ。これは「昔、貴族の奴隷であった」ことを表しているのだ。この家名を付けた貴族は、配慮が足りなかったようだ。
でも、僕は奴隷ではなかった。あくまでも、「昔」なのだ。でも、「昔」のことでも差別される。それは、現代日本でも当てはまることだ。詳しくは語らない。
僕は家名のせいで差別された。だから、僕は家名が嫌いだったし怖かった。僕は7歳の時を岐点に、家名を名乗らなくなった。
ノノーム=フィークルの家名の由来。
フィークルは「歯」を意味します。多分、昔は歯医者だったか、牙が鋭かったかの2択。
歯医者?????




