第2話 喋る豚
「おぉ!ひよっ子じゃないか!なんでこんなところにいるんだ?」
俺は後ろから声をかけられる。俺は後ろに振り向いた。そこには巨大な豚が俺のことを見ていた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!巨大な豚が喋ったぁぁぁぁぁ!」
「うるせぇひよっ子だな!」
「なっ...なんで豚が喋ってんだ?ていうかなんでこんなに豚が大きいんだよ!」
「おい?大丈夫か?ひよっ子!」
「俺はひよっ子じゃねぇ!いや、あんたから見たらひよっ子かもしれないけど!」
俺は木の柵の向こうに何かいることに気づく。巨人だった。俺の身長ぐらいの靴を履いて歩いている。
「きょ...きょ...巨人だぁぁぁぁ!」
「おいおい!大丈夫か?ひよっ子!落ち着け!」
「うわぁぁぁぁ!巨人だぁぁぁぁ!食われるぅぅぅ!」
「おい!暴れんな!おい!」
俺は全力で走る。だが、あまり速く感じない。手を全身全霊で振っているのに...あれ?手があるはずの場所に手はなく、代わりに黄色い羽が生えていた。
「な...な...なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」
「うるせぇひよっ子だな!静かにできないのか...」
俺はその場に倒れる。一度冷静になる必要があったからだ。喋る巨大な豚は俺のことを見下ろす。
「ひっ...食われる!」
「おいおい...失礼だな!我はひよっ子など食べぬ!」
俺はゆっくり冷静になる。周りのもの全てが巨大かしている。そして、黄色い羽が生えている。ここで俺が導き出した答えは一つだ。
「もしかして...俺って...ひよこ?」
「そう言ってるだろ!さっきからひよこ、ひよこって!」
喋る巨大な豚は「ひよっ子」ではなく、「ひよこ」と言っていたのだ。
「え...俺ひよこなの?」
「あぁ!そうだが?そこからか?」
「俺...人間じゃない?」
「あぁ...どっからどう見てもひよこだが...あぁ!あれか?お前も我みたいにジャワラに家畜にされたのか?」
俺の頭に中にはたくさんの疑問が浮かぶ。
「待って?豚さん!今から膨大な量の質問をするがいいか?」
「あぁ!いいぞ!どうせ我も暇だからな!」
「サンキュー!まず...俺って...ひよこ?」
「あぁ!何度も言わせるな!」
「確認だけど...あの、鶏の子供だよな?」
「あぁ!そのひよこ以外いないだろ!逆に他のひよこがいるのか?」
俺はひよこになっていた。
「ここって...地球か?」
「チキュウ?いや、違うが?ここは1の世界『ファーストヴィレッジ』だが?」
「あ、そうなの?地球じゃないの?」
「チキュウって言うのは何番目の世界だ?」
「何番目って...一つしかないと思うが...」
「何を言っているんだ?何百・何千個もの世界が集まってできてるんだぞ?知らんのか?」
「世界って一つじゃないの?」
「あぁ!我はこの世界しか知らないけどな!」
ここは地球ではない。とすると...ここは天国か?
「ここって天国?」
「天国?まさかな!死んでないし!天国じゃない!」
となると、残る選択肢はただ1つ。異世界転生ってやつだ。
「うわっ...最悪のパターンだ...なんで異世界に転生してひよこにならなきゃ行けないんだよ...勇者とか王様とかもっといいのあっただろ...」
ブツブツ自分で言って一つのことに気がつく。俺はここに来る前に”死かチキンか”を選ばされたのだ。
それで、異世界転生してひよこになっているのなら辻褄が合う。正直迷惑だが...
「もしかして...俺って異世界転生ってのを...したらしい...」
「異世界転生?何番目の世界から来たんだ?わざわざ1番目に戻ってくるとか考えもつかないのだが...」
「あぁ!言い方が悪かった!俺は地球という星からこの、ファーストなんちゃらに来たんだ!」
ここが異世界転生を簡単に行う世界なら、異世界転生転生をしたってことなのか?
いや、違うな、正確に言うなら異世界転生世界転生となるだろう。
異世界転生を行う世界に転生だから異世界転生世界転生だ。ややこしい。
「じゃあ...地球に戻るためにはどうしたらいい?」
「さぁね?でも...別の世界に行けばその方法が見つかるんじゃない?」
「それじゃ、もう一つ質問だ!どうやって別の世界に行くんだ?」
「あぁ!それは時空の結界にアイキーをはめ込むことで行くことができる!」
「よくわからんな...じゃあ、時空の結界?ってのはどこにあるんだ?」
「この世界の端にあるぞ!」
「じゃあ...アイキーってのは?」
「誰かが持ってたりするか、どこかに置いてあるか...だな!」
「この世界のアイキーはどこにあるんだ?」
「この屋敷の主人が持ってるのよ!」
「へぇ...豚さん!ありがとう!」
「豚さんって言わないで!我の名前はショウガよ!ショウガ!」
「ショウガさん!ありがとう!」
「どういたしまして!あ、チキュウから来たなら鶏小屋の場所とかわからないでしょ?」
「あ、うん!教えて!」
「しょうがない...向こうに小屋があるでしょ?」
ショウガは小屋の方を指差す。巨人...いや人間?が出入りしていた。いや、人間でもない。顔が蜥蜴だ。
先程は足しか見ていなかったので気づかなかったけど、顔が蜥蜴だ。あれは蜥蜴人間ってやつか。
「あの小屋が鶏小屋よ!」
「ありがとうショウガさん!またここに来ていい?」
「いいわよ!話し相手いないしね!」
「そうなの?他にも豚はたくさんいるじゃん!」
「他の豚たちは我の言語を理解できないのよ!我よりも下等だからね!」
「そ...そうなんですか...」
こうして、俺の異世界転生世界転生は始まった。鶏小屋は糞臭くて中々に居心地が悪かった。
そして、俺は毎日ショウガのところへ通い詰めるようになった。
そして、この世界にやって来て一週間が経った。俺は今日もショウガのところにいた。
その日、ショウガの口からとんでもない事実を教えてもらった。