第177話 『揺れ動く才能』
8層にて、第二ラウンドがスタートする。
「それじゃあ、行くぞ!」
ナタヤマは回転を始める。そして、トモキの方へ突っ込んできた。
「避けるのは、苦難じゃねぇ!」
そう言うと、トモキは軽々とナタヤマを避ける。すると、ナタヤマは大きく弧を描くように移動していく。
「避けるのは簡単だけど、攻撃もできないわね...」
「あぁ、そうだな...」
トモキとマユミは、会話をする。ナタヤマは、壁にぶつかって止まる。
「お前ら!もっと、来いよぉ!攻撃しに来いよぉ!つまらない野郎だぜぇ!」
ナタヤマはそう言うとノノームの方へ移動する。
「残念だが、残念だが、残念だが、残念だが、残念だが、その挑発には乗れないな!乗れないな!乗れないな!乗れないな!乗れないな!俺だって攻撃のタイミングは逃したくないからな!ないからな!ないからな!ないからな!ないからな!」
ノノームも、ナタヤマを避ける。
「俺の『超速攻』を避けやがって!いちいちイライラする野郎だぜぇ!」
超速攻・・・自分の体を超高速で回転させる。
ナタヤマは、また壁にぶつかって回転を止める。
「お前らが攻撃してこないから、飽き飽きしてきたぜ!でも、そうすると妹の仇も取れねぇ!戦おうじゃないか!もっと、熱く!もっと激しく!」
そう言うと、ナタヤマはまた回転し始めた。
「俺の強さというものを見せてやるぜぇ!」
ナタヤマは、マユミの方へ移動する。
「マユミ!水をかけろ!」
「ウォター!」
マユミは、ナタヤマに水を掛ける。だが、ナタヤマはそれを全て弾き飛ばしてしまった。
「水が効かないの?」
「かからないのか...」
「どうすればいいかしらね...」
ナタヤマを上手く躱しながら、マユミ達は会話をする。そんな中、ノノームはナタヤマに突っ込んでいく。
「───ッ!ノノーム?」
「俺に任せろ!任せろ!任せろ!任せろ!任せろ!」
ノノームが、ナタヤマの後ろにつけて行く。だが、ナタヤマはそれに気付かない。
「食らえ!『振動』!『振動』!『振動』!『振動』!『振動』!」
ノノームが、ナタヤマに触れる。すると、火花が飛び散り、ナタヤマが止まる。
「うぷっ...お前...俺を止めたのか?」
ナタヤマは、ノノームの存在に驚いている。
「あぁ!あぁ!あぁ!あぁ!あぁ!止めてやったぜ!」
ノノームの手は、血に染まっている。きっと、火花も出ていたから火傷もしているはずだ。それなのに、止めることをした。
「もう一度だ!『振動』!『振動』!『振動』!『振動』!『振動』!」
ノノームの手が、ナタヤマの体に触れる。すると、ナタヤマはそこで大きく震えだす。
「先程とは違う...縦揺れ...だと?」
「あぁ!回転を止めるために横揺れを使ったが、今度は回転させないために縦揺れだぁ!縦揺れだぁ!縦揺れだぁ!縦揺れだぁ!縦揺れだぁ!」
ナタヤマは、ノノームを押し倒し、その場から離れる。
「ノノーム!大丈夫か?」
「あぁ...俺は龍人だ。俺は龍人だ。俺は龍人だ。俺は龍人だ。俺は龍人だ。この程度の傷、自分で治癒できる!治癒できる!治癒できる!治癒できる!」
ノノームは、自分の服で、手についた血を拭き取る。そこに、傷はなかった。
「傷が...ない?」
トモキが驚く。
「いや、治したんだ。治したんだ。治したんだ。治したんだ。治したんだ」
龍族───赤龍などの、龍も、ノノームなどの龍人なども含む。
龍族は、治癒能力に優れている。回復魔法を使ったかのような感覚だろう。
***
3の世界には、優れた回復魔法を使える人が、数人いた。だが、他の世界では見ないし、トモキの知り合いに回復魔法を使える人だっていない。
回復魔法というのは、使える人が少ないのだ。何故なら、他人に魔力───すなわち、体力を味方に分け与える行為だからだ。「走る」などの「体力」ではなく、「細胞を活性化させる」方の「体力」だ。
その「体力」が多い人でなければ、回復魔法を使うことはできない。だから、使える人が少ない。
その「体力」が、龍族は優れている。だから、すぐに怪我が治るのだ。最も、致命傷は治せないのだが。
9の世界で、回復魔法を使える人物は知る限りでは、マユミに魔法を教えた、アテムしかいない。
それほど、希少な存在なのだ。
***
「そして、皆!気づいたことがある!ことがある!ことがある!ことがある!ことがある!」
「なんだ?」
モルドフが、ノノームに耳を近付ける。
「へぇ...その説、あるかもな...」
モルドフはニヤリと笑う。
「お前ら、これで終わりにしてやるぜぇぇ!」
そう言うと、ナタヤマは回転し始める。そして、ノノームの方へ向かう。
「みんな、こっちへ!」
モルドフは皆を誘導する。そこは、7層へ向かう階段だった。
「え、どういうこと?」
「いいから!」
トモキ達4人は、7層へ向かう階段に入る。だが、ナタヤマはそんなことも構わずに独楽のように回転を続けて、壁にぶち当たるとビリアードの球のように跳ね返っている。
「これは...そういう事か...」
「流石に、気付いたのか」
「あぁ!3の世界の試験でも、こんな奴にあったようなことがある!」
ナタヤマは、回っていると盲目になる。───すなわち、視界を奪われるのだ。
超速攻・・・自分の体を超高速で回転させる。使用している間は、視界が奪われる。
「これがわかれば簡単だな!そんじゃ、勝ってくる!」
トモキは、階段から飛び出す。しばらくすると、ナタヤマが止まった。
「そこにいたのか!」
ナタヤマの言葉を無視して、トモキはナタヤマの首に蹴りを入れる。すると、首が取れ壁にぶつかって潰れた。
「お前の急所、どこだよ!」
「ファイヤー!」
マユミが、左半身を燃やす。
「ぐわぁぁぁぁ!」
首がくっつこうとしているが、すぐにトモキはそれを切断した。
「ここまで...か...」
ナタヤマの左腕が燃えると、そのまま塵となって消えていった。
───これにて、冬都は8層までを攻略した。




