第171話 タコ人間
「さて、問題はどうやってお前を倒すかだよな...」
リューガは目の前にいる巨大なタコを見ながら話す。
「タコのへそってどこにあるんだ?」
「さぁねぇ?」
「胴の部分を斬り刻めばいいんじゃないか?」
「そうだな...」
「我に攻撃してみろ!」
タコの8本の触腕が、クレハに向かって攻撃してくる。
「私狙いか」
斬って。躱して。飛んで。裁断して。掴んで。屈んで。突いて。当たる。
「これで、一つの攻撃...無駄に体力を使うな...」
クレハは1本目の触腕を斬り、2本目の触腕を右にズレて躱し、3本目の触腕を飛んで避け、4本目の触腕を見事に裁断し、5本目の触腕を掴んで動きを止めて、6本目の触腕を屈んで避ける。そして、7本目の触腕を突いて止めたのはいいものの、剣が抜けずに8本目の触腕に当たってしまう。そして、斬った触腕もすぐに復活してしまう。
「サンダー!」
”ピシャリ”
カゲユキがタコに雷を落とす。だが、タコの動きは止まらない。そのまま、触腕は再度、クレハを狙う。
「ちっ、またか」
斬って。峰打ちして。爆発して。避けて。破壊して。燃やして。掴まれて。打ち付けられる。
「ぐふっ...」
クレハは1本目の触腕を斬り、2本目の触腕を峰打ちで方向転換させ、3本目の触腕をホリーネスが小瓶を投げて爆発させ、4本目の触腕を避け、5本目の触腕を俺が破壊して、6本目の触腕をカゲユキがファイヤーで燃やして、7本目の触腕にクレハが掴まれて、8本目の触腕で地面に打ち付けられた。
「このままじゃ...まずいな...」
「我は何度だって攻撃してやる!」
「受けて立つ!」
突っ込んで。斬って。絡めて。乗って。蹴って。回転して。掴む。
クレハは1本目の触腕に突っ込んで避け、2本目の触腕を斬り、3本目と4本目を絡めて、5本目の触腕の上に乗り、6本目の触腕を蹴る。そして、空中を移動しながら7本目の触腕を回転しながら避けて、8本目の触腕を掴む。そしてクレハは、タコ───J.J.の胴の上にまでやってくる。
「終わりにしようじゃないか、これらの戦いを!」
クレハが魅せたのは剣舞。名の無き剣舞であった。
そして、J.J.の腹部は斬られる。
「我も...これで終わりか...随分と短い人生だったな...」
J.J.は塵となって儚く消えていく。ショウガに似た顔じゃないだけマシだったのだろうか。
「それじゃ、8層に行くか...」
「あぁ、そうだな」
俺達4人は、8層へとあがる。
”バンッ”
8層に到着した瞬間、突如、発砲される。
「───ッ!」
その銃弾は、先頭を歩いていたホリーネスの心臓に直撃。
「元に戻る!」
俺達は10秒前にいたところまで戻っていた。
「注意しながら、階段を登ろう...」
「そぉうだぁねぇ?」
「ホリーネス、大丈夫なのか?」
「べぇつぅにぃ、だぁいじょぉうぶーだぁよぉ?」
「そ...そうか...」
カゲユキは唾を飲み込んだ。
「じゃあ、行くぞ」
「おう!」
”バンッ”
先程と同じように到着すると、即座に銃が撃たれた。
”ドォォン”
それに反応し、ホリーネスも自分の血の入った小瓶を投げる。銃弾と爆発が重なり、銃弾が失速したところを、ホリーネスが短剣で受け止めた。
「何が起こっているんだ?」
そこにいた、女性は少し困惑している。何が起こったのか理解できていないようだ。
「畜生...タイミングがズレるな...」
そんなことを、一人で呟いている。
「あなたの名は?」
「名乗る程でもない」
「そうか...」
クレハが動こうとした瞬間、その女性は右にズレて発砲する。その銃は、移動した場所にいるクレハは正確無比に捉えていた。
「元に戻る!」
自分に銃弾が当たることを即座に自覚したクレハは、躊躇なく「元に戻る!」を使用している。
”ドォォン”
「は?これは一体..」
敵であるその女性は困惑している。何が起こるのか理解できていないのだ。
「お前が銃の扱いに長けていることは認めよう。だが、私の前では無力」
そう云うと、クレハは先程よりも少し奥にズレた場所に移動する。すると、銃弾は当たらない。
「ここだ!」
「まだ...使えなっ!」
その女性にクレハの剣が当たる。
「銃に関する能力か?また、弾丸に弾を込めなくてもいいとう『射撃』という能力か?私はアイツが嫌いだ」
「それについては、同感よ」
クレハがもう一度、剣を振ろうとした瞬間だ。そして、その瞬間に、ホリーネスも爆弾を投げていた。敵であるその女性は、クレハに目が釘付けだったはずだ。自分に攻撃をしてきた相手なのだから。なのに───
”バンッ”
小瓶に、銃弾を当てた。
「よしっ!私の3回は無駄じゃなかった!」
「3回...それは私達が来てから撃った銃弾の弾数か?」
「さぁね、言う訳ないでしょう?」
「残念、あなたは詰みなんだ。ここで、死ね」
「ちょ、待っ───」
クレハが一瞬、右に動くフェイントを入れる。それを、その女性も気づいていた。
「元に戻る!」
”バンッ”
「残念、遅いわ」
クレハは、フェイントのフェイントを入れる。否、フェイントのフェイントのフェイントであった。
クレハの攻撃は、右でも左でもない。下から来た。その女の、肘関節から下を斬り落とす。もちろん、両肘だ。
「これで、お前は銃を撃てない時間が出来たな」
”ザッ”
「私の6回も無駄だったか...」
腕は治らない。クレハは躊躇なく、その女を斬り刻んだ。
その女は、塵となって消えた。能力も名前も何一つとしてわからなかったなぁ。
8層の女の名前は、レモードで能力名は『連れ戻せ!』です。
連れ戻せ!・・・自分を6秒過去に移動させる。記憶を引き継ぐのは自分のみ。
クレハの『元に戻る!』と違う点は、記憶を引き継ぐのは自分だけだと言うこと。そして、時間がクレハよりも4秒短いこと。それにより、クレハに敗北しました。
レモード視点で書けば、結構接戦ですが、書く予定はなし。敵がループ系の能力でも、勝てちゃうのがクレハ。
クレハが『元に戻る!』を使用したのは3回。
レモードが『連れ戻せ!』を使用したのは、11回。
レモード視点だと、かなりややこしくなるなぁ。
レモードが『連れ戻せ!』を使用した直後に、クレハが『元に戻る!』を使ったり。




