第153話 40.1kg
「この俺たちアゴー・アター兄弟は最強!所謂、完全無欠ってことだ!」
大男───アゴーは筋骨隆々としている。その対に、アターは痩せ細った男である。
「さぁ、再戦と行こうじゃないか。4人共」
「リューガ...行けそうか?」
「あったりまえだ!やってやるよ!」
「あぁ、その粋だな」
クレハは剣を構える。その目は少しイキイキとしている。
「私は、槍を持った痩せ細った男を相手する!他の2人は任せられるか?」
「あぁ!任せておけ!」
「りょーかぁい?」
「俺の相手は女なのか...乗り気にならないな」
「残念だが、そこら辺の男より強い自信はある」
「そうか。なら、相手をしてやるよ。負けたら遊ばせて貰うぜ」
「有言実行してからそういうことは言うことだな」
アターも槍を構える。
「私の名前はクレハ!」
「俺の名前はアター」
双方名乗った。勝負は開始する。
***
「なぁ、リューガ?」
「どうした?」
「俺にジャムの相手をさせてくれ」
「あぁ、いいけど?」
「それと...ホリーネスも一緒にいいか?」
「あぁ、いぃいぃよぉ?」
「じゃあ、俺はアゴーの相手をするから、2人にジャムは任せた!」
「「おう!」」
「さて、アゴー!この俺が相手だ!」
「俺の相手がヒヨコだと?ナメているのか?バカにしているのか?」
「残念、馬鹿にしていないから俺が相手しているんだ!」
「あぁ、そうか!お前がこの4人の中で一番強い、所謂天下無双という訳だな?」
「まぁ、そうだな!クレハとは戦ったこと、ないけど...」
「じゃあ、お前の相手、受けて立とうじゃないか!」
「いざ、尋常に...勝負しようじゃないか!」
***
「どぉうしぃてぇ、わぁたぁしぃがぁ、ひぃつよぉうなぁのーかぁなぁ?」
「お前の体重を教えてくれ...」
「3かぁげぇつぅまぁえーのぉ、わぁたぁしぃのぉ、たぁいじゅーはぁ、72kgだぁよ?」
「そうか、ありがとうな!」
カゲユキはニヤリと笑う。
「72kgか、いいことを聞いた。僕に体重を聞こえるように話すなんて愚かだね」
「でも、お前が7.2kgにまで体重を減らせるとは思えないんだよな」
「そうかぁ...それは心外だね。僕だって自分の能力を弁えているんだよ」
「お前の体重は40.1kgだ。違うか?」
「───ッ!なぜそれを?」
「セグウェイに乗っているからわかった。セグウェイは40kg以上ないと動かない。でも、40kgぴったりでも駄目だ。機器の安全上動くことはない。でも、動かせる物を増やすためにギリギリまで痩せるはずだ。なら、お前はギリギリ動く40.1kgのはずだ」
「あぁ、そうだね。正解だよ。君は頭脳明晰だね。でも、それを知ったところでどうするのかな?」
「大違いだよ。作戦の根本が変わってくる。でも、正解だったからこのまま俺の作戦は実行出来るって訳だ」
「さぁくせぇんをー聞いてぇなぁいんだぁけぇどぉ?」
「あぁ、それはだな...」
カゲユキはホリーネスに耳打ちする。ホリーネスは何か気付いたような顔をする。
「カゲユキくぅん...君はぁ、恐ろぉしぃいーにんげぇんだぁねぇ?」
「どうとでも言えばいいさ」
「褒め言葉さぁ、さぁいだぁいの褒め言葉」
ホリーネスはニヤリと笑う。
「そぉれぇじゃあーたぁのーしぃもぉうーじゃあぁなぁいかぁ。たぁたぁかぁいーをぉねぇ?」
***
”キンッ”
”キンッ”
”カッ”
クレハの剣と、アターの槍がぶつかり合う。
「かなりの槍捌きだな」
「あぁ、これが俺の生まれつきの実力だ」
「と...すると、能力なのか?」
「まぁ、そういう事だな」
アターは瞬きもせず答える。この間も、もちろん剣と槍はぶつかり合っている。
「なら、能力を使ってない私の方が一枚上手ということかな?」
「じゃあ、お前の能力を見せてみろ」
「いや、場が混乱するからやめておくよ。緊急事態の時以外は出来る限り使わないようにしているんだ。みだりに使っていいものでは無いと思っているからね」
「ほう、そうなのか...興味深い能力だな」
「なら、幽霊にでもなったら私のストーキングでもするといい」
「そんな変態のようなことはしないさ。俺は至って真面目に生きて至って真面目に死んでいきたいのさ」
「それも、まぁ一つの道だと言えよう」
”カッ”
クレハは数歩後ろに下がる。槍の間合いから外れたのだ。
「剣の間合いは、槍の間合いよりも狭いのは常識だろう」
「あぁ、そうだな」
アターは槍を構えつつクレハの話に耳を傾けている。
「じゃあ、私は今ものすごく不利な状況だとも言える」
「あぁ、そうだな」
「そして、実力は同じくらいだな」
「あぁ、そうだな」
「この状況を打破する選択肢は3つある」
「そうなのか」
「1つ目。槍よりもリーチのある武器を用意する」
「それはそうだな」
「2つ目。仲間をおいてお前から逃亡する」
「それも一案と言えるだろうな」
「だけど、この2つは用意できないし、逃げることも許されない」
「俺は逃げてもいいと思うけどな」
「なら、残っているのは3つ目だけだ」
「そうだな」
「3つ目は...お前の槍を剣と同じ間合いにすることだ!」
”カッ”
槍の柄を、クレハは一瞬にして斬り落とす。槍の穂の部分は、地面に落ちて鮮やかな音を鳴らした。
「さぁ、拾え。勝負を続けよう、アター。短くなった槍で、お前の実力を見せてくれ!」
ジャムvsカゲユキ・ホリーネス
アゴーvsリューガ
アターvsクレハ
 




