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第146話 殺人ウイルス

春都 ショウガ・シンドーク・ブルムンド・リンザル

夏都 リューガ・カゲユキ・ホリーネス・クレハ 

秋都 リカ・ユウヤ・カミール・タンドン

冬都 トモキ・マユミ・ノノーム・モルドフ

 

 ユウヤ・リカ・タンドンの3人は、3層に到着した。


 300...


 その中には、大きく「2」と書かれた服を来た男がいた。その男は、右手に金色の懐中時計を持っている。

「ふふ...こんにちは。3人の仔猫ちゃん」

 その男はそう口走る。


「お前は?」

「名乗ります。名乗りますとも。名乗れども。名乗れよ。私はツーです。一人称は私でも見るからに男です。男なので男ということでよろしくお願いします」

 ツーは頭を下げる。その顔はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


 280...


「ツー?じゃあ、ワンとかスリーもいるんですか?」

「えぇ。います。いますとも。いるけれども。私はワンツースリーフォー4兄弟の内の次男、ツーでありますとも。私の他に4人いますよ。ワン・スリー・フォーの3人が」

「そうか...その4人共、俺らが殺す...」

 ユウヤが剣を向ける。


「その心配はござません。何故なら私があなた達3人を殺すので。殺しますので。殺されてもらいますので」


 250...


「お前、武器を持ってないな?なら、能力で戦うんだろ?」

「そうです。そうでございます。そうならざるをえません。私は能力で戦います。否、戦いません。逃げます。逃げ回ります。逃げ続けます」

「そうか、要するに鬼ごっこって事だな?」

 ユウヤがツーの方へ走り出す。


「そうです。鬼ごっこです。私を殺したらあなた達の勝利です。その代わり、この層に来て5分以内と言う縛りがありますがね!」


 230...


「どういう事だ?」

「私の能力は『病原』です。これを伝えないと、楽しい鬼ごっこはできません。やれません。こちらも楽しめません。こちらの能力を知っているのにも関わらず相手が急に死ぬところなんて見ても面白くありません。つまらないです。なので、言います。感染すると5分で死ぬウイルスを撒き散らします。撒き散らしてあります。撒き散らし終えてます。この部屋全体にです。なので、あなた達が入ったところから鬼ごっこはスタートしていました。いたのです。スタートし終えていたのです。さて、あなた達が入ったところから今は100秒ほど経っていますね。経ち過ぎています。あなた達が私を捕まえることは不可能です。可能じゃないです。できないんです」


 198...


「お前、もしかして...その長話も...」

「はい、そうです。時間稼ぎの為です。文字数稼ぎの為です。何もかも私の勝利のためです。自分のためなんです。ほら、時間は過ぎていきますよ。逃げていきますよ。さぁ、捕まえて見てください。さぁ!さぁ!さぁ!」


 180...


 ───残り3分。


「残り3分弱と行ったところか...俺たち、捕まえられるのか?」

「さぁ、捕まえて見てください!私を殺せばウイルスも死にます!死んでしまいます!消滅します!捕まえて殺してみてください!」


 病原・・・感染すると5分で死ぬウイルスを撒き散らすことが可能。ツーを殺せばウイルスも死ぬ。


「あぁ、やってやるさ!」

 ユウヤはツーの方へ走り出す。だが───


 ”ゴンッ”


 ユウヤは転んでしまう。

「な...」


 160...


「第一のウイルスによる変化。運動神経の麻痺。どうです?歩けないでしょう?上手く、剣も握れないでしょう?辛いでしょう?泣きたいでしょう?泣いていいですよ!嘆いていいですよ!私はそんな人間の苦痛を見るのが大好きです。好きです。愛しています。なので、見せてください。あなたの苦痛で歪んだ笑顔を。本当の顔を」

「そうかい...そうかい!」

 ユウヤは笑顔を見せる。


「リカ、タンドン!協力してくれるか?」

「おう」

「もちろんです!」


「ベラベラと能力を喋って、お前の負けだぜ!ツー!」


 130...


「もうすぐ、残り2分ですね。さぁ、どうしますか?3人共上手く歩けないと言うのに」

 ツーは時計を見ながら単調に喋る。


「お前の動きを止めれば、トロくても問題ないんだぜ!」

 ユウヤはツーに斬りかかる。だが、重心は安定していない。


「うん。やはりウイルスに負けていますね。勝てていませんね。敗北者ですね」

 ツーはユウヤの攻撃を避け───



 れなかった。


「なっ!」

 空気の壁にぶつかる。

「ダイラタンシー、だぜ?」

「ありがとな、タンドン!」

 ユウヤは、その剣で、ツーの首を刎ねる。



 110...



「これで、勝ったのか?」

「ユウヤさん、まだ安心するのは早いです!きっと創者かもしれません!」

「あぁ...そうだな...」

「そうです。そうなのです。そうなるのです。私は創者です。『創意』で創られた者なのです。なので、急所があります。そこを斬られなければどんな攻撃も無力なのです。無駄なのです。無意義なのです。さぁ、私の急所を知りたいでしょう?聞きたいでしょう?教えてもらいたいでしょう?いいです。教えてあげましょう!私の急所は鼻です。鼻なのです。顔の真ん中に付いている鼻です。さぁ、斬ってみなさい」


「あぁ、斬って...」


 ”バタッ”


 3人は一斉にその場に倒れる。


「第二のウイルスによる変化。感覚神経の裁断。歩くことも考えることも必ず一時停止が入ります。さて、残り100秒を切っています。さて、どうしますか?さぁ、どうしますか?この私に見せてください!苦渋の顔を!苦悩の顔を!」





 90...



 89...



 88...



 87...



 86...



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