第142話 泥沼
ショウガ達4人は2層に上がる。
「ここは...」
その部屋にあったのは大量の水溜り───否、泥沼だった。
「こんなに泥沼が...」
「かなり深さはありそうですよ」
ブルムンドは中に縄の切れ端を投げ捨てる。すると、泥沼の中に沈んでいった。
「うへぇ、足を入れる気にはならないな...」
”ブクブク”
複数個ある泥沼の中から泡が出てくる。
「なっ...誰かいるのか?」
「おいおい、お前ら...ここは俺が門番をして、ここで生活してるんだよ。侵入してきたのはお前らだろ?それなのに、{誰かいるのか}なんて、失礼極まりないよなぁ?」
「───ッ!」
泥沼の中から出てきたのは、体中が泥に塗れた大きな目を持った人間だった。
「お前は!」
「名乗るのはそっちからだろ?って、いい女を一人連れてきたじゃねぇか!そいつを寄越せ!そしたら、命だけは許してやる!女をおいてとっとと帰りな!」
「このシンドークが貴様のような汚い人間の言葉を聞くわけがないだろう!」
「んだと?ここは俺の住処だぞ?余所者の貴様らが勝てるような場所なんかじゃねぇ!」
「この私が相手をしましょう」
「いや、我ら4人、全員だ!」
「そうだね。僕も協力するよ」
「このシンドーク、相手になってやろうじゃないか!」
「しょうがねぇなぁ...俺が相手にしてやるよぉ!名乗れ!女!負ければお前を貰う!」
「我の名は───」
「このシンドークに名前を聞くでない!!」
「あ?お前の名前は聞いてねぇよ?この金髪野郎が!」
「は?このシンドークも女だぞ?」
「あ?嘘つくなよ、つまらねぇ!」
「このシンドークは...女だぁぁぁ!」
シンドークは、泥沼から出てきた男に向かって走り出す。
「───ッチ!」
その男は、泥沼の中に潜っていく。
泥土・・・泥沼を作ることが可能。
「お前、よくわからな───」
”ビリビリビリ”
シンドークは泥沼の中に電気を流す。
「これで、死ね!死にやがれ!不愉快なんだよ!このクソ野郎が!」
「危ないなぁ!お前、自己中過ぎるだろ!」
「このシンドークが世界の中心だ!わからないのか?このゴミ人間!」
「せめて名前で呼べ!俺の名前はドロンドだ!」
別の泥沼からドロンドが出てくる。
「うわぁ、なんかぴったりだ」
「ドロンド!貴様はこのシンドークが殺す!誰も手を出すなよ?」
「あぁ、我はいいぜ?」
「僕もだ」
「お嬢様、でも私は...」
「ブルムンド...手、出したら赦さないからな?」
「しょうがないですね...わかりましたよ」
───シンドークとドロンドのサシが始まる。
”シャッ”
シンドークは刀を抜く。そして、ドロンドを睨む。
「へっ!サシかよ!俺は苦手なんだけどなぁ?相手してやるぜぇ!」
ドロンドは泥沼の中に潜る。
「このシンドークから逃れられると思うなよ!」
「あぁ!俺は逃れねぇよ!もちろん、お前らも逃がす気はねぇよ!」
シンドークの後ろに何かが飛び出る。
”ザッ”
「───ッ!」
シンドークはその飛び出た何かを斬る。だが、それは泥だった。
「残念だったな!それは、俺が吐き出した泥だよ!」
「シンドーク、逃げろ!」
”ガシッ”
泥沼から出た手が、シンドークの足を掴む。
「このシンドークの体を触れたら負けなんだよぉ!」
”ビリビリビリ”
手に電気が流れる。
「ははは!それは、泥で作った手だよ!」
「なっ?」
足に付いていた手が液体に戻る。
「なっ...なんでだ?なんでなんだ!」
「馬鹿だな!お前らはよぉ!」
「───ッ!」
ショウガの短い悲鳴が聞こえる。
「ドロンド、卑怯だぞ!」
ドロンドは、ショウガの口を覆っていた。
「お前らはアホだなぁ!人質に取っちまえばお前らは攻撃できないのによぉ!」
「僕の嫁を返してもらいたい!」
「あ?そんなの知らねぇよ!俺が満足できればそれでいいんだよぉ!」
『飛閃軟突流 背反』
”ブスッ”
「───ッ!」
ドロンドの胸にショウガの刀が刺さる。
「なっ...お前、どこに隠して...」
「言う訳ないだろ!このバカ野郎め!」
ショウガはその場を離れる。ショウガの前にリンザルが立った。
「行け、僕の子供達」
リンザルの式神である小虫たちが、ドロンドを襲う。
「ったく!この虫ども!小賢しいやつらが!」
「リンザル!」
「怒るな、シンドーク。こいつは、僕の嫁であるショウガに手を出したんだぞ?なら、共闘しようじゃないか。いいだろう?」
「しょうがない、このシンドークと共闘しよう!」
リンザルも剣を持つ。
「2vs1かぁ?しょうがねぇなぁ。相手してやるよぉ!あの女を手に入れるためにはよぉ!」
ドロンドは泥沼の中に潜る。ごくり。シンドークがつばを飲み込んだ。
「どこから...来るんだ?」
シンドーク達は、各々近くにある泥沼を見張る。
「どこから...来るんだ?」
右の沼か、左の沼か。正解は───
「右!」
───否。シンドークの右から出たのは泥人形だ。
「じゃあ、左か?」
───否!!!
出てきたのは、真上からだ!!!
「なっ!!!」
ショウガはドロンドに捕らえられる。
「残念だったな!天井にも泥沼は作れるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」




