第138話 メタ発言をするツッコミの弱いお兄さん
犬の大きさは2mはある。先程のハリネズミは大きかったが、こちらはさらに大きい。トモキは思わず二度見してしまった。
「どうしたんんだい?僕も何か他の生物に変化したから驚いてしまったのかな。まぁ、妹はハリネズミだったからね。あ、君たちが鷲おじさんを殺したのかな?」
「鷲おじさん?ワインダーのことか?」
「僕が名前なんか覚えてるわけないだろう?目の前にいる君たち4人でさえあだ名で呼んでいるんだから。僕が覚えてる名前は、姉のマオと、妹のヨナ。そして、この砦の王のガッチさんと僕自身だけさ。国の偉い人がたまーに連絡を求めてくるけど名前は、覚えていないよ」
「そうなのかよ...」
「それじゃ、戦いを始めようじゃないか。いや、でも僕が犬の姿だから勝負じゃなくてじゃれ合っているように見えるかな?そうだとしたら、ものすごく楽しそうに見えるね」
「お前みたいなデカい犬とじゃれ合っても痛いだけだろ!」
「メタ発言をするツッコミの弱いお兄さん、そんな痛々しい言い方はしないでほしいな。いくら人間の姿の僕が綺麗で惚れ込んでしまったからって、犬の姿の僕を責めないで欲しい。だって、僕は僕なんだから」
「ったく!犬の姿でも長々と喋るのかよ」
「悪かったね。たくましい筋肉を持ったお兄さん。僕は要約というものが苦手だから、つい心に思ったことを長々と独りでに語ってしまうんだ。僕の戯言に耳を傾けてくれているということなら、とっても嬉しいよ。感謝を述べてもいいかもしれない。でも、きっと{長々と喋るのかよ。}なんて言われてしまったから、きっといい気分にはなっていないみたいだね。誠に申し訳無いよ。謝罪を申し上げようじゃないか。これで、許してくれるかな?おっと、また僕は長々と喋ってしまったようだ。僕は少し私語を謹んだ方がいいかもしれないね。失敬」
「それじゃ...ヤエ!行くぞ!」
「あぁ、僕も戦う準備は出来た。待たせて悪かったね。戦いたくて戦いたくて君たちはウズウズしていたと言うのに。僕のお喋りを聞いてくれてありがとう。君たちと楽しいバトルをできることを願っているよ」
「こいつはこいつはこいつはこいつはこいつはただの犬だ!ただの犬だ!ただの犬だ!ただの犬だ!ただの犬だ!触れて『振動』させれば勝てるぞ!勝てるぞ!勝てるぞ!勝てるぞ!勝てるぞ!」
ノノームはヤエに近づく。すると───
”ピョンッ”
飛んだ。ヤエがジャンプをして、ノノームの頭を飛び越えたのだ。
「ジャンプ力...高!」
「僕は一概にも犬なんだ。それに巨大な。5mくらい余裕でジャンプすることも出来るし、僕の歯で君たちのことを噛み砕くこともできる。龍種のお兄さんなんて飛び越えることくらい朝飯前なのさ。龍種のお兄さんに触れられてもよかったんだけどね。何の能力かわからないから、対策させてもらったよ。龍種のお兄さんは何か能力を持ってるかもしれないからね。その証拠に、剣や弓などの攻撃手段を持ち合わせていない」
「───ッ!」
「今、驚いたね。図星と言うことかな?君から怒りの匂いがしたよ。あ、僕は犬だから人間の感情は匂いである程度は理解できるんだ。ある程度、心を読むことだってできるから、この能力は重宝してるよ。でも、この犬になって匂いを嗅いでも、大抵の人は{デカい犬は怖い}という考えになってしまうんだけどね。本当は、鼻だけ犬に変えて匂いを嗅いでいるよ。僕は、鼻だけ変身するのはあまり好きじゃないんだけどね。だって、僕の顔は整っているだろう?だから、犬の鼻をつけて変な印象を初対面の男性には与えたくないのさ」
「なら、もしかしたらこの方法が使えるかもしれない!」
「おっと、僕の能力を聞いてメタ発言をするツッコミの弱いお兄さんは勝算を立てられたのかな?追加で説明しておくけど、僕は日本語しかわからない。でも、英語やイタリア語・フランス語を使って頭の中で会話しても、僕の鼻は僕に意味がわかるようにしっかりと翻訳してくれるのさ。まぁ、翻訳してくれるのは心の中で思ったことなんだけれどね。普通の会話でイタリア語を使われてもわからないよ。あ、『arrivederci』が{さよならだ}って意味なら知ってるよ。『volare via』も知っているさ。でも、他のイタリア語は詳しくは知らないね。だから、それ以外なら日本語で話してくれるとありがたいよ」
「大丈夫だ、俺だって脳内でフランス語を使うなんて器用なことは出来ない。俺の心の中を試しに読んで見ればいいじゃないか」
モルドフはそんなことを言う。
「あぁ、わかった。やってみ───!───ッ!メタ発言をするツッコミの弱いお兄さん!君という人はものすごく最低だね!頭の中でなんてことを考えているのかな?私にあんな事やそんな事をするなんてはしたないことを考えて!ちょ、なんで喜んでいるのかな!もしかして、メタ発言をするツッコミの弱いお兄さんはものすごくマゾヒストなのかな?そうだ。きっとそうだ。なら、メタ発言をするツッコミの弱いお兄さんじゃない。マゾで脳内妄想ばかりしているメタ発言をするツッコミの弱いお兄さんに変更だ。うん、そうしよう。それがいい。そうしないといけない。ちょ、頭の中で勝手に絶頂しないでよ。マゾで脳内妄想ばかりしているメタ発言をするツッコミの弱い{変態}お兄さん。あぁ!いけない、{変態}なんていったらまた喜んでしまった!僕はどうすればいいんだ。どうしても、性的対象として認識されてしまうじゃないか。こんな人といつも一緒にいるなんて、君たち3人は大変だ───あれ?」
マユミ・トモキ・ノノームは忽然と姿を消していた。




