第133話 『勇者と大きな大きな虎』
今日はクレハの誕生日!小話は用意できそうにない!すまん!
ハッピーバースデー!
「とりあえず、俺はダイラタンシー!」
タンドンはその場から動かない。空気で『ダイラタンシー』を行ったのだ。
「3人共、避けてくれ!」
「はい!わかりました!」
後ろには壁があるので、逃げ場は上しか無い。否、壁はこれまでの斬撃で傷ついている。
「なら、俺はこれを利用する!」
ユウヤは、壁に出来た爪痕に足を引っかけて飛ぶ。ユウヤは斬撃を飛び越えた。
「じゃあ、俺も行くぞ!」
後ろには壁があるので、逃げ場は上しか無い。否、斬撃は物質ではない。
「空間削除!」
カミールは空間削除で、空間を消し、斬撃が通り過ぎた方向へ移動した。
「私も頑張りますよ!」
後ろには壁があるので、逃げ場は上しか無い。否、斬撃は下でも避けられる。
「おらぁ!」
リカは地面を殴る。すると、地面が抉れた。リカはその中に入る。
「これで、全員避けれましたね!」
「な...なんで!なんで俺様の攻撃が当たらないんだよ!おかしい!おかしいだろうよ!」
「全くをもっておかしくねぇ!だって、お前はこの程度なんだからよ!」
「俺様が...この程度?な訳、な訳ないだろう!まだ俺様は本気を出していない!」
「そうか...なら、本気出せよ。雑魚が」
カミールが静かに呟く。氷のようなその一言は、ケンランの胸に突き刺さった。
「あぁ、出してやるよ!貴様らに見せてやるよ!俺様の本気を!」
ケンランの爪と牙はどんどん長くなる。そして、体もどんどん大きくなり、四足歩行へと変わる。
「これは...まさか...」
「あぁ、そのまさかだ。獣人は人獣になれるのか」
「獣人」それは、「知識を持ちそれを利用し文化を形成する獣」のことだ。そして、伝説上の生き物である「獣人」は「文化の形成をやめて、人獣になる」ことが可能なのだ。その場合、大幅に語彙力は低下し、全てをなぎ壊す生物に化してしまう。
「俺たちは...勝てるのか?」
「あぁ、勝つしか無いだろう」
***
「獣人」はおとぎ話の『勇者と大きな大きな虎』に登場する。それは、こんな内容だ。
昔々、とある世界に一人の少年がいました。だけど、普通の少年じゃありません。その少年は虎の姿をした獣人でした。獣人の姿だったので、人間のお友達も、動物のお友達も出来ませんでした。街に出ると、人々から石を投げられ、森に行くと、他の動物達はどこかへ逃げて行ってしまいました。ある時村では、雨が降らずに、食べるものが無くなってしまいました。獣人の少年は、皆と仲良くなる為に、狩猟に来た大人たちの後ろをこっそり付いていきます。その時でした。大きな大きな熊が現れました。その熊は、大人たちを襲います。
獣人の少年は居ても立っても居られなくなり、「人獣」に変身しました。その人獣の姿を見て、熊も大人も一目散に逃げていきました。獣人の少年は悪いことをしたと思い、「人獣」の姿のまま山を降りて街に向かいます。すると、一人の勇者が立ち向かって行きました。そして、こう言います。
「俺は貴様を殺す!」
***
”グアアアアガルル”
人獣と化した、ケンランは吠える。ユウヤはケンランに剣を向ける。
「俺は貴様を殺す!」
”ガルル”
ユウヤの剣とケンランの爪はぶつかり合う。
”キィィン”
”キィィン”
「助太刀する!」
カミールも後ろからケンランを斬ろうとする。だが、蹴られてしまった。
「うおっ!危ない!」
「私が行きます!」
”ゴンッ”
リカが『硬化』を使って殴る。ケンランは少しよろめいた。
”ジャギィィン”
ユウヤはケンランの横腹を斬る。
「ユウヤ!一旦距離を取れ!」
「あぁ!わかった!」
ユウヤはケンランから距離を取る。横腹が回復したケンランは、ユウヤに向かって走っていった。
「ダイラタンシー、発動!」
”ゴンッ”
ケンランはダイラタンシーで出来た壁に頭を打った。
***
勇者と人獣になった少年は戦います。でも、人獣は勇者を傷つけたくはありません。なので、避けるばかりで攻撃しません。勇者は、人獣の牙を折ります。
***
「なぁ、ケンランの急所ってどこだと思うか?」
「わからない...とりあえず体中を斬ってみるしかないな...」
「あぁ、そうだな...」
ユウヤはケンランの足を斬る。すると、ケンランはユウヤの頭に齧り付こうとしてきた。
「危ないです!」
リカはケンランの牙を一本折った。ケンランの足は復活するが、牙は復活しない。
「なぁ、もしかしたら急所は牙かも!」
”ガルルル”
カミールは、ケンランの爪を受け流す。リカはその隙に、ケンランの牙を折った。
***
人獣の体は次第にボロボロになってきてしまいました。人獣は少しだけ横になりました。すると、勇者は非情にもバッサリとお腹を斬ってしまいました。お腹の中から赤い色をした臓物がこれでもかというほど溢れてできます。
***
”バタリッ”
ケンランは倒れた。
「よし、みんな行くぞぉ!」
「えぇ!」
「「おう!」」
カミールはケンランのお腹を斬る。傷口は、もう治っていない。
***
もう、最後も近いことに、獣人の少年は気が付きました。勇者は、こんなことを言いました。
「君もいい友だった...」
勇者は、獣人の首を撥ねました。獣人の目からは涙が零れ落ちました。
***
「君もいい友だった...」
ユウヤはケンランの首を撥ねる。ケンランの目からは涙が溢れていた。
そして、ケンランは塵になって跡形も残らず消えていった。




