第126話 溶解性の液体
「この状況...どうすればいいんだよ...」
”コポォ”
「うわっ!マズイ!」
”ジュワァァ”
ギリギリのところでタンドンは跳ねた液体から避ける。
「逃げ場が無くなった!」
”ジュワァァ”
「───!」
ベトベトンの頭の上から、大量の骨が落下してくる。きっと、シルバードの物だ。
「こんなん、触れただけで死ぬに決まってるじゃないかよ!なんだ、この怪物!」
タンドンはリリアを助けたことに、少し後悔していた。きっと、今まで通り流されやすい性格のままならよかったのかもしれない。それなのに、カッコつけようとしたからだ。もう、僕はここで───
「諦めてたまるかよぉ!ダイラタンシー!」
”コポォ”
液体がまた、はねる。だが、透明の壁のようなもので阻まれる。
「やった...成功した!」
タンドンの能力は進歩していた。タンドンの心の成長が、能力も成長させた。
ダイラタンシー・・・液体と気体でダイラタンシー現象を起こすことが可能。気体の場合は、予め決めた触れたことのある場所のみでダイラタンシーを行うこと可能。
要するに、空気の原子は移動してても、その場所に空気さえあれば、ダイラタンシー現象を起こせるということだ。
スピードが出てる人が突撃してくれば、見えない空気の壁ができ、その人の侵入を阻むことが出来る。
「でも、壁が作れるようになったからって、僕がベトベトンを倒せるって訳じゃない!」
タンドンは一回、しゃがみ込み、そして再度立ち上がる。
「これなら行けるぞ!ダイラタンシー!」
タンドンはそう叫ぶと、ベトベトンがいない方向のベトベトンの体液の上に乗る。もちろん、ジャンプをしてだ。
本来なら、足が液体に浸かるだろう。だが、ダイラタンシーが行ってあれば別だ。
溶解性のあるベトベトンの液体の上にあった空気をダイラタンシーで固められるようにしてから、その上にジャンプで乗った。そうすれば、空気の上を移動することも出来る。
「すごい!進歩だ!進歩してるぞ!」
ダイラタンシーで固くした空気を、飛ばすことは出来ないみたいだ。それは液体で行えば十分だろう。
「さて、ベトベトンをどうやって倒すかだな...」
ベトベトンはこちらにゆっくり移動している。きっと、ダイラタンシーを行っても無駄だろう。通り抜けてしまう。ダイラタンシーはあくまでも、スピードが出ている物質にしか通用しないのだ。
「考えろよ...しっかり...どうすればいいのか...」
”キィィン”
「なぁ!元に戻る!」
一瞬、目の前をクレハが通り、ベトベトンを斬ろうとしていた気がする。
「なぁ、あの生物は何だ?」
「何だって言われても...説明がつかないよ。体は液体状で、溶解性がある。触れたら、骨以外は溶けるぞ」
「ひぇ、恐ろしいな...」
「倒し方がわからないんだ!」
「リリアという女性が助けを呼んでいたので、来たのだが...これ程とは...不覚!」
クレハは少しだけ悔しそうな顔をする。
「どうやって倒せばいいんだ?」
「それを聞くな!わかってたらもう実行するよ!」
「す...すまない...」
クレハを怒鳴ってしまった。クレハは少しシュンッとしている。
「水をかけたらどうだ?」
「蒸発しちまったよ。それどころか、鉄も液体になる位の酷さ」
「そんなに熱いのか?温度は感じなかったが...」
「あぁ、僕もだよ...どうすれば───」
”コポォ”
「避けろ!クレハ!」
”ドサッ”
タンドンはクレハを押し倒す。
「うわっ!服が!」
クレハのビキニアーマーが溶けかけていた。かかったのは、右肩の部分だ。
「クレハ!早く脱げ!体にかかったら!」
「これを脱いだら、何も着てないんだ!どうしたら!」
「なぁ、擦れて痛くならないの?鉄でしょ、素材?蒸れたりしない?」
「そんなことを気にするんじゃない!」
クレハはビキニのブラのような感じのものを外す。クレハは豊満な胸を、左腕で隠している。
「クッ...片手しか使えないのか...」
「そんなにあったっけ?一緒に風呂入った時は無かったくない?」
「一体、何年前の記憶だ!私ももう36だぞ!」
エルフは長寿の種族だ。だから、36でも人間では15歳位だ。
「まぁいい...で、そのブラみたいなの貸して?」
「何に使う?」
「投げる。少しでもダメージに使えれば...」
「ったく...しょうがない...」
頬を赤らめているクレハから、胸を隠すためのビキニアーマーを頂く。ビキニの上の方としか言いようがないし、何ていうかもわからない。誰か教えてクレメンス。
「んなことはどうでもいい!行くぞ!おら!」
”ジュワァァ”
「ダイラタンシー、発動!」
”ボッチャァン”
”コポォォォォ”
「おいおいおいおい!タンドン、まずいんじゃないかぁ?」
「あぁ、そのようだな!」
液体になった鉄をダイラタンシーで硬くしても、ベトベトンにダメージが入るどころか、より巨大にしてしまった。
「まっ...まずい!後ろに逃げ場はないぞ!」
「なっ...瓦礫ぃ?」
タンドンとクレハは袋小路に移動してきてしまった。もう、ここから抜け出すことは───
「そこのそこのそこのそこのそこのカラフルな怪物め!怪物め!怪物め!怪物め!怪物め!このノノームが相手をしてやる!してやる!してやる!してやる!してやる!してやる!」




