第123話 捨て子
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ユウヤ───俺は捨て子だった。
3の世界の裏道に捨てられていたらしい。それを、義父のハラという男が拾ってくれた。
年齢はともかく、誕生日まではわからなかった。俺が拾われた時は、大体4ヶ月ほどと推測が立てられていた。
そんなまだ幼い俺を、男手一つでハラさんは育ててくれた。血の繋がりはないのに。
もちろん、俺に名前なんかなかった。だから、ハラさんは俺に「ユウヤ」と名付けてくれた。
名前の由来は、「勇気を持った男らしい人間になって欲しい」からだそうだ。
ハラさんは剣士だった。ハラさんは俺が12歳(推定)になると、第2の試験を受けた。
俺は剣の道場に預けられた。だけど、ハラさんは腕前がよかったらしく、快く俺のことをみんな引き受けてくれた。
だけど、ハラさんは第2の試験で死んでしまった。準決勝だった。そこで、その大会で優勝したチームと当たってしまったのだ。
そのチームの名前は「金銀銅」だ。そのチームは全員、人間じゃなかった。全員が半鬼人だった。
試験ではしょうがないのだが、誰かを殺してしまえば、誰かから恨みを買う。
「金銀銅」の3人はそのまま4の世界に行ってしまい、今はどうなっているのかわからない。
俺は、ハラさんを殺した「金銀銅」の3人を許したくない。だから、俺は剣士になった。
***
「そう...だったのか...」
俺は過去を語ってくれたユウヤに同情してしまう。
「3年前のことなんだ...それで、今「金銀銅」はどこにいるのか、わからない...」
「そう...なのか...」
「あぁ、死んだかどうかもわからないんだ...」
「名前はわかるか?」
「当たり前だ!父の仇なんだ!忘れる訳が無いだろう?ゴールデンにシルバード・ブロンドンだ!」
「もしかしたら、追い抜いてるかもしれないし、9の世界───ここに、いるかもしれない」
「そう...だね...」
「もし、今ここにいても怒りを抑えててくれるか?」
「あぁ、わかってる...でも、体が勝手に動いてしまうかも...」
「そう...か...」
俺はこれ以上何もユウヤに言えない。父親の仇を目標に頑張ってここまで生きていたんだ。
「俺は...リューガの補助を受けてここまで来た...だから、{金銀銅}の3人を倒す時は、俺一人───それは無茶だ。せめて、{ユウヤチーム}の4人で戦わせてくれ」
「無理だ」
「なっ...なんで?」
「お前の仇は俺の仇だ。仲間の仇は、俺の仇だ。共に支え合って生きていこうぜ。副リーダー!」
「そう...だな、俺が間違っていた...」
ユウヤは何か落ち着いたようだ。
「ありがとう、リューガ!」
俺は瓦礫の前に立つ。そして───
「『破壊』!」
”バキバキッ”
瓦礫は破壊されて、粉々になった。3の世界の時よりも、格段に精度があがっている。これも、何人か殺したからだろうか。
俺とユウヤは各々の修行を続けた。
***
「なぁ、リンザルと言ったか?」
「あぁ、そうだよ。君は...男だね。確か名前は...あぁ...覚えてないや!ごめんね、女子の名前しか覚えないんだ!あ、ヒヨコの子の名前は覚えたよ。リューガでしょ。リューガ!」
「そうだな...俺の名前は、カゲユキだ...暇そうにしてるリンザルに頼みがある?」
「{暇そうに}と真っ向から言われると少し僕も傷つくよ。でも、名前を忘れていた僕も悪いとは思っているし、君の頼み事に少しばかり協力してあげるよ」
「お前の式神...強いのか?」
「まぁ、それ相応には強いよ?」
「なら、リンザル...お前は?」
「俺も強いよ!一応、剣士もしているからね?」
「思っていたんだが、剣術などはどこで習うんだ?」
「あぁ、昔はあったんだよ。壁が出来るよりも前の話。その時は、剣術道場があったんだ」
「そう...なのか...」
「僕の式神がどうかしたのかい?」
「お前の式神と戦わせてくれ」
「あー...まぁ、いいよ?」
「なら、早く出してくれ。猶予は無いんだ」
「そんなに、焦らなくてもいいじゃん?」
「もう、3週間も経っているんだ。焦る必要も出てくる」
「そうかぁ、後1ヶ月後には対抗集団として攻めに行くんだね?」
「そういうことだ...」
「しょうがない...ちょっと待ってねぇ!」
リンザルはいきなり陰茎を露出させる。
「お、おい待て!なんで急に脱ぐんだ!」
「僕の体液が式神になるからだよ。怪我をすればするほど式神は増えていく。でも、怪我なんかしなくたって、放尿すればいつだって式神は作り出せるのさ」
”ジョロジョロジョロ”
「お前のチームにはショウガとシンドークがいる。2人のことはしっかり考えて行動しろよ?」
「あぁ、わかってるよ。貞淑に行動するさ。さて、式神が作れるようになった」
先程、体外に排出したションベンが、式神に変化する。2mはある大きな鷲だ。
「ほら、ワインダーみたいだろ?」
両羽に刃物はついていなかった。ただ、大きな鷲だ。ただ、体に複雑な紋様が書かれてある。
「それじゃ、いざ尋常に...」
「「勝負!」」
 




