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第1025話 主人公vs運命

 

 敵は1人。しかし、最強。

 俺は、ゆっくりと息を吐く。怒りはあるが、相手は魔女の生き残り。この世で唯1人の魔女だ。

 世界から恐れられ、神話の一部として切り取られている魔女を目の前にしているのだから、冷静をものにしないと一瞬で灰になるだろう。


「──『ミサイルシェル』!」

 そう口にして、俺は口から貝殻を飛ばす。だけどそれは、ステートには当たらずに通り過ぎて行った。

 自らが緊張しているのを感じ、過去最大の敵を倒す方法を思案しながら、浮遊しているその体を動かしてステートの方へと接近する。


「『破壊』ッ!」

 そう口にして、俺はステートめがけて『破壊』を放つけれど、俺の狙いが見ているか、体を少し捻るだけで俺の攻撃は回避される。俺はそのまま、空中で小回りを利かせて旋回し、再度ステートの方に迫り、『破壊』を行使する。


 だけど、その後ろからの攻撃も完全に見透かされていて、それすらも回避されてしまった。


「──クソ、全部避けられるッ!」

 最初の『ミサイルシェル』はともかく、『破壊』はしっかり狙っているし、これまでで最も使ってきた能力だ。それがここまで避けられるとは思っていなかった。


 ──と、少し悲観に暮れそうになっていたところに、ステートがその口を開く。


「安心しろ、安心しろよリューガ。さっきの攻撃は皆、私じゃなければ当たっていただろう。特に2回目の方は」

 ステートはそう口にして、首を俺の方へと向けてどこか苛立つ笑みを浮かべている。敵対しているからこそ憎く見えるのかもしれない。


「──どういうことだよ」

 そう問うてから、俺はステートの言いたいことが何かわかったような気がした。そう、彼が言いたいのは──


「私は運命の魔女だ。だから、見えるんだよ。君がどこにどういう攻撃を放とうとしているのかが」

「──」

 俺は、そのカミングアウトに思わず絶句してしまう。いや、もちろんわかってはいた。


「君は私にいくら攻撃しても無駄なんだ。諦めたらどうだい?」

「──『破壊』!」


 "バキバキッ"


「──ッ!」

 俺の『破壊』が成功した音がして、ステートの着ているワンピースの端が『破壊』される。

 ステートも回避の行動を取ったが、どうやら回避が間に合わないようだった。


 ──もしかしたら、こうして攻撃ができるかもしれないという希望を持たせようとしているだけかもしれない。

 その驚いた顔も、全ては運命によって為された岐津善の奇跡なのかもしれない。


 ──が、攻撃が通らないわけじゃない。

 全ての攻撃が回避されていしまうのなら、回避できないほどの『破壊』を放ってしまえばいい──。


「──最終決戦だ。ファンファーレの雨は必要だろうよ」

 俺の言葉に返事をすることも驚くこともしないステートはきっと、未来を見ている。だが、それがなんだ。


 いくら未来が見えていてもそれに対処するだけの力が無ければ、俺の勝ちだ。


「『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!」


 連なる、『破壊』が連なる。

 目の前のステートを殺すために、何十何百何千と『破壊』を放つ俺だが、全ての攻撃がいとも簡単に避けられていく。攻撃し続けるのと回避し続けるのじゃいたちごっこだ。


「『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破壊』!『破か──ッ!」

 その時、俺の動きがピタリと止まり『破壊』が放てなくなる。体が重くなり、浮遊の状態は保たれてるのにその場で潰されるかのような錯覚を覚えた。


「これは……」

「君は主人公を気取っていたのだが、それは全てこっちで用意していた偶像だったのさ」

「それってどういう──」

「君が攻撃するしないも、君が意思として考えていることも全て、私が掌握している。君がそうやって思考を回し続けているのも、私の運命に定められてのことだ」


 ──全ての行動は、ステートの掌の上だった。

 そう考えると、恐ろしくって声が出なくなる。きっと、声が出ないこれもステートに定められた運命なのかもしれない──だなんて考えてしまうのも、ステートに定められた運命なのかもしれない──だなんて考えてしまうのも……。


「君は私の作り出した物語の主人公かもしれないが、この世界の主人公じゃない。この主人公は、魔女そのものだ」

「そ……んな」

「端役だとは言わない。私が君をここまで連れてきたのだ、君というヒヨコ──いや、人間を評価している。正当に、な」


 体が動かない。そのまま、ステートの右手がこちらに伸ばされる。

『破壊』すれば、勝てる。勝てるのに、放てない。まるでここが死ぬのが定められた運命だと言わんばかりに、その腕に飲み込まれて──、


「──2の舞 冷涼」


 剣閃。

 伸ばされた右腕が地に落ち、俺の死は免れる。

 俺とステートの戦いに乱入してきたのは──


「──『チーム一鶴』、全員で相手だ」

「──皆!」


 激闘の第二戦。

『チーム一鶴』vs運命の魔女の勝負が開始する。

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