第98話 さよならだ
「俺...お前に負ける!絶対負ける!お前に負けて、死んでリカはお前に取られちまう!」
ワッケラカエン───否、シヤテイは何も言わない。
「勝負は始めないよ!」
俺はシヤテイに飛んでいく。
「破壊を行うなぁ!」
”バキバキッ”
シヤテイの四肢を破壊する。
「シヤテイ!永遠に戦おう!これから何度も何度も戦おう!」
シヤテイは何も返事をしない。
「シヤテイ!お前は俺に勝って生きるんだ!兄のところには行けない!」
「兄...そうだ!兄です!私は兄を愛している!兄を!兄を!兄を!」
「俺だって...リカを愛しているよ...」
俺はつい口走ってしまう。これも「否定」されてしまうのだろうか。
───否、どれだけ「否定」されようが、俺はリカを愛し続けてやる。
「リカ!俺はお前を...」
俺は空中で大きく旋回する。
「愛している!」
そして、シヤテイの心臓に一直線に飛び込む。
「破壊するなぁぁぁぁぁ!」
”バキバキバキッ”
「リューガ...さん...」
シヤテイの心臓は破壊される。シヤテイは遺言であろう言葉を口にする。流石は吸血鬼だ。
「私は...兄のところに...行け...ますか?」
「あぁ!連れてってやんねぇよ!」
『否定者』で否定できないものは過去の事実と...
真実の愛
だ。
否定者・・・全てを否定する。本人の意思に関係なく発動する。過去と真実の愛は変えられない。
「そう...ですか...残念です...」
シヤテイは口角を上げて微笑む。俺は呆気なくシヤテイに勝利した。
「勝った...か...」
「リューガさん!」
「うおっ!」
俺はリカにハグされる。ヒヨコの姿なので、潰されそうだ。リカは泣いていた。
「リューガさん!怖かったです!寂しかったです!」
「リカ...ごめんな...農園の人を悪く言って...」
「私も怒りすぎました!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「なぁ...リカ?」
「なんですか?」
「{チーム一鶴}には、お前がいないと駄目だ...戻ってきてくれるか?」
リカは泣きながらキョトンとした顔でこちらを見る。そして、すぐに笑顔になって...
「はい!」
リカは笑顔で返事をした。
「それじゃ...行きますか?」
「ちょっと待て...」
「は、はい...」
俺はシヤテイの前に立つ。
「シヤテイ...さよならだ!」
俺は笑って呟く。友達との別れは、泣いていては駄目だ。笑わなければ。
「リカ...行こうぜ!」
「他のみんなは?」
「先に8の世界に行ってる!」
「わかりました!すぐアイキーを取りに行きましょう!」
俺たちは宮殿の外に出た。
***
「ここは...」
「シヤテイ!」
「なっ...」
シヤテイが振り返ると、そこにはワッケラカエンがいた。
「兄...さん?兄さんなんだね?」
「はい!私はキュラスシタ...否、ジャックです!」
「兄さん!兄さん!」
シヤテイはジャックに抱きつく。
「シヤテイ...行きますよ?」
「行くって...どこに?」
「怖いところ...とだけ言っておきましょうかねぇ?」
「酷いよ!兄さん!私にももっと教えてよ!」
「行けばわかりますよ!さぁさぁ!早く行きましょう!」
シヤテイとジャックは歩いていく。800年経っても兄弟の愛は廃れていなかった。
「真実の愛」と言うものは誰にも否定できなかった。
***
俺たちはアイキーを手に入れて、時空の結界に移動する。
「リューガさん...どうして、私を助けてくれたんですか?」
「あ?そんなの決まってるだろ?お前が大切だからだよ!」
「本当ですか?」
「あぁ!当たり前だ!男に二言はねぇ!」
「リューガさん...」
「なんだ?」
「ありがとう、ございます!」
「感謝なんて、しなくていいよ!仲間だろ?それに、お前がいないと{チーム一鶴}は成り立たないんだ!」
リカはまた泣きそうな目をする。
「ちょ、リカ?」
「あ、ごめんなさい...嬉しくて...嬉しくて...」
リカは頬を赤らめる。俺たちは時空の結界に到着した。
「それじゃ...はめてくれ!」
「はい!」
リカは時空の結界にアイキーをはめる。そして、俺たちは時空の結界に入っていった。
***
「死んだのか...シヤテイ...」
サルガタナスはシヤテイの死体の前で足を開いてしゃがみ込む。何も履いていないので開いた股が丸見えである。
「なぁ...シヤテイ...」
サルガタナスは死体に語りかける。
「お前も...」
泣きそうな目をしながら。
「死んでしまうのか?妾をおいて...」
サルガタナスはシヤテイの死体に触れる。すると、死体は液状に溶けて無くなっていった。
「妾は寂しいよ...お前のお陰でこの800年を過ごせていたと言うのに...」
***
シヤテイが死に、メモリーイートモスキートも殺された。
すると、リカとワッケラカエンの記憶は、ショウガ・ユウヤ・トモキ・マユミ・カゲユキの5人に戻っていく。
「あ...あ...」
「嘘じゃ...嘘じゃなかった...」
「リカという女性は...本当に...」
都合良く改変されていた過去ではなく、本当の事実を思い出した。
「リューガ...俺たちが...悪かった...」
ショウガ・ユウヤ・トモキ・マユミ・カゲユキの5人は全裸で檻に囚われていた。
7章終了!!!




