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第97話 否定者

 

 ***


 ショウガは失神したリューガを手の上に乗せて、貧民街に向かう。

「アイキーは確か...この井戸の中に...あった!」

 ショウガはアイキーを手に取り、時空の結界に向かう。貧民は、こちらを見ているが話しかけようとはしてこない。


 そして、時空の結界へ到着する。

「リューガ...リューガには悪いけど...リカは諦めて、次の世界に進もう...な?」

 ショウガは失神したままのリューガに微笑みかける。だが、返事などされるはずなどない。


「それじゃ...行くか...」

 ショウガは時空の結界にアイキーをはめる。そして、時空の結界に一歩ずつ歩みだしていく。

「危ない!ギリギリセーフ!なっ...リューガ?」

 手元にいた失神していたはずのヒヨコは空を浮いてどこかに行ってしまう。

「待て!リューガ...」

 ショウガは反応するのが遅れて、8の世界へと送りこまれてしまった。


 ***


「危ない危ない!キュラスシタが教えてくれなかったら、8の世界に行くところだった...」

 俺は空を浮ける。これを行ったら体に反動が来るはずなのに、今回は来なかった。まだ、浮ける時間が持続しているのか。

「まぁいい...ワッケラカエンのところに向かうか...」


 俺はワッケラカエンの能力にもう気づいていた。


 シヤテイはアナグラム。気づいてしまえば簡単だ。



 shiyatei




 入れ替えると...






 ───hiteisya




 否定者



 ***


『否定者』の能力の範囲がどれほどかは、確定できないのだが、断定はできる。ワッケラカエンが聞き取れ、見ることができた言動は全て能力の対象内だとするのなら、全て辻褄が合う。


 まず、『生物変化』や魔法は使用するのに技名を叫ぶ。能力だと、それが確実に能力を出す方法であり、魔法は詠唱が必要だ。だが、それを「否定」するのであれば、例えばファイヤーを使ったとしよう。魔法の詠唱をすると「ファイヤー(を使え)」という意味合いになる。この世界での基本中の基本だ。これを「否定」すると「ファイヤー(を使うな)」という意味になる。すると、ファイヤーは使えなくなる。『生物変化』や『破壊』も同じだ。口に出すと、使えなくなる。水中では、声が聞きとれなかったので、能力が発動できたのであろう。それに、再戦での時の怪文書のような文も、成り立つ。


 {まず、この部屋に爆弾は仕組まれておらず、爆発することもない。ここには、私とリューガさん以外の誰もおらず、私は窮地に陥る。そのままリューガさんは私に勝利して、リカを連れて帰り、仲間と楽しい日々を暮らしていく。}


 と、言っていた。あの爆発は爆弾だとすれば辻褄が合うし、あの部屋にはサルガタナスという女もいた。ワッケラカエンが窮地に陥ることなど無かったし、俺はワッケラカエンには勝てずリカを連れ帰れずに楽しい日々など送れていない。


 {そうですか...私は...多分、あなたに負けます...死にます...でも...あなたに我が兄の仇の一撃だけでも...食らわせたい!}


 最初の最初に、ワッケラカエンはこんなことも言っていた。「否定」すると、あなたに勝って生きている。仇を何度も食らわせたい。全て事実だ。俺は何度も殴られた。あの屈辱は忘れられない。


 なら、リカはどうだろうか。リカがワッケラカエンに付いて行くのにも「否定」があるのなら。

「あぁぁぁ...」

 俺の口から悲鳴が溢れる。この能力は最低だ。人の心を貪り食らう最低な能力だ。


 この「否定者」は何もかもを否定する能力だ。なら、自分を悪くして、他人に優しくすればするほど、その逆、自分を良くするという能力。見掛け倒しなのだ。周りからは非常に謙遜するような謙虚な人物に見られるが、実際は違うのだ。強欲で傲慢で貪欲で自己中心的な性格の持ち主なのだ。人を騙す愚かな能力なのだ。


「ワッケラカエン...許さねぇよ...」

 きっと、ワッケラカエンはリカに「早く味方のところに帰りなさい」とでも言ったのだろう。すると、リカは俺たちの元に帰れなくなる。優しい甘い言葉に聞こえるが、それは罠なのだ。


「ワッケラカエン...俺はお前のせいでよ...ユウヤを、トモキを、マユミを、カゲユキを失ったんだよ...友情を失ったんだよ...信頼を失ったんだよ...お前は許されねぇ...許されていいはずがねぇ...お前は悪だよ...月光徒よりも悪だよ...」

 俺はブツブツと喋りながら、ワッケラカエンを探す。どこの宮殿にいるだろうか。


 爆発した屋敷から、そう遠くはないはずだ。ワッケラカエンに時間を与えるな。

「ここだ...」

 俺は適当に決めた宮殿に入る。この屋敷からは、「悪」のオーラが滲み出ていた。

 探すのは、地下室。ワッケラカエンは多分、陽光が苦手だ。


 ”バンッ”


 俺は扉を『破壊』で破る。

「また、会いましたね...数時間ぶりですね?」

「あぁ...そうだな...これから何度も何度も会うんだろうな...」

「そうですか...」

「お前...シヤテイだろ?」

「バレてるんですか...はぁ、しょうがないですねぇ...」

 ワッケラカエンはゆっくりと立ち上がる。リカは泣きそうな目でこちらを見ていた。


「私はシヤテイ...『否定者』の能力を持っております!」

「全てを否定するんだろ?」

「否、過去は否定できません...それともう1つ...いや、言わなくてもいいでしょう!」


 否定者・・・全てを否定する。本人の意思に関係なく発動する。過去と「????」は変えられない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『酸化』が仇になるとは…… ワッケラカエン、持ってますね。 そして奴との邂逅、憎い演出です。 更にシヤテイのアナグラムは……。 成る程、そういう事か!! この謎が明かされる瞬間がとても面白…
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