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第1009話 覚醒

 

「───がはッ!」

「バトラズッ!」


 ルキフゲ=ロフォカレの一撃により、後方に吹き飛んでいく鬼神(オニ)の血を覚醒させたバトラズを横目に、モンガはルキフゲ=ロフォカレに攻撃を加えるために刀を振るう。


 ───あまりに唐突な戦闘開始であったが、バトラズが攻撃されたのを見てモンガは咄嗟に動き出す。


 鞘に納められている刀を、超スピードで引き抜きそのままルキフゲ=ロフォカレの首に吸い込まれるように動き───


「───よっと」

 攻撃されることを呼んでいたかと言わんばかりに、その場で大きくのけぞってその刀を回避するルキフゲ=ロフォカレ。モンガは自らの振るう剣先を目で追うけれども、すぐに回避行動を取ったルキフゲ=ロフォカレの方へ向き、左手を沿わすように持ち振られている最中の刀の方向を転換させる。


 刀の軌道は、まるで「7」を描くかのように、大きく曲がってルキフゲ=ロフォカレのことを斬り伏せようと画策するけれども、当のルキフゲ=ロフォカレはヒョイと背中の後ろから刀を飛び出させて、奇妙な軌道で進む刀を受け止める。


 キンッと、金属と金属がぶつかる軽快な音が響き渡ると同時、モンガは身の毛がよだつような感覚を覚えたために、咄嗟に後方に飛んでいく。


 もし一瞬判断が遅ければ、モンガの体にはルキフゲ=ロフォカレの刀が突き刺さっていたことになるだろう。

 飛来してくるモンガの刀のガードを終えたルキフゲ=ロフォカレの刀は、そのまま背中を通してモンガの体を狙ったのだ。モンガは、ルキフゲ=ロフォカレの左半身を正面に立っていたので攻撃されることは珍しい───と考えていたが、目の前にいるのは通常の相手ではない。


 だからこそ、そんな平々凡々な考えはすぐに棄てて正解だった。

 その既成概念を捨てることに失敗していたら、今頃モンガのお腹からピンクの肉が見えていただろう。


「──随分と、トリッキーな動きを」

「いやいや、鍛えればアナタにもできますよ」

 そのまま、サイドステップの要領でモンガの方へ飛んでくるルキフゲ=ロフォカレ。

 体を90度回転させて、モンガと面と向かって戦うことになり、ただでさえ自由な動きができるルキフゲ=ロフォカレの動きがさらに多様になる。


「───厄介だな」

 首筋を狙って突き進んでくる突きをしっかりと両手で刀を握って弾いたモンガは、そのまま刀を持つルキフゲ=ロフォカレの右手を狙う。

 首を狙ってもガードされてしまうが、刀を持つ右手と言うのは思いのほか守りにくい。


 しかも、相手は自分が最強であることを信じて疑わない魔神だ。服を着ていないので、何か着物が邪魔になることも無い。攻撃を弾いた今が最大のチャンス───


「───じゃない!」

 咄嗟、モンガは自分の体の方に刀を引き寄せる。すると、ズシンと刀から明らかな重みが伝わってきて、そのまま後方に吹き飛ばされそうになる。鬼神(オニ)の血を覚醒させていなければ、確実に吹き飛んでいただろう。それほどまでに重い一撃が、そこにはあった。


「───拙者の攻撃を一度でも防ぐとは!」

 これまで、何度かモンガは攻撃を防いできていたはずだが、ルキフゲ=ロフォカレは「一度でも」と口にする。ということは、これまで何度も命を奪り獲られると思った攻撃は、全て攻撃ではないそれ以下のものだったのだ。


 その強さに恐れると同時にモンガは、なんとかしてでも一撃を食らわせてそのプライドをへし折ってやりたいとも思った。

 そんなことを思っていると同時に、今度はモンガの右手側から攻撃が飛んでくるので急いでそちらの方に刀を回してその重い攻撃を受け止めようと試みる。

 先程の───いや、先程以上の攻撃が飛んできてもいいように、先程よりも強めに地面を踏みその衝撃に耐えるが───


「───ッ!」

 その重みは、いつまで待ってもやってこない。そのはずだ。


 だって、ルキフゲ=ロフォカレが仕掛けたその攻撃はブラフ。モンガの刀にルキフゲ=ロフォカレの刀は当たらず、そのまま反対側からUターンしてモンガの方へと吸い込まれるように迫ってきていたのだ。


 モンガがその肌で感じるのは、自分がどう足掻いても逃れられない死。

 その刀をなんとか左に持って行ってもガードは成功しないだろうし、今からルキフゲ=ロフォカレのことを攻撃しようとしてももう遅い。目の前の最凶剣客を倒すことはできない───。


「うおらぁぁぁ!」

 咆哮に近い声を上げて、その剣を大きく振るったのは、先程吹き飛ばされたバトラズであった。

 バトラズが吹き飛ばされてから、まだ1分どころか30秒と経っていないかもしれないが、すぐに戦線に復帰してくれたようである。


 バトラズは、タックルでルキフゲ=ロフォカレをモンガから見て数メートル右側に吹き飛ばしてくれたので、なんとか回避に成功する。


「バトラズ、助かった」

「よかったぜ。俺もまだ鬼神(オニ)の覚醒に体が慣れてないから吹き飛ばせてない可能性もあった」


 そう口にして、鬼神(オニ)である2人は肩を並べてルキフゲ=ロフォカレに刀を向ける。

 即座に立ち上がり2人の方を向いたルキフゲ=ロフォカレに向けて、バトラズ達は動き出したのだった。

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