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第995話 開幕

Dead or chickenは本日で3周年です!

ありがとうございます!!!

 

 ───作戦当日。


「遂にか...」

 あまり眠れなかったが、眠くはない。

 今日と言う日を待ち望んでいたと同時、今日と言う日が一生来なければいい───そんな矛盾を孕んだ日が今日だった。


 今日行われるのは、月光徒との最終決戦。

 俺達の味方には『ゴエティア』もおり、月光徒を解体するために俺達は共闘することになっているのだ。


『ゴエティア』の幹部であるマルバス───俺達と接する時はクロエ・クレンザーとい偽名を使用していた彼が、『チーム一鶴』と『ゴエティア』の橋渡しとして動いてくれたから、今日と言う日の共闘が実現した。

 俺は、月光徒が今日で滅びると考えれば嬉しかったけれども、それと同時に誰かが死んでしまうんじゃないか───という恐怖に駆られていた。


 これまで、『チーム一鶴』は多くの月光徒を討伐してきたが、それと同時に月光徒によって多くの被害が生み出されていた。

 犬猿の仲である月光徒の企みは予測不能で、俺達はそれに何度も苦しめられると同時に、何度も九死に一生を得ることになった。


 月光徒は、俺達を馬鹿にしているのか利敵行為と取れるような行為を何度だって行ってきたのだ。

 例えば、9の世界では俺達全員にボスであるステート自身が回復魔法をかけてくれたし、それこそチューバがほとんどを攫った時だって「ゲーム」などと口にして、捕虜にするだけで命は奪わなかった。それに、その捕虜となった人たちもカールが解放の一助となってくれたらしい。


 生かすのか殺すのか本当に予測不能な月光徒の行動に、これまで何度も右往左往させられたけれどもそれも今日で最後だ。

 月光徒が全滅か、俺達が全滅か。最善の選択肢は全社で、最悪の選択肢が後者だった。


 そんな『チーム一鶴』・『ゴエティア』連合軍vs月光徒の最終決戦が本日行われようとしている。


「リューガ、今日は眠れたか?」

 俺達は、チェックアウトしたけれど宿の厚意で部屋に残らせてもらえている。宿に月光徒を潰すことは説明していないが、「少し待ち合わせの場を探してて」と良さげな場所を質問したら、「チェックアウトした後でも正午までは部屋を使用してもらって構いませんよ」と言ってくれたためその言葉に甘えて宿を待ち合わせ場所としていた。


 今は俺達の部屋に全員が集まっており、『ゴエティア』の幹部であり俺達の世界を跨いだ移動手段となってくれるクロエの到着を今か今かと待っていたのだ。

 そんな中で、カゲユキが俺にそんな質問をしてきた。


「───いや、眠れてない。だけど眠くはない。目も頭も冴えきっているよ」

「そうか...」

「逆にカゲユキは眠れたのか?」

「俺もリューガと一緒だ。頭が冴えているところも含めてな」

 色々と脳から物質が出ているから最終決戦の最中、眠ってしまう───だなんてことはなさそうだから、多少の睡眠不足は許容範囲だろう。

 遠足の前日に興奮で眠れなかった───というやつに多少の憂慮が混ざっていると思ってくれればいい。


「私も眠れなかったわ」

「この状況で眠れる人の方が難しいだろ。俺だって眠れてない」

「嘘つけ、オルバは爆睡だっただろ」

「んな!?」

 本人には眠れてない自覚だったのだが、どうやらオルバはしっかり眠っていたらしい。


「ママは眠れまちたか?」

「ううん。セイジは?」

「ぐっすりでちた。死地に行くのは何度もありまちたからね」

 セイジは、月光徒との最終決戦と聴いても緊張しないようだった。赤ちゃん言葉があるからどこか頼りないけれど、戦力として大人としても成熟しきっている人物だ。


「なんだかセイジらしいわね。いいところだと思うわ」

「本当でちゅか!?やったー、ママに褒められまちたー!」

 前言撤回、セイジは大人として見ると成熟していなかったかもしれない。


「───と、皆緊張しているところだろう。だけどきっと、月光徒との最終決戦は始まっちまったら勝負が始まるのも終わるのも一瞬だ。最後まで気を抜かずに行こう。皆、それぞれの本気が出せるようにな」

 俺は、『チーム一鶴』のリーダーとしてそんなことを皆に言う。

 俺のその言葉を聴くと、皆頷いてそれぞれの返事をしてくれた。皆、俺よりもしっかりしているし大丈夫だ。


 ───と、その時。


「皆さま、お待たせしました」

 そんな言葉と同時に、部屋の中心に姿を現したのは1人の青髪の青年───クロエであった。

 黒の礼服に身を包んだその青髪は、優しい笑みを浮かべたまま地面に着地して部屋を見回す。


「皆さま、お集りのようですね。準備はバッチリと」

「当たり前だ。こっちは緊張で心臓が張り裂けそうだ」

「『チーム一鶴』にとって、大切な日になるはずだもんな」

「そうですか。では、今日と言う日が何かの記念日になればいいですね」

「月光徒壊滅記念日とかか?縁起悪いぜ...」


 俺はそう口にして、嘴から舌を出す。月光徒に完全勝利した記念日なら演技もいいだろうが、月光徒壊滅と言われると、どこかマイナスなイメージを持ってしまう。


「まぁ、これから行おうとしていることに関してなんの間違いもないんだけどよ...」

 俺は、そう付け加えた。


「さて、与太話はさておいて。早速向かいますよ。月光徒のいる小さな世界へ」

「あぁ、準備はできてる」

「では、行きます。3・2・1」


 クロエのカウントダウンが終わると、俺達は宿の部屋から転移する。

 移動したのは、毒々しい色をした空を割るように奇怪な建物───摩天楼と表現するのが適している建物がある世界だった。


「ここが...」

「月光徒の最後のアジトです」


 ───俺達は、最終決戦の場にやってきた。

 ───『チーム一鶴』と月光徒の愛憎と因縁が渦巻く最終決戦が今、開幕する。

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