第95話 銀の弾丸
「───ッ!」
生まれたままの姿にマントと・靴下・ガーターベルトだけという大胆───否、破廉恥な格好をしている女性を見て俺は悶絶してしまう。胸の大きさもショウガとあまり変わらないだろう。身長は、リカよりも少し小さいだろうか。なんてはしたない女なんだ。その悩殺ボディを露わにして生活しやがって。
「ベストタイミングでしたね...」
「貴様も少し周りを見ろ!貴様が死んだら妾の性処理は誰が行うんだ!」
「あぁ...そっちですか...」
今気づいたが、サルガタナスも少し浮いている。背中に蝶のような羽が付いているのだ。
「敵が一人増えようが関係ねぇ!お前も月光徒か?」
「何を言っている?そんな愚なチームに所属などしておらぬ!妾が他人に縛られるなんて思うな!この愚か者が!」
「じゃあ...何者なんだよ!」
「私の幼なじみ...といったところでしょうか...魔神のサルガタナス...ですねぇ?」
俺は地球での知識を漁る。サルガタナス。サルガタナス。見つけた。
えっと、確か透明化や自宅で起こってることを見せたり...人の記憶を消したり...
「サルガタナス...お前だったのかよ...」
俺は気づく。こいつがリカの記憶を消した張本人だ。
「妾の名前を気安く呼ぶな!貴様の名を述べよ!」
「俺の名前は...リューガ...{チーム一鶴}のリーダーだ!」
「リューガか...覚えておくかもな...まぁ、すぐに忘れてしまいそうな名前だが!」
「サルガタナス...みんなの記憶を戻してくれ!」
「みんなの記憶?何を言っているんだ?取ったのは妾ではない!こいつだ!」
サルガタナスはワッケラカエンを指差す。
「妾のメモリーイートモスキートを使ったのだ!」
やはり、虫が能力を取っていた。全ての元凶はワッケラカエン、お前だったのか。
***
どうして、兄さんは壊れてしまったのだろうか。
わからない。わからないからこそ、怖い。その恐怖がワッケラカエンを襲う。
その恐怖は死よりも恐ろしい。
どうして、どうして、どうして───
私の愛する兄さんは、あんなにも壊れてしまったのだろうか。
***
「妾は戦いを見ていたい...が!帰ることにしよう!」
ワッケラカエンは何も返事をしない。
「逃がすかよ!」
「リューガ...だったか?お前はこいつを倒せるだろう...」
サルガタナスはニヤリと笑って消えていく。
「さて、一騎打ちに戻りましたね?」
「はは...まさかな...」
”パンッ”
「なっ...」
”バタッ”
ワッケラカエンはその場に仰向けに倒れる。ワッケラカエンの心臓を的確に銀の弾丸は捉えていた。
「リック!ナイスだ!」
「俺にかかればこんなもん楽勝よ!」
「ぎ...銀の...銃...弾...」
ワッケラカエンがその場で藻掻いている。
「お前の負けだよ...ワッケラカエン...」
”ガシッ”
「なっ!」
俺はワッケラカエンに鷲掴みされる。
「これが...純正な銀だったら私は死んでいた!」
ワッケラカエンの傷口から赤く染まった銃弾が取り出される。銃弾にこびりついた銃弾は拭き取られる。
銀の弾丸の色は銀...ではなく「黒」だ。
「黒...だと?」
「これは純銀なんかじゃぁない...これは酸化銀だ!」
「酸化銀...どうして!」
「我が買ったのは銀の弾だったはずだぞ!リック!」
「あ...あ...なんで...なんでだよ...」
リックは青ざめている。俺は身動きが取れない。早くここから逃げなければ。
「なんで...俺の『酸化』が発動しているんだよ...」
リックは3の世界から来ていると行っていた。3の世界ではガンマンは鍛えてなどいない。リックは3の世界で『酸化』を手に入れていた。そして、5の世界で銃の撃ち方を学んだのだ。
リックは運命と呼ばれる程の手違いで『酸化』を発動してしまい、銀の弾丸を酸化銀に変更してしまっていたのだ。
「リューガ!」
”パンッ”
”パンッ”
”パンッ”
弾は最大リボルバーに6発込められる。まず、ガードマンを殺すのに1発。そして、奇襲で1発。ヤケクソの連投で3発を使った。残り1発。
「リック!何で!」
「見えたよ...どこを狙えばいいか...」
ヤケクソで撃った3発もしっかりワッケラカエンに当たっていた。だが、効果はない。
「ショウガさん...俺はアイツの手を狙う...それでリューガさんを解放するよ...料金は半分も取らない...それで勘弁してくれ...」
「あぁ!それでもいい!だから、早く!」
リックは深呼吸をする。ワッケラカエンは余裕そうな雰囲気でリックの方を見ている。実際、余裕なのだろう。銃弾1発。しかも酸化銀の弾だ。脆く、効果もない。
「俺の名は...リック!リック=ガンドルーだ!」
「私の名前はワッケラカエン...偽名ですけど...ね?」
リックはワッケラカエンを見ている。そして、
”パンッ”
「遅っ!」
リックの舌打ちが聞こえる。弾はワッケラカエンに微かに外れ後ろの壁にぶち当たる。
「リューガさん...ありがとうございました...私の本当の名前はシヤテイですよ!」
”ドォォォォォォォォォォォォォォォン”
サルガタナス、足開いてしゃがんだらいい(何がとは言わない)




