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第994話 決戦前夜

 

 ───他方、こちらは月光徒の最後のアジト。


 摩天楼───と表現するのが正しいその奇怪な建物の最上階にいるのは2人の人物。

 対談するような形で、机を挟んだ形で、言葉を交わすのは月光徒の最高位と、2番手。


「───送り込んだオイゲンとリューガの全員が敗北しました。これ以上の時間稼ぎは...」

「必要ない。もう、必要ないよ。時間稼ぎは」

「本当ですか?」


 チューバの今後の話を遮るのは、長であるステート。


「もう時間稼ぎは必要ない。『チーム一鶴』の方へ使者を送り込み死者を殖やすのも必要ない」

「それってつまり...」

「来る。『チーム一鶴』が、このアジトに」

「───ッ!」


 ステートの発言に、喉を震わせて驚きを隠せないチューバ。


「それじゃあ、すぐにでも!」

「あぁ、準備が必要だ。このアジトが崩されてしまえば、私の居場所が無くなってしまうからな」

 そう口にして、笑みを浮かべたステート。その笑みに含まれるのが、悪意か奇策かはチューバにはわからない。

 だが、ステートの追い求める「魔女復活」に悪く動くことはないだろう。


 前にステートはチューバに対し、『チーム一鶴』は魔女復活の契機だと説明していた。

 運命の魔女であるステートにとって、『チーム一鶴』の行動が魔女復活に役立つことを理解しているのだろう。だから彼は、魔女復活に向けて行動するのをやめないし、その歩みを止めない。


 きっと、『チーム一鶴』がアジトに侵攻してくるのも魔女復活の1ピースに過ぎないのだ。

 それは即ち、これまで『チーム一鶴』によって作り出された犠牲が、幹部であるヴィオラやマフィンの死亡が、親愛なる部下の殺害が、全て予定調和だとされるけれども、チューバはそれに怒りを見せない。

 怒れるはずもなかった。何せ、彼も魔女に憑りつかれた狂人。最古の魔女の寵愛を求める1人だ。


「───先に、チューバには話しておこう。これからのプロットを」

「本当ですか?」

「あぁ、本当だ。もうじき、『チーム一鶴』が私達のアジトに飛び込んでくるだろう。それは、私達のように転移の能力を使用してくるからどこになるか具体的な場所まではわからない。だけど、確実に侵入してくる」

「そうですか...」


「あぁ、『ゴエティア』の幹部もそこには映っているから、きっと『ゴエティア』と協力関係を結んだのだろう。だが君は、『チーム一鶴』の相手を任せたい」

「了解しました。では、『ゴエティア』の相手は誰に?」

「『ゴエティア』の相手は私の直属の部下にやらせる。あ、もちろんカールは『付加価値(アディショナルメンツ)』に属しているからカールだけは君の指揮下で構わない。まぁ、彼が君の指揮に素直に従ってくれるかは不明だけどな」

「カールは私の指揮をキチンと聴いてくれるいい部下ですよ」

「そうか。なら、まだ猫を被っているな」


 そんなことを口にして、またも笑みを浮かべるステート。彼の言動は、掴みどころがなく利敵行為と捉えられる部分も多いけれど、チューバが直接出した指示に逆らうことはなかったし、カールの直属の上司であるステートから何が秘密裏に伝えられていたものがあったかもしれないから、チューバは何も咎めることはなかった。


「それで、その続きのプロットは?」

「うん、そうだな。続きの話をしよう。紆余曲折を経て、『チーム一鶴』のリューガが私の元に来る。そこで色々と言葉を交わすうちに、リューガはその正義感から激昂し、私に勝負を挑んでくる。そこで、だ。その時に魔女復活の全てが揃う。後はもう説明は必要ないだろう」

 魔女復活は、そのレベルまで現実味を帯び来ていた。


『ゴエティア』が不老不死を実現させて、『チーム一鶴』が月光徒壊滅に過去一近付いてきている現状で、月光徒もそれと同じく魔女復活がすぐそこまでやってきていたのだ。


「安心しろ。『チーム一鶴』という障害は私達に魔女復活の希望を与えてくれる。乗り越えようじゃないか、魔女のいる世界と言うものを」

 そう口にして足を組むステート。その表情に、先程のような笑顔はなく真剣な眼差しでそう口にした。


「はい。『チーム一鶴』から契機だけを奪い取り、魔女復活を実行に移しましょう」

 そう口にして、チューバは大きく頷いた。


「───さぁ。そのためにもまずは下準備だ。準備は万端か?」

「えぇ、問題ありません。サルガタナスの報告によると、魔神の中で最後の一人の友人であるルキフゲ=ロフォカレを見つけ出すことにも成功し、このアジトに引き連れて来てくれたようです」

「そうか。では、その2人のこともチューバには任せる。私が指揮をするのは、最低限の私の部下だけで一向にかまわない。チューバ、君はキーパーソンだ。私は、並々ならぬ期待を君にしているからね。月光徒としての最後になるだろう。頑張ってくれたまえ」

「はい」


 ───既に、決戦は明日に迫っていた。


 良くも悪くも、明日の1日で全てが決定することになるだろう。

 運命を味方につけた月光徒と、これまで主人公として活躍を見せ続けていた『チーム一鶴』。そのどちらに勝利の女神が微笑むのかは現時点では不明である。

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