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第986話 ヒヨコとジャッカル

 

 イブとステラのカップルの目の前に現れたのは、タッグを組んだ2匹のリューガ。

 イブは過去に、月光徒に操られたリューガと接触している為その危険性を知っていたし、ステラもその鋭い嗅覚で、『チーム一鶴』のリューガとは別の匂いがすることを察し、偽物だと判断した。


「唸れ、世界よ」

 そんな言葉と同時に、イブは大地の魔法を行使してタコの足のように太い触手のような形をした大地を動かしながら、2匹のリューガを捕まえようと画策するけれども、俊敏な動きでリューガ達はそれを回避する。


「残念、こんな鈍い動きじゃオレを捕まえらんねぇよ」

「地に足がついてないから面倒だな...じゃあ、これならどうだ」

 その言葉と同時、リューガの浮かぶ場所から半径3mくらいの地面が浮き上がり、ドーム状になるようにしてリューガのことを包み込む。


「───逃げ場を作らねぇ作戦かッ!」

「当たり前だ。捕まえてしまえばこっちのものだからな」

 容赦のない圧殺を試みるイブだが、月光徒のリューガだってそこまで倒せるような存在ではない。


「「『破壊』ッ!」」

 2匹は、息の合わせたコンビネーションで『破壊』を使用し、分厚い大地に穴をあけて出てくる。が───


「今がチャンスです!」

 その言葉と同時、自らに狂乱の魔法をかけたステラが、強化された肉体で2匹のリューガを潰しに動く。


「クソッ!」

 2匹のリューガは離散して行くが、ステラは二匹を追わない。片方のリューガだけを集中的に狙ったのだ。


「確実に潰していくつもりか!」

 咄嗟、狙われていないリューガがもう一方の片割れを支援しようとするが、それを突き飛ばすように、下から飛び出てくるイブの大地。


「───ッが!」

 地面から弾き出され、宙に飛んでいく感覚を覚えながら、リューガはもう片方を守れないことを理解する。

 この状況では、襲い掛かってくる大地を『破壊』しても救出には間に合わないのだ。


 その間に、もう片方のリューガに襲い掛かるステラが、その鋭利な爪を手のひらサイズのヒヨコのリューガに突き立てる。


「───ッグ!」

 顔に爪を突き立てられ、黄色い体から鮮血がこぼれるリューガは、ステラに対して猛烈ににらみつける。


「リューガさんの見た目で、悪いことをしないでください!リューガさんの偽物さん!」

 そのまま、深くリューガの肉体のステラの爪が食い込む。


「あぁぁぁ!痛い、痛い!!よくも、『ミサイルシェル』!」

「───こんなの、効きませんッ!」


 リューガが一縷の望みとして放った『ミサイルシェル』を、ステラは軽々と叩き落とす。

 だけど、それによりリューガの攻撃を放つ時間ができた。だからこそ、彼は放つ。全身全霊の『破壊』を───


「───ッ!」

 リューガが『破壊』を放ち、一発逆転を夢見たけれども、その直後彼を襲うのは頭痛と吐き気。

 視界が揺れ動き、色が歪んで見える。


「何が...」

「狂乱の魔法を、お裾分けです」

 その言葉と同時、ステラの爪がリューガの体を引き裂き、その残骸が体液をまぶしながらその場に落ちる。


「後1匹!」

「クソッ!殺された!」

 そう口にするのは、空中に弾き飛ばされ、そのまま上空に浮遊したままの月光徒のリューガであった。

 イブとステラの二人を見下ろしながら、片方が死亡したことを理解し、攻撃を試みる。


「───『氷山の一角の一声』!」

 リューガがそう叫ぶことで、大きな氷柱が生まれて、そのまま地上へと降り注ぐ。


「ステラ、こっちに!」

「わかってます!」

 イブが大地の魔法で屋根を作り、ステラを呼び寄せる。一方のステラは、その四肢を行使して何とか攻撃を回避し弾いている。そして、隙を見つけてはイブの方へ急ぎ、地面の屋根に収まった。


「こう隠れられたら、リューガも攻撃はできないだろう...」

 そんなことを口にしながら、エレベーターのように大地が動く。


「───空中戦も可能なのかよッ!」

「大地がある場所ならどこでも戦える。馬鹿にするな」

 そんな言葉と同時、あっという間にリューガと同じ高さまでやってきたイブとステラ。


「───仕方ねぇ、『破壊』ッ!」

 リューガは、腹をくくって戦闘を続行し、イブ達へ───いや、違う。

 イブ達の立つ地面に向けて『破壊』を放つ。


「───ッ!地面が!」

 ステラが、イブにギュッと捕まるけれど、心臓が浮くような落下する感覚はやってこない。


「馬鹿が。大地から生えているんだから、いくら地面を攻撃しても無駄に決まってるだろう?その作戦を実行したければ、お前は29の世界の全ての地面を消すしかない」

「───クソが」


 リューガが、そう口に漏らすけれども、その言葉は戦いにおいてなんの変化も生まない。ただの負け惜しみだ。


「さよなら、リューガの偽物め。もう少し本物に似せる努力をしろ」

 月光徒のリューガだって、元は本物のリューガだ。だけど、イブの知るリューガとは全く違う。


 月光徒のリューガにとっては、どこの世界も生きづらくて閉塞感があったはずだろう。

『チーム一鶴』に、どうしようと勝てない。一体、何が違ったのか───、


 そんな思いは虚しく、イブの操る大地によって、首と胴体が離れる。

 月光徒のリューガは、静かに散った。

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