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第985話 『羅針盤・マシンガン』

 

 1匹のリューガ───月光徒に属しているリューガ1匹に攻撃を加えられて脇腹を怪我したアイラ。

 奇襲による即死に対応できたのは、オルバという存在がいたからに違いない。


 怪我を負ったが致命傷ではないため、オルバとアイラの2人はタッグを組んで月光徒に洗脳されたリューガに立ち向かう。


「アイラの『回収』が上手く使えればいいが、警戒して近づいてくるわけねぇか...」

 そう口にするオルバ。


 アイラの持つ『回収』は、触れた相手を相互に干渉不可能な異空間に相手を送り込むことができる──言い換えれば、触れることさえできれば問答無用で勝利であるということだ。

 実際、そのチートまがいな能力で、『不死』を持つフェニーや、月光徒の三大幹部の1人であるマフィンを異空間に送り込んで戦闘不能にまで追い込んでいた。


 アイラが持っているの『回収』は、超近距離である代わりに一撃必殺の攻撃と言い換えてもいいだろう。

 だが一方で、リューガは多彩な能力を持っている。近付こうとすれば、十八番の『破壊』が容赦なく飛んでくるだろう。

 接近を試みる間に、アイラが『破壊』されてしまったら効力が出ないのだ。


「攻撃手段が剣なら、少しでも触れれば『回収』できたからよかったのに、『破壊』と来ちゃ相性が悪い...」

 しかも、リューガが持っている能力は『破壊』だけではない。近接攻撃としては他にも『冷凍』があるし、遠距離攻撃としては『ミサイルシェル』や『氷山の一角の一声』が存在している。


「しかも、今回はアイラが怪我してるし俊敏には動けなさそうだぜ...」

 アイラが接近して『回収』を発動させるまでの間、オルバが『羅針盤・マシンガン』で守るというのが正攻法になるだろう。


 だが、今回はそれすらも難しい。


「まぁ、とりあえず!『羅針盤・マシンガン』だッ!」

 そう口にして、オルバは指を大きく広げて前に出して、掌から銃弾を真っ直ぐに放つ。


「そんな小手先の技、オレには通用しねぇよ!」

 予想通り、オルバの『羅針盤・マシンガン』を回避されてしまう。『羅針盤・マシンガン』の弱点である、撃っている間は動かせない───という難点が、リューガには完全に露呈しているのだ。


「なら、こっちはどうかな!『羅針盤・マシンガン』!」

 そう口にして、オルバは能力を発動する。その弾の放ち方には少し詰まったかのような違和感が存在しており、弾幕の密度が薄くなったように感じるけれども、そんなミスをカバーするように一つの方向以外にも弾が飛んでいた。


「───マジかよッ!能力の制限をゴリ押しでカバーとはッ!『氷山の一角の一声』」

「それはもう、散々修行で打ち飛ばしたぜッ!」

 リューガは、自らの迫り来る銃弾に対策するように、『氷山の一角の一声』を使用し、銃弾にぶつけるけれども、それよりも多い銃弾がリューガの方へ襲い掛かる。


「───クソ、『リフレクト』!」

「マジかよッ!」

 リューガは、抵抗の意思を捨ててすぐに『リフレクト』を使用する。すると、リューガに吸い込まれるようにして飛んでいく銃弾が、明後日の方向に吹き飛んでいく。


「残念だったな。あまり使いたくなかったが、お前の『羅針盤・マシンガン』は『リフレクト』で完全に対策済みだ」

 リューガは、そう口にする。『リフレクト』は、飛び道具による攻撃を45度の方向にはじき返す───というだけの能力だが、それにより攻撃が通用しない。


「ちょっとオルバ、どうするの!?」

「どうするもこうするもない、逃げるしかねぇだろ!」

 すぐに攻撃が無駄であると判断したオルバは、アイラを抱きかかえた後に逃亡を選択する。


 敗走。

 だが、攻撃が通らない相手なら仕方ない。


「おいおい、オレから逃げられるわけがないだろ?」

 そう口にして、リューガは2人の後を追いかける。何も持たず、悠々自適に空を浮遊するリューガと、アイラを抱えながら逃げるオルバ。どちらが優勢かは、すぐにお分かりだろう。


「『破壊』ッ!」

「───うおらっ!」

 月光徒のリューガが『破壊』を使用し、それを回避しようと動くオルバであったが、前方に転んで、アイラを抱きかかえながら地面を三転する。


「クソ...」

 背中が急激に熱くなり、ドクドクと血が流れているのを感じながら、アイラを抱えてリューガを睨む。


「逃げようなんざ考えないことだな。もうお前は、俺に追い詰められているんだ」

 敵はリューガだ。その実力は重々承知のはずだった。


「───勝てないのかよ...」

 オルバが、そう言葉を漏らす。街の真ん中、オルバ達の戦闘を見て逃げ惑う人々は近付こうとも助けようともしてこない。


「そうだ。お前は勝てない」

 そう口にして、パッとアイラが手を伸ばすだけでは、届かないような距離までリューガは接近して───


「『破壊』ッ!」

「『羅針盤・マシンガン』!」

「『リフレクト』!」


 "バキバキッ"


 リューガの『破壊』と、オルバの『羅針盤・マシンガン』が同時に放たれ、数発の銃弾がリューガの小さな視界を埋め尽くすけれども、もう既に攻撃する場所を決めていたリューガに対しては、何の妨害にもならないし、『リフレクト』がある以上、致命傷どころかかすり傷にもならない───


「『回収』!」

 刹那、リューガの体に柔らかい感触がやってくる。それには、人の温もりが含まれており、ひどく優しい、だけど冷徹なものだった。


「な」

『羅針盤・マシンガン』に放たれた銃弾により、視界の半分以上が埋もれていたリューガは、『回収』を持つアイラに触れられてしまう。そして、リューガは『回収』されて異空間へと投げ出される。


「はは...勝った、か?」

 胸から血を流しながら、オルバはそう口にする。自分に触れるオルバの体が、次第に冷たくなるのを感じ、アイラは脇腹の痛みも忘れて立ち上がり、声を出す。


「誰か、誰かいませんか!誰か!」

 その悲痛な叫び声は、29の世界に虚しく木霊する。その声は誰にも届かない───


「───わけがないだろう」


 そう口にして、リミアを抱えながら屋根の上を飛んでやって来たのは、『チーム一鶴』のツートップであるモンガであった。


「リミア!」

「大丈夫です、間に合います!『羽休め』!」


 ───こうして、なんとかオルバとリミアの2人が死亡することは避けられたのであった。

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