表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/1070

第94話 ワッケラカエン

 

「喧嘩別れ...ですか...」

 ワッケラカエンはこちらを見てニタリと笑う。

「よく..わかりましたね!正解ですよ!」

「やはりな!」

「まぁ、気づいたところで何も...変わらないんですけどね?」

「お前...その名前で...俺らのことを煽ってただろ?」

「それは心外...自分でつけた名前ですよ!」

「じゃあ、なんで俺とリカのことを表したかのような名前になるんだよ!」


 ***


 今から約200年前。

「シヤテイ!次の派遣先が決まったよ!」

「どこですか?」

「2の世界...シャコリアだ!」

「シャコリア...我が兄がいる?」

「あぁ!そうだ!そこに派遣だ!」

「内容は?」

「虐殺だ!」

「虐殺...なんで?」

「たまには休暇もいいだろう!休暇という仕事だ!」

「虐殺だなんて...私はそんなの好きじゃないですよ!殺しが仕事なだけで、趣味ではないんです!」

「そう...なのか...でも、派遣は派遣だ...行って来い...」

「そんな...」

 シヤテイは半強制的にシャコリアに連れてかれた。

「んっんー!シヤテイじゃあないですかぁ?」

「兄...さん?なのか?」

 ジャック───否、キュラスシタはピエロのようなメイクをしてすっかり変わっていた。

「楽しいですよ?虐殺?します?」

「なっ...兄さん?」

 兄さんが兄さんじゃない。前のような優しい兄さんなんかじゃなかった。道を誤っている。

「兄さん...ごめん...したいよ...でも...したくない...」

「そうですか...なら、やめておきましょう!」

「兄さん...ずっと、ここで虐殺をしているの?」

「100年ほど前から、ここの門番として!吸血鬼が住みやすいので、好きにしてもいいとのことなので!」

「そんなの...間違ってるよ!」

「でも、それが決まりですよ?弱い物は何も得られないんです!何も手に入らずに死んでいくんです!強者こそが傲慢してよくて、強者こそが正義なんですよ!これが世界の理です!」

 兄さんは、壊れていた。私の求めていた兄さんはもう、いなくなっていた。


「兄さん...兄さんじゃないんだね...」

「何を言っているのですか?私はシヤテイ、あなたの兄です!」

「いや...俺が愛した兄さんじゃない!俺の愛した兄さんは...もっと...もっと...もっとみんなに...優しかった!」


 私はそのまま逃げる。3の世界。4の世界。5の世界と点々と移動し、6の世界シャコルで安住の地を見つけた。


 そして、名前をシヤテイからワッケラカエンに変えた。もちろん、まだ優しかった頃の兄さんが付けてくれた「シヤテイ」の名前と同じ「喧嘩別れ」のアナグラムだ。


 もちろん、兄さんとの別れの理由が名前の由来だ。


 ***


「お前...許さねぇよ...絶対にお前に勝つ!お前をぶっ殺す!」

「そうですか...まぁ、頑張ってくださいね?」

 俺の感情は爆発する。ワッケラカエンを許してはならない。

「お前の兄も...ゴミだったな...やっぱり、お前もゴミなのか?いや、親がゴミだから子供もゴミか...蛙の子は蛙って言うもんな?」

「私の兄を...我が兄を侮辱するんですか...その上に私の愛しき家族まで...到底許される行為とは思えませんねぇ?」

「あぁ!そうかいそうかい!ゴミでも愛はあるんだな!ま、ゴミだから誇れるような愛ではなさそうだけどなぁ!」


「誰がゴミだってぇぇ?人の兄を殺しやがって、自分の意見を人に与えやがってぇ!」

 ワッケラカエンがキレる。

「うぅん、自分の意見を押し通す?そんなの、俺の国じゃ何らおかしなことはない!それが当たり前なんだよぉ!知らないのか?世間知らずが!俺の国の老害は、自分の意見ばっかり押し通そうとして、都合が悪いと全部忘れてふりするんだよ!...お前も老害だよなぁ?だって、800年も生きてるんだもんなぁ?」

「うるせぇなぁ!黙ってろ!」

「断る!断るよ!こんな状況で黙る方が頭悪いね!何故ならば、お前は今、俺に!俺なんかに煽られて怒っているだろう?」

「もういい...黙れ!この腐れチキンが!死に腐れ!」

 ワッケラカエンが怒る。挑発させて、相手の隙きを狙う。

「ワッケラカエン...月光徒で、俺の仲間を奪いやがって!お前の都合だけで喋るんじゃねぇ! この吸血鬼が!」

「もう...いいです...私の能力の全てを使いますよ...」

 ワッケラカエンは空気を吸い込む。


「まず、この部屋に爆弾は仕組まれておらず、爆発することもない。ここには、私とリューガさん以外の誰もおらず、私は窮地に陥る。そのままリューガさんは私に勝利して、リカを連れて帰り、仲間と楽しい日々を暮らしていく」

 怪文書のようなことを急にワッケラカエンは言い出す。

「お前...急にIQでも下がったのか?それとも...変なものを...食べたのか?」

「あぁ、私は狂っている。途轍もない程に狂っている」

「そうか...」

 俺はワッケラカエンの心臓に向かって飛んでいく。


 ”バキバキッ”


『破壊』される。


「おっと!危ない!危ない!」

『破壊』したのは部屋の壁であった。ワッケラカエンはどこに...


「なっ...お前は...誰だよ...」

「妾の名前はサルガタナス!貴様は光栄だな!妾に出会えたのだから!」


 そこにはサルガタナスと名乗る破廉恥な格好をした女性がワッケラカエンを抱いて立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに記憶が全て無くなれば、 全て無意味になりますよね。 そういう意味じゃ恐ろしい能力ですね。 それと今回のアナグラムも「おお」と感心しました。 成る程、そういう意味ね! そして良い所で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ