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第984話 最強の称号

 

 抜いた剣を構えるモンガは、その双眸で人質とされてしまったリミアと、敵として憚ってくる月光徒のリューガを2匹、しっかりと捉える。


「───来いよ、モンガ。お前の最強の称号をぶっ壊してやる」

 そう口にしてリューガは、嘴のついた口角を上げる。


「くだらないな。お前らごときで崩せていたら、最強の称号にはならないだろう。それに、私は自分で自分のことを最強だとは思わない」

「んなのはどうでもいい。俺はお前を殺す!」


 そんな言葉と同時に、1匹のリューガが動き出す。残る1匹は、リミアの護衛のため動かないつもりなのだろう。


「───『破壊』ッ!」

「───」

 リューガが、容赦のない『破壊』を使用し、モンガは冷静に後方に飛ぶことで回避をする。


 ───『チーム一鶴』のツートップであるモンガにとって、意外にもリューガは相性が悪い。


 刀剣を相手にするのであればモンガに勝るものはそう多くはないし、堅実な相手だろうと「モンガ剣舞」を相手にすることは難しい。そして、炎魔法や風魔法が放たれても、モンガであれば斬り伏せることができるし、雷魔法も深手を負っていない状態であれば避けることができる。

 が、『破壊』は斬ることができないのだ。もし斬ろうとしたら、逆に『破壊』に巻き込まれて剣が壊れてしまうだろう。


「『破壊』!『破壊』!『破壊』ィィ!」

 リューガが何度も『破壊』を使用し、後方への退避を余儀なくさせる。


「モンガ...」

 人質とされてしまったリミアは、弱弱しい声で防戦一方のモンガのことを見て不安そうな声を出す。

 実際、リミアにとっても不安は大きいだろう。


 モンガの反応と口調から、自分を捕えているリューガが、自分の属しておりよく知る『チーム一鶴』のリューガでなく、月光徒に属していることを理解した。

 リミアは、『チーム一鶴』に属しているモンガの実力しか知らないが、知っているリューガもかなり強いことは理解している。


 だから、そのリューガそっくりそのまま敵として牙を剥いた───と考えると、不安に思ってしまうのだ。


「何か私にできることは...」

「っておい、お前。勝手に動くな。殺すぞ?」

「───ッ!」


 リミアは、どうにかモンガの援護をしようと考えるが、リューガに脅されてしまい足が動かなくなる。

『破壊』の強さを、リミアは知っているのだ。一撃で命が奪える危険な技であることを理解しているのだ。

 リミアは大人しくなり、静かにモンガとリューガの戦闘を見届ける。


「───クソ、当たらねぇ、『破壊』!」

「何度やっても無駄だと言うことがどうしてわからない?」


 数えきれないほど『破壊』を使用し、数えきれないほど回避されている現状、リューガが攻撃の主導権を握っているとはいえ、リューガが一方的に優勢だとは言えない状況だ。


 リューガだって、効かないとわかりきっている攻撃───例えば、『ミサイルシェル』や『氷山の一角の一声』などを発動させるつもりはない。

 それが理由で、攻撃の起点にされたり跳ね返されて自分の首を絞める結果になる可能性になるのを見えているからだ。

 だからこそ、モンガが刀で跳ね返すことができない『破壊』ばかり使用しているのだが───


「『破か───」

「同じ技ばかり。リューガの癖に、芸がないのだな」

「───ぁ」


『破壊』の使用を試みたリューガであったが、突如として視界が明滅する。

 何が起こったのか───そう理解もできないうちに、リューガは細切れにされて塵になり、消えていった。


「───マジかよッ!」

 リミアを見張っているリューガが、そう口にする。

 モンガは、月光徒のリューガに順応していったのだ。『チーム一鶴』のリューガと、月光徒のリューガには多少の違いがある───乱雑さや、『破壊』の範囲や精度の差を、静かに見極めていたのだ。

 そして、それを全て理解したモンガは、リューガの攻撃前に生まれる一瞬の隙を突いて、体を斬った。

 ただ、それだけのことなのだ。何も驚くようなことはない。


「仕方ねぇ、リミアだけでも!」

「───嫌!」


 リミアを捕まえていたリューガが、片割れのリューガの死亡を確認し、リミアを殺そうと試みる。

 リミアは、なんとか抵抗してその場から逃げ延びようと試みるが───


「『破」

「失せろ」


 リューガの『破壊』が発動することはなく、目にも追えないような速さで傑物の手によって、塵に変えられる。ここで、微粒子レベルにまで細かくしているのは、『憑依』対策だろう。

 もし、リューガに『憑依』があることを知らなければ一刀両断して終わりだっただろうが、『チーム一鶴』にもリューガはいるから、『憑依』のことは知られているのだ。


「その程度で、私に勝てるとでも思っていたのか?」

 モンガとリミアの2人だけが残る戦場で、そんな言葉が宙を泳ぐ。


「───モンガ、ありがとう」

「仲間を助けるのは、当たり前だろう?」

 モンガはそう口にして、申し訳なさそうにしているリミアの頭を優しく撫でる。


 ───モンガの持つ、最強の称号は一切揺れ動くことあく、ただ頂点に君臨するのみだ。

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