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第971話 焔

 

 俺の目の前で、ノーラとオルバの肉弾戦が開始する。

 強く踏み込んだ右足を地面から離し、元からほとんどなかった距離を更に詰めて、ノーラはオルバの方へと接近する。


「『羅針盤・マシンガン』ッ!」

「肉弾戦じゃないのかよ、この大嘘憑きがッ!」

 早速、ルール破りの能力をオルバが使用したことにより、ノーラに罵られる。

 ノーラは、自らの方へ飛来してくる銃弾を、その場にしゃがみ込むことで回避する。

 そして、オルバの方へと飛び込むようにして体を宙に投げて、そのまま足をオルバの顔面目掛けて振るい───


「───っと、危ねぇ!」

 オルバは、咄嗟に後ろに身を引くことでノーラの蹴りを回避する。ノーラの攻撃は一発一発が協力だ。

 当たり所が悪ければ、一発K.O.だって有り得る。


 ───と、ヒヨコの姿をしているのでどうあがいても肉弾戦に入り込む余地のない俺は、その戦いを傍観していたが、その時に声をかけてくれたのは、先程この講堂に突入してきた多くの月光徒の一般兵士に紛れていた俺達『チーム一鶴』の頭脳、カゲユキだった。


「リューガ、今はどういう状況だ?」

「それぞれがそれぞれの相手をしてる。俺達の敵はノーラだ。今はオルバと肉弾戦をしてる」

「そのようだな...勝ち目はありそうか?」

「わからない。ノーラは強いから、トドメを刺すところまでは行けなさそうだ」

「そうか...」

「ノーラのことは知ってるのか?」

「あぁ、月光徒に潜んでいた時も色々と凶暴な女って聞いてはいたし、実力者であることも知っている」

 どうやら、ノーラは色々と悪い噂も多いようだった。だが、あの性格なら敵を多く作ってしまうのもわかる。


「作戦はあるのか?」

「あぁ...思ついているのは1つ」

「流石カゲユキ。俺達の頭脳だ」

「囃し立てるのはやめてくれ。聞かせるぞ」

「応」


 俺は、カゲユキに作戦を伝えてもらう。その作戦は───


「おぉ、いいんじゃないか?少なくとも、俺とオルバだけじゃ思いつかないし、思いついていたとしても実行できない作戦だ」

「そうだろうな。試してみる価値はありそうか?」

「ありそうだ。やってみよう」


 ───というわけで、俺とカゲユキは作戦を実行することにした。


 だから、俺はオルバと肉弾戦を行っているノーラの方へ攻撃を画策する。


「ノーラ、俺も相手だッ!」

「リューガ!」

 ノーラの拳を避けることしかできていないオルバであったが、しっかりと俺達が立案する時間を稼いでくれた。オルバがいなければ、俺はカゲユキに作戦を伝えてもらえなかっただろう。


「『破壊』ッ!」

「小賢しい!」

 俺が『破壊』を使用するも、ノーラはその『破壊』を回避してしまう。俺の『破壊』を避けられるのは、相当の手練れだ。やはり、ノーラは強い。


「オルバは一回下がってカゲユキの方へ。ここは俺が時間を稼ぐ」

「───了解!そんじゃ、任せた!」

 俺は早急にオルバを最前線から離れさせると、ノーラからの猛攻を避ける。


「リーダーだから役に立てると思っているのか?図に乗るな、お前は全く強くない。リューガ!お前の実力を、私は何度だって踏み躙って来た!」

 ノーラは叫ぶ。その言葉が嘘だとは思えない。きっと、月光徒にいるもう一人のオレが何匹も犠牲になったのだろう。


「───そうかよ。だが、それは俺だけだろう?」

「───は?」

「お前は知らない。俺はな、仲間といるから強いってことを!」


 その言葉と同時、ノーラの体が炎上する。

「これは───ッ!」

「隠させてもらったぜ、お前の炎の中に」


 ───これは、カゲユキの作戦だ。

 今、この講堂はノーラによって火の海になっている。だが、これらすべてはノーラが能力により生み出したものだから、ノーラには通用しない。

 ノーラにとってこの炎は、ただの装飾なのだ。

 だけど、カゲユキはそこに魔法で生み出した炎を混ぜた。炎の中に炎を隠したのだ。


 魔法の炎は、ノーラの能力で生み出されたわけではないからその体を焼き尽くす。

 ノーラに普通の炎が通用することは、見ればわかる。だって、その体には包帯が巻かれているのだから。


「───ッ!燃える、燃える!」

 そう口にして、俺のことを忘れたように己に付いた火を消すのに尽力するノーラ。


 高速で移動してその火を消そうとするけれども、カゲユキは好き勝手に炎をまき散らしているため、どこに移動しても炎がある。


 どうやら、ノーラは炎にトラウマがあるようだった。

 だが、それもそうだろう。包帯を巻いているということは、その奥にはひどい火傷跡があることを想像するのは容易い。


「消えろッ!鬱陶しい!」

 炎を撒き散らすことも忘れて、その炎を消そうと試みるノーラの方へと、俺は接近する。

 どれだけ強かろうとも、生物であることには変わりない。


「───だから言ったろ?俺は仲間といるから強いんだと。『破壊』ッ!」

 完全に俺のことを意識の彼方に飛ばしていたノーラには、簡単に『破壊』で攻撃できた。

 俺の『破壊』は、ノーラの心臓をいとも簡単に撃ち抜き───



「───俺の勝ちだ。燃えて眠れ」

 燃え滾る紅蓮の焔は、ノーラの遺体を燃やし、天へと導いていくのであった。

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