第1話 墜落
こんにちは、花浅葱です。
異世界転生系も書きたくなったので書き始めることにしました!
更新ペースは遅いかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。
7月13日(木)6時30分
今日は待ちに待ったイギリス留学の日だ。7時45分出発の飛行機に乗ってイギリスのマンチェスター空港に向かう。
「おーい!こっちこっち!」
共に留学に行くケンジとハルカが来る。
「よぉ!勇!もう来てたのか!」
「あぁ!昨日は眠れなくて始発に乗って来ちまったぜ!」
「始発って...ここ着いたの何時だよ...」
「えぇっと...6時前かな?」
「マジかよ!お前...そんな前から...」
イギリスの留学は半年を予定している。俺————灰谷勇と、親友の久堂賢二・その彼女の近衛遙華と共に行く。
「ケンジ君!留学楽しみね!」
「あぁ!かわいい子いたらたくさんナンパしようかな!」
「ははは...冗談やめてよ!」
ケンジはハルカに強めに叩かれる。
「痛っ!ちょっ!ハルカ!痛い!痛いよ!ねぇ!」
「ふふ...ごめんね?」
俺たち3人はハルカが持ってきた梅干しおにぎりを食べてから飛行機に乗った。
{アテンションプリーズ〜〜〜}
飛行機に乗り込みしばらくすると案内放送が始まった。俺たちは3人席に座っている。飛行機の真ん中の席だ。飛行機の進行方向を前として、右に俺・真ん中にケンジ・左にハルカが座っている。
「そんじゃ、しっかりベルトもつけて!準備オッケー!」
「勇!もう離陸のときは泣かないか?」
「離陸のときに泣いた覚えは一つもねぇよ!」
「そうか?小6の頃一緒に沖縄に行ったときは涙目になってたじゃんか!」
「いつの記憶だよ!もう俺たち大学2年だぞ!」
「ははは!悪い悪い!」
ケンジと最初に出会ったのはいつだろか。物心がついたときにはもう一緒にいた。生後7ヶ月の頃の写真に一緒に写っているので、ずっと一緒なのは確かだろう。小中高と同じ学校にあがった。大学は俺のほうが頭のいい大学に行った。それでもGMARCHよりも下だが...
飛行機の座席の前にある電子機器に歌舞伎役者が説明する映像が流れる。
「うへぇ...すげぇな...こんな格好で汗とかかかないのかな?」
「慣れてるんじゃないの?知らんけど」
8分ほどで映像は終わる。そしてまた案内音声に変わる。
「そろそろ離陸だな!」
「勇!もう離陸のときは泣かないか?」
「さっきもその話したよ!10分前の記憶はないの?お前は3歩歩いたらすぐ忘れる鶏かなんかか!」
「最終確認だよ!いい大人が隣で泣き出されても困るからな!」
ケンジとハルカは、中学生の頃に出会った。付き合いだしたのはいつだっただろうか。中3の時にも3人で東京夢の国王国に行ったからその時には付き合っていただろう。
そして、飛行機は離陸する。
「なぁ...勇!こういうのってどっかで『テイクオフ!』ってカッコつけてやってんのかな?」
「ケンジ...お前ドラマの見すぎ...てかなんのドラマか検討もつかねぇ!」
「ドラマじゃねぇ!ア・ニ・メ!」
「うわ、すげぇ言い方ムカつく!」
「安心しろ!お前のいつもの態度には勝てねぇ!」
「えぇ?そんな俺いつもムカつく?」
「冗談だって!安心して!安心!この飛行機くらい安心して!」
「あ!この飛行機墜落する!絶対墜落する!」
「え...俺そんな信用ない?マジで?」
俺は静かに首を縦に振る。
「うわっ!マジか!俺らの20年はなんなんだ!」
雑談しながら飛行機の中での時間は過ぎていく。7月13日の悲劇は離陸から約5時間後に起こった。
7月13日12時23分
「うん...十分に安定しているな...」
「別に初フライトってわけでもない...ていうかもう13年はパイロットやってるのに...毎回緊張するんだよな...」
「別にそっちの方がいいと思うぜ?」
操縦士と副操縦士は話している。
”ボンッ”
何かが爆発する音がする。その直後機体は左に傾く。
「何かが爆発した...考えるのはエンジン...」
「ついに!ついに墜落の日が!まだ慌てる時じゃない!まずは乗客に警告を!」
このときCAから連絡が来る。
「左エンジンから火が出ています!爆発したかと思われます!」
「やはりそうか...乗客を不安にさせるな!いいな?」
「わかりました!」
飛行機はどんどん落ちていく。高度数千メートルからの落下だ。
7月13日12時28分
「まずい!地が見えてきた!不時着場所に間に合いそうか?」
「このまま行けば十分に間に合いそうです!」
”ボンッ”
また何か破裂する音がする。次はどこが爆発したのか。
「乗客全員安全装置をセットしました!そして、右エンジンも爆発しました!」
CAはまた連絡をくれた。
「何で!何でだ!なんで両エンジンとも爆発するんだ!」
「まずいですよ!このままじゃ不時着場所まで届きません!」
飛行機はそのまま落下し、住宅を巻き込んだ。その数320世帯。1012人。
飛行機の乗客330名のうち321名は死亡。7名は重症だった。2名は奇跡的に軽症だった。
墜落時刻は2023年7月13日12時28分43秒。
人々は後にこの悲劇を『13日の悲劇』と呼んでいる。
墜落する直前にケンジはハルカを抱き寄せた。ケンジはハルカを守ろうとしたのだ。だが、その行動によってハルカは皮肉にも命を落としてしまった。そして、ケンジは傷を負わずに生還した。そして、『13日の悲劇』を後世に語り継ぐ役目を背負った。
そして勇は...
「頭痛えぇ...ここどこだ?」
勇は空のように青い空間を浮いていた。
「まだ慌てるな...俺はイギリスに留学しようとして...あぁ...飛行機が墜落したのか...ケンジとハルカは大丈夫かな?あぁ...死んだのか...なら最後の飯はフィッシュじゃなくてチキンにしときたかったな...」
勇は後悔していた。死ぬとは思っていなかったから。20年の人生を振り返った。死んでいるので走馬灯とは言わないがそれと似たようなものを見ていた。
「あぁ...球技大会もやったな...勝てなかったけど...みんなとカラオケも行ったな...」
勇は人生をエンジョイしていた。別に引きこもっていたわけでもないし、いじめられてたわけでもない。彼女も何人かできた。まぁ、数ヶ月で別れてしまったけど。童貞も卒業していた。父親は勇が18歳の時に死んでしまった。残っているのは49歳の母親と17歳の妹だった。母親は強いからなんとかなるだろう。
勇の後悔は最後の飯だけだった。
《Dead or chicken?》
「え?何?」
《Dead or chicken?》
「え...死ぬかチキンか?」
《Dead or chicken?》
「あぁ、もう!答えればいいんだろ!チキンで!チキンプリーズ!」
《OK》
その瞬間勇の視界は光に包まれる。勇は思わず目を瞑った。そして目を開ける。
勇の目の前には青い空と木でできた柵・背丈が俺くらいある草・そして、数匹の巨大な豚がいた。