2話
2
ふと目を覚ますと鳥の鳴き声や水のせせらぎの音が聞こえる。
いつの間に寝たのだろうか。
手を空へと伸ばしながら考えてみる。
そうだ、確か学校から帰る途中に車が突っ込んできたような…
いや、そうだとすればここはどこだ?立ち上がり辺りを見回すがそこにあるのは木ばかりで思い当たることが何もない。夢か?それにしては感覚が鋭敏過ぎる。鳥や水の音はもちろん木や草の匂いまでするのはおかしい。何なのだろうか。辺りを歩いてみるとどうやらここはどこかの山のようだ。
「ぎゃーー、た、たすけてくれ…」
「死にたくねぇーー」
「ゔぉー」
何なんだ…
それは悍ましい光景だった。
粗末な服を着た白人系の3人を狼や鳥が襲っているのだ。その大きさは自分と同じくらいだった。
はっ
急いで木の陰に隠れ息が漏れないように両手で塞ぐ。
獣が獲物に夢中になっているうちに音を立てないように慎重に後ずさる。
充分離れた所で漸く息を吐けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、一体何がどうなってやがる」
目を強く瞑って息を整える。
それからは獣から身を隠し草や虫を食いながら過ごした。そして山の中に落ちていた武器を使い鍛錬する。最初は棒切れを上から下まで振り下ろすことだけをやっていたが、だんだんどう動けばいいか分かるようになり足技も入れながら相手をイメージして訓練する。小型の動物は狩れるようになった。味はしないがとにかく死なないために何でも食った。
ドガーン
5メートルはあるだろう巨大な熊が倒れる
「今日のところはこれでいいか。」
あれから何年だったんだろう。最初はびくびく怯えて隠れてばかりいたが今では遅れを取ることはない。ここに来るまでの生活が随分と昔のことのように思える。
この世界は前の世界より残酷だ。弱ければ死に強いものだけが生き残る。いや、前の世界でも同じか…。
腰に剣を差し今日の獲物である熊を引きずりながら寝ぐらにしている洞窟へと向かう。
今までは毎日が生きることで精一杯だったが、余裕が出てきたな。そろそろ活動領域を広げるのもいいかもしれない。死ぬまでこの山の中っていうのもつまらないしな。明日からは山を降りて旅をするのもいいだろう。
そう考えながら夕飯を食べてすぐに寝た。